INTERVIEW
Joy Opposites
2016.08.08UPDATE
2016年08月号掲載
Member:Adam(Vo/Gt) Tomohiro(Ba) Eiji(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
-たしかに「Somewhere Down The Line」はアレンジの細やかさがあるし、ドラムのパターンもいろいろあってグッとくる曲になってますね。
Tomohiro:シンプルながらも、プリプロのときにアレンジをバンバンしていったので。そこで臨機応変に、"えっくんのドラムがこう変わったから俺もこう変えるね"っていうやりとりをその場その場でやっていったんですよ、それがうまくハマッたかな。
-お互いに引き出し合うような制作ですね。
Tomohiro:楽しかったんですよね、試せる場所があって。ベース・ラインは数ヶ所変えてもらってますけど、Alexからほとんど直されなかったので、俺が思ったもので試していけました。
-今はなかなかないサウンドなだけに、きっと、こういう王道なロック・バンド然とした音を求めている人はたくさんいると思います。
Adam:いるといいですね(笑)。FACTファンにも聴いてもらいたいんですけど、FACTを聴いたことがない人にも聴いてもらいたいです。
Tomohiro:今まではカテゴリーがひとつあって、それがFACTだったり、ラウドだったり、パンクだったりすると思うんですけど、それを1回取っ払って、フラットな状態で聴いてほしいですね。そこで好き嫌いが出てくるのはもちろんなので。
Eiji:あと面白いのが、このバンドは半分がイギリスとか海外出身の人間という(笑)。
Tomohiro:たしかに、そう考えると面白いですよね。ベースになるコード感や曲を自分からAdamに渡して、Adamがメロディやウワモノをつけてくれて、えっくんがそこにドラムをつけるっていう。もう、ぐちゃぐちゃじゃないですか。
Eiji:それぞれが、それぞれの仕事に集中して取り組めるようになってるんですよね。それはすごく大事なことでもあって。各々がやるべきことがわかって、それを突き詰めていけるから。そのやり方がすごく心地よかったんですよね。
-ギターもまたいろいろと試していると思うのですが、今回のレコーディングはどうでしたか?
Adam:楽しかったですよ。自分のエフェクターもちょっと持っていったんですけど、Alexもエフェクターをすごくいっぱい持ってて。冒険だった。1曲でギター5本とか使ってる曲もあって、この部分はこの1本にしようとか、この部分はこの1本でこのエフェクターで、次のフレーズはこれでとか決めて。そういう作業はすごく楽しかった。
Tomohiro:ギター録りが一番、時間がかかったかな。ギター録りに入るときに、このままいけば3、4日早めに終わるかもねって言ってたんです。じゃあ買い物にも行けるなとか言ってたら、全然終わらなくて。歌録りも細かなコーラスがあったりして、結局録り終わったのはギリギリだったもんね。
Adam:うん、あとヴォーカル録りも大変だったかな。FACTでは自分のメイン・パートもあったんですけど、ハーモニーが多かったから、そのときはハーモニー2本録れば終わるっていう話でしたけど。
Tomohiro:しかも、コピペができるじゃないですか。今回はそれがないから、通しで全部歌うっていう。Studio 606でベース録りまで終わって、次にAlexの自宅兼スタジオに移動して録ってたんですけど、そこからはAdamが一番大変だったね。
Adam:ヴォーカル・ブースが狭くて暑くて大変だったけど、曲ができてきて、その音を聴いて"すげぇ"って思えたから乗り越えられました。ギターもそうで。
-音に隙間があるという話はしていましたが、サウンドとしての厚みは相当ありますよね。ギターひとつとっても、ヴォーカルやコーラス、リズムに関しても、重厚でグルーヴしている感が強い。
Tomohiro:サスティーンだったり、ドラムでいう空気感だったりで、間が間じゃないというか、いい隙間になってくれていると思います。
Adam:DEFTONESが"リフも大事だけどスペースが大事"っていう話を何かのインタビューでしていて。それはまさにそう思う。特にこういう音楽はね。
Tomohiro:細かく音を入れるのは簡単だけど、抜くことは結構難しいんですよね。個人的にも。
-Track.7「Skim The Sun」など個人的にもすごくいい曲だなと思うし、ドラッギーなサウンドもいいですね。
Eiji:そうですね、この曲は砂漠でラクダが歩いてるイメージでした。
Adam:SLEEPというバンド知ってますか?『Dopesmoker』(2003年リリースの4thアルバム)のリイシューが2012年に出たんだけど、そのアートワークが浮かんだんですよね。エイリアンがハッパ吸いながら砂漠を歩いてるやつで。
-たしかにストーナー感が強いアートワークのものですね。「Skim The Sun」もまさにその感じ。
Eiji:セカンド・ヴァースが特にね。
Tomohiro:この曲も、抜く作業ですよね。
Eiji:細かい話だと、タムだけのリズムでサビに入っていくのが初めてだったんですよね、これまでバンドをやってきて。
Tomohiro:他の曲でもクライマックスに向けてビートを切り替えて、ちょっと音を多くしようとか、アグレッシヴにしようっていうのはほぼ排除したよね。
Eiji:Alexも、"そうやって盛り上げたい気持ちはわかるけど"って。
Tomohiro:それで、そういったものは全部なくなっていって。繰り返す気持ちよさとかが、Alexの中にはあったのかな。
Adam:しかも「Skim The Sun」は、曲を作っている中で、できたときに"これだ"って思ったものだったよね。
Tomohiro:たぶんターニング・ポイントとなった曲ですね。それまでは最初言ったみたいに、アグレッシヴじゃないですけど、変拍子が入ったりして、もうちょっと動き回っていた音だったんですよね。で、最初にAdamがギターとヴォーカルをある程度の段階にした状態で送ってきてくれて、そこからアレンジしていったんです。これができたときは、もっとシンプルにいこう、もっと歌メロを出そうと思って。そこから切り替わっていって、これ以降の曲がアルバムに入っているんですよね。
Adam:Alexもそうだし、以前FACTで一緒にやっていたElvisもそうで、"もっとシンプルにした方がいいよ"っていつも言うよね(笑)。たぶんそれが、自分らでできるようになってるのかなって思う。
Tomohiro:足すのは簡単なんですよね。ここが寂しいからギターを足そうとか、シーケンスを足そうとか、倍にしようとか。反対に音を抜いていって、曲を成立させるところまで持っていくのがすごく難しくて。