FEATURE
THE SUMMER SET
2010.10.12UPDATE
2010年10月号掲載
Writer MAY-E
エモのムーブメントが吹き荒れるアメリカのインディ・ロック・シーンの中で、エモ系の名門レーベルThe Militia Groupより2枚のEP『...In Color』(08年)『Meet Me On The Left Coast』(09年) をリリースし、キッズの間にじわりじわりとその名を知らしめてきたTHE SUMMER SET。07年春、JIMMY EAT WORLDやCOPELANDといったビッグ・バンドを数多く生んでいるアメリカはアリゾナ州で結成されたバンドだ。ポップ・ミュージックやパワーポップに影響を受け、“誰もが聞いてハッピーになれる曲を”作ることを信念に精力的に活動を続けている、まだ20歳そこそこの若者5人組である。
メロディック・エモのコンピレーション・アルバム『Beyond The Blue Vol.2』へ楽曲を提供した他、08年にミニ・アルバム『Give Us A Song To Show The World』にて日本でビューを飾っているので、日本のメロディック・ファンにもよく知られたバンドだろう。
THE SUMMER SETのサウンドは、バンドの音楽への思いが表れているように、弾けるようなポップ感とエモーションに溢れている。Brain Dales(Vo) の歌唱力は抜群で、どこかあどけなさを残す優しい歌声もTHE SUMMER SETの肝。この歌声が、温かみのあるバックサウンドに心地良くフィットしている。
Brain が地元アリゾナの人気エモ・バンドTHE FORMAT のカヴァーをMySpace にアップしたところ、ヴォーカル探しをしていたメンバー4人がそれを発見したことが、Brain がバンドに加入するきっかけというのも、ほっこりとしてしまうエピソードだ。
Razor&Tie へレーベル移籍し、完成させた初のフル・レングス・アルバム『Love Like This』。本国では昨年リリースされていたものだが、日本盤にはボーナス・トラックを贅沢に6曲も追加収録(Taylor Swiftのカヴァー曲のライヴ・バージョン)。アートワークも一新し、全17曲というボリュームでリリースされる運びとなった。THE ROCKET SUMMER風の軽快なポップ・チューンTrack.1「The Boys You Do (Get Back At You)」Track.2「Punch-Drunk Love」でスタートする今作『Love Like This』。
シンセサイザーを取り入れた甘酸っぱいTrack.3「chelsea」のビデオクリップには、人気ドラマ「ジョナス」でヒロイン役を演じるChelsea Staubが出演していて、アメリカンコメディ風の仕上がりがとてもユニークだ。ダンサブルなTrack.4「Young」も、エレクトロの使い方がさりげなくて良い。「chelsea」の次に人気を集めそうなTrack.7「Love Like This」は強力なフックが満載。Track.8「Girls Freak Me Out」はポップ・パンクのファンにもアピールできるアグレッションが詰まっており、Track.9「Passenger Seat」のような爽やかなエモナンバーや、Track.12「You Belong With Me」のアコースティック・バラードまで、アルバムの最後まで爽快な気分で聞くことができる良盤だ。
HEY MONDAYのCassadee Pope(Vo)のお気に入りアルバムだという今作『Love Like This』。フロリダから、世界へ羽ばたく日も近い。 MAY-E
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