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FEATURE

THE PRETTY RECKLESS

2021.02.22UPDATE

2021年02月号掲載

ロックンロールに選ばれたミューズ、Taylor Momsen率いる、THE PRETTY RECKLESSが5年ぶりのニュー・アルバムをリリース!

ライター:山本 真由

深い悲しみを乗り越え、バンドは再び動き出す――


強烈な個性を持ったフロント・ウーマン、Taylor Momsenを擁するオルタナティヴ・ロック・バンド THE PRETTY RECKLESSが、5年ぶり通算4枚目となるニュー・アルバム『Death By Rock And Roll』をリリースする。

Taylor Momsenと言えば、まずアメリカの人気ドラマ"ゴシップガール"のメイン・キャラクターのひとり、Jenny Humphreyを思い浮かべる方も多いかもしれない。実際、筆者自身もTaylorを初めて知ったのは同番組だった。そのため、シーズンが進んで突如ロック・ファッションに身を包み、ゴス・メイクを始めたJennyを見て、"あのかわいかったJennyが、なぜ!? この子どうしちゃったの?"と戸惑ったのだが、実際はそっちが本当のTaylorだった。もちろんJenny=Taylorではないが、Jennyのスタイルの変化は、彼女がスタイリストをつけるのをやめて、素のセンスを持ち込むようになったからだろう。

彼女は、映画"グリンチ"などで子役時代から活躍していたので、いわゆるグレる子役のようなイメージを持った方もいたかもしれない。たしかに、黒を基調とした露出の多いファッションは挑戦的に見えるし、ファッションも音楽性も流行りを一切無視したハードなもので、反抗心の塊のようにも見えた。しかし、おそらく彼女はものすごく正直な人間なのだ。自分の好きなもの、信じることに忠実で、まっすぐなだけ。

実際、反抗期の抵抗手段としてロックに染まったというより、彼女は幼少期から当たり前のようにロック・ミュージックが流れる家庭で育ち、幼いころからソングライティングを始めていたという。デビュー・アルバム『Light Me Up』(2010年)をリリースし、来日が決まった際の激ロックでのインタビュー(※2011年3月号掲載)でも、"自分が目指すべき一番重要なゴールは、最高のTaylor Momsenになることであり、自分らしさに忠実に生きることであり、他人の言いなりに自分を変えることはない"と言っていた(しかも同世代の女子に薦める作品にTHE BEATLESの全作品を挙げるのだから、不良なわけがない!)。そのため彼女のファッションがどんなに過激でも、楽曲がどんなにハードでも、痛々しさはなく、ピュアなものに聴こえるのだ。

ここまで、Taylor Momsenとロックンロールの関係について勝手に長々語ってしまったが、こうした背景を語ったのには、"THE PRETTY RECKLESSという超クールなバンドを、決してセレブ・バンドという色眼鏡で見ないでほしい"という理由があるからだ。
THE PRETTY RECKLESSは、Taylor MomsenのTaylor Momsenによるバンドだが、Taylor Momsenのためだけのバンドではない。彼らはチームで、ファミリーで、同じヴィジョンを共有している。メンバーは、ヴォーカルのTaylor Momsenを筆頭に、Taylorと共にソングライティングも務めるリード・ギタリストのBen Phillips、そして、ベースのMark DamonとドラムのJamie Perkinsのリズム隊も、デビュー・アルバムから変わらぬ顔ぶれで活動している(前身バンドでTaylorは同世代のメンバーと活動していたが、方向性の違いから別れ、バンドは現在の形に)。そして、もうひとりのメンバーとも言えるプロデューサーのKato Khandwalaも、バンドのパートナーとして、デビュー作から前作『Who You Selling For』(2016年)まで共に歩んできた。

デビュー・アルバム『Light Me Up』は、完成度の高さや時代の流れに媚びないロック・スタイルで評価される一方、セレブがやっているロックの真似事と批判的な声もあった。また人気女優で、モデルで、170cmを超える長身に長い手足といったスタイル抜群の美少女だったTaylorの、美しい見た目ばかりに注目する人も。
しかし、ビルボード・チャートでTOP5を獲得した2ndアルバム『Going To Hell』(2014年)が出るころには、そんな声も聞こえなくなってくる。Taylorのヴォーカリストとしてのカリスマ的存在感、唯一無二のハスキーでよく通る歌声。そして、それを支える重厚でパワフルなリズム隊と、時にアグレッシヴに、時にメロディアスに響くギター。このバンドが、本物で、それも多くのロック・ファンの心を動かす楽曲を生み出すのだと彼らは実力で示してきた。
さらに、続く3rdアルバム『Who You Selling For』では、収録曲「Take Me Down」がメインストリーム・ロック・チャートの1位に輝き、順調に活動を続けていた。

そして2017年、バンドはTaylorがかねてより影響を受けたことを公表していたSOUNDGARDENのツアーに、サポート・アクトとして出演が決まる。もちろん、彼らにとってこのオファーは光栄で喜ばしい出来事であったはずだが、実際は違った意味で特別な思い出となってしまう。5月17日、SOUNDGARDENのフロントマン Chris Cornellが、ライヴ終了後に自ら命を絶ってしまったのだ。このことは、音楽業界全体にも大きな影響をもたらしたが、最後のステージを共にしたTHE PRETTY RECKLESSにとってのショックは、計り知れない。彼らはツアーを中断し、しばし沈黙の期間に入った。
さらに、ショッキングな出来事は続いて、翌2018年には、メンバーと共にTHE PRETTY RECKLESSというバンドを育ててきた、プロデューサーのKato Khandwalaが、バイク事故で亡くなってしまう。
この件が追い打ちとなって、バンドは難しい時期に突入した。Benいわく、"死ぬか前に進むかの二択だった"とのことだが、敬愛するロック・スターを失い、バンドを一番近くで支えてくれたパートナーを失い、しばらくは音楽と向き合うことが難しかっただけでなく、生きることに希望が持てなかったのかもしれない。

それでも、彼らは前に進むことを選んだ。TaylorとBenは悲しみを音楽に書き換え、スタジオに入った。そして2020年、今作のタイトル・トラックでもある「Death By Rock And Roll」を発表。同楽曲は、ロック・チャートで1位を獲得したが、今回で5回目の1位獲得となるため、これは女性がフロントを務めるロック・バンドとしては初の快挙だ。
そして今作は、そんな彼らの魂の叫びが詰まっているだけでなく、上質で美しいロック・アルバムとして完成されている。

アルバムの冒頭を飾るタイトル・トラックは、いきなりガツンと頭を叩かれるようなパンチのある楽曲で、唸るギターとTaylorの鬼気迫るヴォーカルにグッとくる。続く2曲目、SOUNDGARDENのKim Thayil(Gt)とMatt Cameron(Dr)をゲストに迎えた「Only Love Can Save Me Now」では、一転してひねくれたグランジ・サウンドを聴かせる。さらに、RAGE AGAINST THE MACHINEのギタリスト、Tom Morelloが参加した「And So It Went」は、攻撃的でラウドなナンバーで、会場全体でシンガロングできるようなコーラス・パートもあるライヴ向きの楽曲でもある。他にも、ゴシックっぽい雰囲気のある「25」、王道ハード・ロックを聴かせてくれるナンバーや、オールドスクールなロックへの敬愛が見られるアコースティック・ナンバーなど、充実した内容だ。

始まりは悲しみや、絶望であっても、ここにある美しい楽曲の数々にはしっかりと生きる希望が込められている。生きること、ロックンロールすること、自分自身であることをやめない。そんなバンドの心情が伝わってくる作品だ。同時に、Taylor Momsenというひとりの少女が、凛とした大人の女性へと成長し、THE PRETTY RECKLESSというバンドが新たなロックンロールの担い手として、渡されたバトンを手に走り出す瞬間でもあるのだ。


▼リリース情報
THE PRETTY RECKLESS
ニュー・アルバム
『Death By Rock And Roll』
the_pretty_reckless_dbrnr.jpg
2021.02.24 ON SALE!!
SICP-31419/¥2,500(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
[Sony Music Japan International]
・Blu-spec CD2仕様

1. Death By Rock And Roll
2. Only Love Can Save Me Now (Feat. Matt Cameron & Kim Thayil)
3. And So It Went (Feat.Tom Morello)
4. 25
5. My Bones
6. Got So High
7. Broomsticks
8. Witches Burn
9. Standing At The Wall
10. Turning Gold
11. Rock And Roll Heaven
12. Harley Darling

配信はこちら

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