FEATURE
IRON MAIDEN
2012.11.08UPDATE
2012年11月号掲載
Writer 沖 さやこ
8500万枚を超えるアルバム・セールス、2000回を超えるライヴ・パフォーマンス、フロアを敷き詰めるたくさんのオーディエンス、重厚なスタジオ・アルバム15枚と、活動開始から30年以上の間、唯一無二の世界最高のへヴィ・メタル・バンドとして第一線で活躍し続けるIRON MAIDEN。彼らが2012年10月からピクチャー・ディスクのアナログ盤を限定生産で随時リリースする。これらのアナログ盤は現在行われてる、1980年代、特に『Seventh Son Of A Seventh Son』のアルバムに焦点をあてた80年代中心の曲で構成された“Maiden England World Tour”を記念して企画されたものだ。1980年代にリリースされたIRON MAIDENの初期の8作が、オリジナルのマスター・テープからカットされたヘビー・ウェイトのアナログ盤で、内袋にはゲートフォールドのスリーヴに印刷されるなどの豪華仕様になっている。リリースはオリジナル・アルバムのリリース順通り。海外のリリース・スケジュールは、10月15日に『Iron Maiden』と『Killers』、11月に『The Number Of The Beast』と『Piece Of Mind』、2013年1月に『Powerslave』と2枚組の『Live After Death』、2月には最後の2タイトル『Somewhere In Time』と『Seventh Son Of A Seventh Son』とのこと。日本盤は11月21日に最初4枚、2013年2月末に次の4枚をそれぞれリリース予定だ。
リーダーであるベーシストのSteve Harrisが1970年代半ばにIRON MAIDENを結成。メタルというジャンルが創成した当時からそのスタイルを貫き通し、1980年に歴史的名盤であるデビュー・アルバム『Iron Maiden』をリリース。NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の立役者としてシーンに君臨する。1981年に2ndアルバム『Killers』をリリース後、当時ヴォーカルを務めていたPaul Di'Annoが脱退。当時同じくNWOBHMの代表格であったSAMSONでヴォーカルを務めるBruce DickinsonをSteveが勧誘し、彼はIRON MAIDENに加入することとなる。そして1982年に3rdアルバム『The Number Of The Beast』をリリース。Bruceの声域の広さは、IRON MAIDENの音楽のスケールをより拡大させ、バンドとしての地位を不動のものとする。彼の加入によりネクスト・フェーズへと突入したバンドの人気はイギリスだけではなく、瞬く間に世界中にその名を轟かせることとなった。
バンドはその後1983年に4thアルバム『Piece Of Mind』、1984年に5thアルバム『Powerslave』、1985年に2枚組のライヴ・アルバム『Live After Death』、1986年に6thアルバム『Somewhere In Time』、1988年に7thアルバム『Seventh Son Of A Seventh Son』をリリース。バンドは80年代だけで7枚の新作アルバムに7度の世界ツアー、レコーディングに国内ツアーにと休みなく明け暮れた。“地球上で最もハードにツアーするバンド”という評判を確かなものとする。
1980年代での怒涛のリリースはバンドだけではなく、メタル・シーンの勢いを物語っていると言っても良いだろう。1970年代後半に台頭してきたHR/HMシーンはその10年間常に輝き続けていた。だが1990年代はHR/HMシーンの人気は停滞。IRON MAIDENも音楽性の違いからBruceやAdrian Smith(Gt)が脱退するなど、苦しい時期が続いた。だがバンドはその苦難を乗り越え、BruceとAdrianもバンドへ再加入し、自らの音楽性を追求してゆく。
2010年に発表した15作目のスタジオ・アルバム『The Final Frontier』は世界28ヵ国でチャート1位を獲得し、アメリカでは彼らにとっての最高位となる4位を飾るなど、チャート上ではIRON MAIDEN史上最大の成功作となった。同作に収録されている「El Dorado」でアメリカのグラミー賞ベスト・メタル・パフォーマンス部門初受賞も果たしている。ワールド・ツアーは依然、5万人規模のスタジアム・ライヴのチケットが即完という大盛況ぶり。同アルバムを引っ提げて開催された“The Final Frontier World Tour”では全世界のオーディエンスを熱狂の渦へ巻き込んだ。その様子はチリ・サンディアゴ国立スタジアムのライヴを完全収録した『EN VIVO! ~The Final Frontier Live~』を見て頂ければお分かりになるであろう。オーディエンスは10代、20代の若者から、リアルタイムでバンドを追い続けているであろうメンバーと同世代、それ以上の年齢の人々まで、非常に幅広い。開場前から高まる熱気や画面の外まで汗が飛んできそうなほどの熱狂をリアルに感じられる映像と音は鳥肌モノだ。今年はバンドだけではなくメンバー個々の活動も盛んで、AdrianはSIKTHで活躍していたMikeeと共に新プロジェクトPRIMAL ROCK REBELLIONを始動させ、Steveは9月に初のソロ・アルバム『British Lion』をリリースしている。バンド活動と並行してサイド・プロジェクトが有意義なものになっているのは、バンドが良好という証と言っていいだろう。
今もなお世界中で衰えることを知らない彼らの人気とパワー。この結果はデビューから30年以上もの間、彼らが自らの芯を曲げることなく音楽性を研ぎ澄まし続けたからに他ならない。メタル・サウンドに溶けるプログレッシヴな要素、豪快なギター・リフ、安定感とスケールのあるリズム隊、ドラマティックかつ強靭なヴォーカル。アルバム・ジャケットやTシャツに必ず登場するバンドのマスコット“エディ”は、時代に合わせて姿を変えるも、絶えずファンから愛され続けている。バンドにとっての1980年代はまさしく、活動と音楽性の礎だ。“Maiden England World Tour”はそれを体現し、同時にこれからのIRON MAIDENを感じることができるツアーとなったに違いない。
ピクチャー・ディスク、ゲート・フォールドと見た目もとても華やかな豪華アナログ盤。針を落とすのは少々気が引けるが、聴いて楽しむもよし、見て楽しむもよし。音源を持っている人もそうでない人も、バンドの培った30年以上もの歴史を祝福するアイテムとして、手元に置いておくのはいかがだろうか。
IRON MAIDEN
【ピクチャー・ディスク・アナログ盤】
『Iron Maiden』(1980)
『Killers』(1981)
『The Number Of The Beast』(1982)
『Piece Of Mind』(1983)
2012年11月21日リリース
各\3,800(税込)
『Powerslave』(1984)
『Live After Death』(1985)
『Somewhere In Time』(1986)
『Seventh Son Of A Seventh Son』(1988)
2013年2月末リリース予定
[EMI MUSIC JAPAN]
- 1