INTERVIEW
MAHATMA
2017.10.24UPDATE
2017年10月号掲載
Member:NaNa(Vo) Hideki(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
-NaNaさんはどんな音楽が好きで、こういう道に進んだんでしょう。
NaNa:私は最初ピアノをやっていたんです。いとこの男の子がピアノを弾いていて、"男の子のピアノってかっこいい。私もやりたい"って言って、男勝りな子供だったので、一緒にやりたいと始めたんですけど、あまりうまく弾けなくて(笑)。そしたらピアノの先生が、"歌の方が合ってるんじゃない?"と言ってくれて。そこで、声楽の基礎みたいなのを教えていただいたんです。そこから音楽が好きになってずっと歌をやってきたんですけど、最初は合唱とか、コーラス部に入っていて、アカペラ・グループで路上で歌ったこともありました。友達でバンドをやっている子がいて、中学生くらいのときにライヴハウスに行って、かっこいいな、こういう音楽もやってみたいなと思って、今のようなロックの感じになりました。MAHATMAは今までにない感じで、新しかったので、最初は戸惑いがありましたけど。
-これだけの楽曲だと、Hidekiさんはデモ段階からかなり緻密に作り上げていくんですか。
Hideki:結構しっかりと作りますね。個々の楽器のアレンジとか。Tsubasaについてはアレンジ力も買っているので、ギターはざっくりなんですけど、今はキーボーディストもいないので、鍵盤のアレンジも最初から固めてありますし、ベース・ラインもほぼこれで弾いてくれというものをデモにしていますね。ストリングスなども自分でアレンジしてプログラミングするので、最初からイメージをデモにしていますね。
-今回のミニ・アルバム『WITH LOVE IN MY HEART』の1、2曲目「Overture for WITH LOVE IN MY HEART」と「WITH LOVE IN MY HEART ~君と共に~」は、かなり壮大な、物語性の高い組曲となりました。こういった曲を聴くと、クラシックももちろん、ゲーム音楽のような世界観も好きなんだろうなというのを感じました。
Hideki:ゲームも大好きですね。"ファイナルファンタジー"や"ドラゴンクエスト"をやり込んでいた人間なので。子供のころの、あのRPGのワクワク感というのは今でも忘れられないなと思うんです。今はなかなか時間もなくて、ゲームを突き詰めることはできなくなってしまったから(笑)。自分の音楽を聴いて、ゲームをやっているような感覚になれるだけで今はいいのかなと。
-こういった組曲って、どんなモチーフから作っていくんですか。
Hideki:自分が大きな曲を書くときは、あまり幸せじゃないことがあったときなんですよね。だからか短調な曲が多くて。この曲を作ろうと思ったきっかけは、前作の『Orchestra of the Life』というアルバムに収録されていた「Romance」という曲です。この曲は、自分が幼いころにお母さんを亡くして、お父さんがずっとひとりで自分たちの音楽を応援してくれていていたんですけど、うちのお父さんも退職をしていい年になったので、これを記念に"両親のおかげで僕らは頑張れたんだよ"という曲を作ろうと思って、「Romance」を作ったんです。タイトルのとおりに、親がいい恋愛をしてくれたから、自分たちもさらにいい恋愛で次に繋げていこうという曲なんです。それを聴かせたかったんですけど、作っているときにお父さんが急死しちゃったんです。聴かせずじまいとなってしまって、自分の気持ちに示しがつかなかったんですよね。気持ちにけじめをつけるためにも、父への追悼曲を作らないとなと思って、組曲「WITH LOVE IN MY HEART」を作ったんです。構想から1年かかりましたね。
-曲の中で、心のうねりも表現している感じですね。
Hideki:そうですね。この曲のコンセプトが、誰でも親を持つものだと思うんですけど。自分が思う、親に対してのあるべき気持ちを表現したんです。たぶん最後まで聴くと、かなり波のある、人ひとりの人生のような曲だと思うんですけど、それを音で表現していったという感じですね。"WITH LOVE IN MY HEART"というタイトルは、ショパンの「別れの曲」を英語にしたサブ・タイトルみたいな感じらしいんです。別れの曲であるし、でも"別れの曲"ってストレートに言っちゃうとわざとらしいので、"WITH LOVE IN MY HEART"はおしゃれな感じもあるし、いいんじゃないかなと(笑)。
-想いがしっかり込められた歌詞にもなっていたんですね。NaNaさんは、そうした歌の背景も込みで、歌へと乗せていったんですか。
NaNa:そうですね。HidekiとTsubasaのお父さんは私もよく知っていますし、2009年に加入してから長く一緒に活動しているので、そういう部分でも共感できるところがかなりあるので、それを歌に込めて歌っていますね。
-曲調としては、高揚感とドラマ性のある美しい曲で。聴き込むといろんなフレーズがあって、レイヤー感のある曲だなと思います。めくってもめくっても様々な音やフレーズが出てくるというくらい、音の厚みがある。
Hideki:あぁ、嬉しいですね。
-ちなみに、こういう曲ってライヴではどのようにやっているんですか。
Hideki:ライヴでの完全再現は難しいので、どうしてもライヴは、一番前面に出てくるヴォーカル・ラインと、演奏ラインで前面に出てくるパートを勢いと一緒に伝えられればいいかなと。あまり神経質になりすぎないようにしていますね。基本、バンドでは不可能だと思うので、再現は(笑)。
-ドラムもかなり細やかなものですしね。
Hideki:そうですね、こだわりました。ドラムのこだわりとしては、今のこういうハード・ロック、ヘヴィ・メタル系の音楽って、トリガー・システムを使ったリプレイス――電子音を叩くタイミングに合わせて反応させたり、サンプリングされていたものを鳴らしたりすることが主流らしいんですけど、自分は、今となっては無理かもしれないですけど、音楽はアナログでありたいので。今回は、トリガーを使ったリプレイスは、ドラムではまったく使っていないんです。なので、自分の叩いた音が命という感じでやっていますね。