FEATURE
HALESTORM
2018.07.25UPDATE
2018年08月号掲載
Writer 井上 光一
地に足をつけたライヴ活動をひたすら続け、自らの信じるロック道を突き進む――グラミー受賞バンドにして、圧倒的な歌唱力を持つ紅一点のフロント・ウーマン、Lzzy Hale(Vo/Gt)擁するHALESTORMが、およそ3年ぶりとなる最新作『Vicious』をリリース。
先行公開されていた「Uncomfortable」、「Black Vultures」といった楽曲だけでもわかるとおり、本作に収められた全12曲(日本盤ボーナス・トラックを除く)の嘘偽りなきロックの魂は、通算4作目にしてさらなるレベルへと到達している。最新のテクノロジーで飾りつけられた作為的なプロダクションなどとはまるで無縁の、飾りっ気のない武骨なまでの古き良きハード・ロックの精神に則った、これぞ正統派と呼ぶに相応しい音を鳴らしながらも、決して懐古主義に陥らないバランス感覚に裏打ちされた、今を生きるミュージシャンたちの姿がはっきりと刻まれた作品となっているのだ。
Lzzyによる強烈極まりないシャウトで幕を開ける、上述したTrack.1「Black Vultures」からして、本作がどのようなアルバムであるのかを高らかに宣言しているかのよう。ヴォーカルや楽器の鳴り、そのすべてが生々しく迫りくる様は、まさに迫力満点のひと言。続くTrack.2「Skulls」も、Lzzyの不敵な歌い回しとシャウト、腰に来るヘヴィなベース・ライン、激タイトなドラムス、グルーヴィなギター・リフがリスナーを容赦なく攻めたてる。本作の攻めの姿勢は、Lzzyの実弟、Arejay Hale(Dr)のファストに突っ走るドラムスにライヴでの盛り上がりを期待せずにはいられない、こちらも上述した先行シングルTrack.3「Uncomfortable」で、最初のハイライトを迎えるのだ。やはりライヴで盛り上がりそうな古典的なロック・ナンバーのTrack.4「Buzz」にせよ、押し引きをわきまえたグルーヴィなJosh Smith(Ba)によるベース・プレイも含めて、じっくりと妖艶に展開していくTrack.5「Do Not Disturb」にせよ、中盤にかけてドラマチックに曲調を変え、Lzzyの叫びと共に放たれる、Joe Hottinger(Gt)の最高にクールなギター・ソロに興奮間違いなしのTrack.7「Killing Ourselves To Live」にせよ、ファンの望むHALESTORM節が炸裂した楽曲が中心の本作は、音楽性の幅を広げた前作『Into The Wild Life』(2015年)に満足できなかった旧来のファンも納得させるものであろう。とはいえ、繰り返すように言うが、HALESTORMは単なる懐古主義のバンドではない。例えば、定期的にリリースしているカバーEPでは、SKID ROWやMETALLICAといったバンドと共に、LADY GAGAやDAFT PUNK、FLEETWOOD MACの楽曲を取り上げており、音楽的制約など設けていないということは、改めて強調しておきたい。だからこそ、アコギを使った変則的なリフで構成されたトラックが印象深いTrack.6「Conflicted」のように、新たな挑戦と言えそうな楽曲も見事にものにしているし、悲哀と痛みの中に希望の光を照らし出すような、ストレートな心情を綴った歌詞とメロディがシンガロング必至のTrack.12「The Silence」といったバラード曲に、確かな説得力が生まれるのだ。さらに言えば、日本への想いを込めた、その名も"Tokyo"という痛快なナンバーが、日本盤にのみボーナス・トラックとして収録されていることも、愚直なまでに誠実なバンドならではのサプライズと言えるだろう。2018年という時代を反映させつつ、タイムレスな魅力に満ちた、力強くエキサイティングな王道のロックンロール・アルバム。言うまでもなく、爆音推奨である。
▼リリース情報
HALESTORM
ニュー・アルバム
『Vicious』
2018.07.27 ON SALE!!
[WARNER MUSIC JAPAN]
WPCR-18067/¥2,200(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
1. Black Vultures
2. Skulls
3. Uncomfortable
4. Buzz
5. Do Not Disturb
6. Conflicted
7. Killing Ourselves To Live
8. Heart Of Novocaine
9. Painkiller
10. White Dress
11. Vicious
12. The Silence
13. Tokyo ※国内盤ボーナス・トラック
14. Love Bites [So Do I] (Live in Philly 2015) ※国内盤ボーナス・トラック
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