FEATURE
道玄坂下り隊
2013.06.19UPDATE
2013年06月号掲載
Writer 山本 真由
これまでにも、アイドルがパンク・カヴァーというのはあったけれども、こんなのってアリですか? リアルとアンリアルの間“2.5次元”の少女たちによるエアー・カヴァー・プロジェクト……道玄坂下り隊。存在するのかしないのか、一体中の人たちは何者なのか、謎だらけの存在。ヴィジュアルも、アニメ調の似顔絵と顔がはっきりとは見えないように加工された写真というミステリアスなもの。これだけでは、全く理解不能というか、そんな訳わからん色モノのアイドルに“パンク”なんて冗談キツいわ!と、世間からのお叱りを受けるかどうかは知りませんが。
実は、驚きはそれだけじゃない!というか、本当の驚きは中身のサウンドにある。まず、これまでの“カヴァー・アルバム”という概念の覆すほどに、選曲がリアル・タイム・キッズ。同じシーンにいるバンドには、絶対できない選曲だから面白い。今をときめく、国内の人気バンドたち、ROTTENGRAFFTY、TOTALFAT、knotlamp、Glory Hill、Nothing's Carved In Stone、UNDERLAND、locofrank……と、さらにELLEGARDENという、まさにライヴ・キッズ垂涎のメンツ!それだけでなく、GREEN DAYの「Basket Case」やTHE OFFSPRINGの「Pretty Fly」、SUM 41の「Fat Lip」、GOOD CHARLOTTEの「Lifestyles Of Rich And Famous」といった洋楽のパンク・アンセムもしっかり押さえている。これこそ、オレ得ってヤツです。しかも、サウンドもかなり本格派!
アレンジもシンプルで好感が持てるし、原曲のイメージを割ときちんと壊さず、聴きやすく作ってるところが上手い。ヴォーカルもいわゆるアイドルっぽい雰囲気ではなく、敢えて言うならMiley Cyrusあたりのヘルシーなディズニー・アイドルのようなイメージと言えるかもしれない。一言でいうと、爽やかってとこかな。それにしても、TOTALFATの「Good Fight & Promise You」ってこんなにガールズ・バンドに合う曲だったんだ!?とか、NCISの「lsolation」は女子が歌うと洋楽っぽく聴こえる!?とか……何だか目からウロコの発見ばかり。
所詮アイドルの色モノ・カヴァーでしょ?なんて斜に構えて、聴く機会を逃したら勿体ない! よくある単なるオリジナルの劣化版のようなカヴァーではなく、その楽曲のもう1つの可能性として楽しむことが出来るし、散々カヴァーされてきた曲ばかり収めたカヴァー・アルバムにはない新鮮さがある。原曲の良さをより純粋に表現したこのカヴァーで、原曲の魅力を再確認することもできる。とにかく、ガールズ・バンド好きは勿論、現代のパンク・キッズには、ハマる要素しかない! 気になったら、まずは聴いてみるべし。
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