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FEATURE

ROYAL BLOOD

2021.04.30UPDATE

2021年05月号掲載

UKギター・ロックの最先端でギターレスの轟音をかき鳴らす2人組 ROYAL BLOODが、約4年ぶりのニュー・アルバムをリリース!

Writer 山本 真由

アッパーで中毒性の高いビートが、ヘヴィな音楽スタイルと見事に交わった今作で、ROYAL BLOODは再びロック・シーンをアップデートする


2012年にイギリスのブライトンで結成されたロック・デュオ、ROYAL BLOOD。メンバーは、ベース・ヴォーカルのMike KerrとドラマーのBen Thatcher、ロック・デュオとしては珍しいギターレスの2人組だ(実際は、それ以前からMikeはワーキング・ホリデイで滞在していたオーストラリアで、同名の前身バンドを組んでいたが、それは短期間の気軽な活動だったため、正式なROYAL BLOODというのはMikeがUKに帰ってからの活動ということになるようだ)。

彼らを気に入ったARCTIC MONKEYSのドラマー Matt Heldersが、大規模フェスで彼らのTシャツを身につけていたこともあり、早くから本国UKのロック・ファンの間では注目を集めていた。大物バンドが、お気に入りの若手バンドのTシャツを着てバックアップするというのは、まぁありそうな話ではあるが、実は結成まだ間もなく、アルバムやEPのリリースもしておらず、ましてやTシャツなどのグッズなんてなかったふたりが、Matt Heldersに突然"Tシャツが欲しい"と言われ、彼のためだけに世界でたった1枚だけのTシャツを特別に作ってあげたというのは、なんだかとてもいい話だ。

そのあとは、ARCTIC MONKEYSのツアーをサポートするなど、大舞台でその実力を示したことで、名実ともに人気バンドの仲間入りを果たし、セルフ・タイトルのデビュー・アルバム『Royal Blood』(2014年)は、全英チャートで初登場1位を獲得。"ネオ・グランジ"とも呼ばれるひとつのムーヴメントの立役者となった。さらに、続く2ndアルバム『How Did We Get So Dark?』(2017年)でも、全英1位を獲得するという快挙を成し遂げる。また、ここ日本でも新鋭のUKロック・アクトということで注目され、2015年には初の来日公演も実現し、チケットはソールド・アウトしている。

そんな彼らの魅力としてまず挙げられるのは、たったふたりでやっているとは思えないほどのヘヴィで厚みのあるサウンドだろう。ギターレスもウィーク・ポイントにならない、エフェクトを駆使したMikeのセンスや、テクニックもすごい。ライヴを観て、"本当にベースだけでこんな音が出るんだ!?"と驚いた方も多いのではないか。楽曲の雰囲気に関しても、UKインディー・ロック特有のオシャレで気だるいノリはありつつ、90年代のUSオルタナっぽいヘヴィさとメロディの強さも同居しているので、幅広いロック・ファンに受け入れられやすいのだろう。
また、NIRVANAや、QUEENS OF THE STONE AGEといったUSグランジ/オルタナ系のロック・バンドをフェイバリットに挙げる一方、LED ZEPPELINやTHE BEATLES、QUEENなどからの影響も公言しており、USヘヴィ・ロックにインスパイアされた、UKギター・ロックの流れを汲むバンドとも言えるかもしれない。 ちなみに、ギターレスでベースとドラムのみという2人組はあまりいない構成だが、MikeとBenは、ROYAL BLOOD以前からも一緒に活動していた仲で、最初からギターを加えるメンバー構成は考えておらず、自然と今のスタイルになったようだ。それだけに、ふたりのグルーヴ感やノリの相性は抜群で、ベースとドラムだけでも完成されたロック・サウンドを響かせている。

そんな彼らが、約4年ぶりとなるアルバムをリリースする。今作の収録曲は、2019年くらいからライヴで披露されるなど、一昨年の時点ですでに制作が始まっていたのだが、COVID-19のパンデミックによる影響で、レコーディングが延びてしまったのだ。しかしながら、そんなトラブルの中でも、ポジティヴな影響もある。それは、パンデミックの間に彼らは新曲を制作し、新しい曲が加わってより充実した内容でリリースされることになったという点だ。予定通りリリースされていたら、この世に存在しなかった楽曲があるというのは、不思議な感覚だが、作品が時代や制作者の生活と直結した"生もの"であることを再認識させられた。

そうしてついにリリースされる今作は、アルバムの冒頭を飾る「Trouble's Coming」から、いきなりノリノリのグルーヴィなダンス・ナンバーで聴くものを驚かせてくれた。もちろん、彼ららしいヘヴィなサウンドは健在だが、彼らがまた新しい武器を手に入れたことを1曲目から確信できる。続く「Oblivion」もアッパーなビートでぐいぐい引っ張る、キャッチーでフロア受けの良さそうなナンバーだ。タイトル・トラックの「Typhoons」は、ブルージーなガレージ・ロックの荒々しさもありながら、ダンサブルなコーラスにはキラキラした要素もあって、中毒性が高い楽曲に仕上がっている。さらに、ミドル・テンポで重厚感のある「Who Needs Friends」、'80sディスコ・ナンバーのテイストもある「Million And One」や「Limbo」、ヘヴィな部分はありつつも、ポップで明るいテイストが彼らの中では新しい「Either You Want It」、ドラマチックな展開で盛り上げる「Mad Visions」、ファルセットも用いたMikeの多彩なヴォーカル表現が際立つ「Hold On」など、個性派な楽曲が揃った。また、すでにライヴでも披露されているハードなグランジ・ナンバー「Boilermaker」は、QUEENS OF THE STONE AGEのJosh Homme(Gt/Vo)がプロデュースした1曲だ。そして、ピアノだけのシンプルなアコースティック・ナンバー「All We Have Is Now」は、ドリーミーでしっとりした聴き応えのある、アルバムの締めにぴったりの楽曲。

今作では、全体的にこれまでガツンと聴かせてきたベースの存在感が少し抑えめになり、ピアノやシンセなどの要素と絡み合って、より深みのある音楽性へと進化している。また、ドラムに関しても、バスドラムがズンズンと響くダンサブルな表現が顕著になり、これまで以上に存在感が増した。また、Mikeのヴォーカル表現も様々なアプローチを見せ、楽曲の独自性を向上させている。
もともと、ROYAL BLOODを始める以前から様々な音楽を吸収してきたふたりは、今作の方向性を決めるにあたり、意識的にDAFT PUNKやJUSTICEといった、彼らがかねてより影響を受けてきたエレクトロ・ミュージックへの回帰を図ったとのこと。惜しまれつつも、今年2月に解散が発表されたDAFT PUNKの魂は、意外な場所でまた輝きを見せることになったということだ。

これまでのアグレッシヴに轟音をかき鳴らすROYAL BLOODの良さは、一要素として効果的に扱うことで、彼ららしさは維持しながら、新しい表現の数々で新境地を切り拓いた今作。すでに人気バンドとしての地位を確立しつつある彼らが、こういったチャレンジングな作品を発表できるということは、UKのロック・シーンが活発だということでもあるだろう。世界的に、"ロック離れ"なんて言われている世の中だが、昨今少しずつ懐古的なサウンドを取り入れるムーヴメントもあり、バンド音楽とダンス・ミュージックの融合や、ROYAL BLOODのような個性的なスタイルのグループが、ロック・シーンにまた大きなうねりを生み出す可能性にも期待したい。


▼リリース情報
ROYAL BLOOD
3rdアルバム
『Typhoons』
royal_blood_typhoons.jpg
2021.04.30 ON SALE!!
WPCR-18418/¥2,750(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

1. Trouble's Coming
2. Oblivion
3. Typhoons
4. Who Needs Friends
5. Million And One
6. Limbo
7. Either You Want It
8. Boilermaker
9. Mad Visions
10. Hold On
11. All We Have Is Now
12. Space ※日本盤CDボーナス・トラック

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