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INTERVIEW

流血ブリザード

2025.12.12UPDATE

2025年12月号掲載

流血ブリザード

Member:ユダ(Vo) ミリー・バイソン(Gt) スーザン・ボ・イール(Ba) セクシー・ダイナマイト・プッシーガロアⅧ世(Dr)

Interviewer:フジジュン

凶悪鬼畜ロック集団 流血ブリザードが、実に7年ぶりとなる盤としてのアルバム『アンチェインオーバーキル』と、彼等が愛してやまない史上最凶のパンク・ロッカー GG Allinのトリビュート・アルバム『FUCK OFF, WE MURDER!!!』を2枚同時リリース。バンドの最狂傑作であり最大の問題作と言える最新アルバムは、極悪且つアグレッシヴな歌とサウンド、怒りも苦しみも赤裸々に綴った歌詞世界と、流血ブリザードの多面的な魅力やユダの鬼畜ぶりと人間らしさが凝縮されている。そんな最新アルバムについて、そして彼等のルーツと最新型がよく見えるトリビュート盤について、メンバー4人に話を訊く。


自分の持ってるパンクのCDの中でも一番好きなアルバムができた


-4枚目のフル・アルバム『アンチェインオーバーキル』と、GG Allinトリビュート・アルバム『FUCK OFF, WE MURDER!!!』。まずは2枚のアルバムが完成しての率直な感想を聞かせてください。

ミリー:オリジナル・アルバムは満を持して、ようやく出せたという感じだな。前回のアルバム(2018年リリースのベスト・アルバム『歩くオリモノ』)以降、シングルやミニ・アルバムは出してたけど、まとまった盤は7年ぶりだし。なんと言っても新しいベーシストが入った現体制でのアルバムを早く出したかったから、それが形になったのが嬉しい。個人的には流血ブリザードを17年やってきて、一番の自信作が出せたと思ってる。

スーザン:オラも流血ブリザードに入った当初から、新しい音源を作りたいと思ってて。加入してすぐに新曲を作って、デモCDを作ったりしてたんですよ。"次はアルバムを作りたい"という願望があったので晴れて願いが叶った気分だし、想像以上のアルバムができた。しかもGG Allinのトリビュート盤と2枚同時に音源が出せて、どデカいうんこが出たみたいな満足感があります(笑)。

セクシー:スーザンが入って1年くらい経って、バンド的にもしっくりきてるなかでアルバムが出せるという話になって、楽しくレコーディングできたのが大きいです。ご縁があって、Diwphalanx Recordsから出せるというのもありがたいし、今回は全部のタイミングがバッチリ合った気がしてます。

-ユダ様はいかがでしょうか?

ユダ:まず、『アンチェインオーバーキル』はジャケットから内容まで全部が過去最高な、流血ブリザードの集大成みたいなアルバムができたと思います。それと『FUCK OFF, WE MURDER!!!』は、全曲流血ブリザードを語る上で外せないGG Allinのカバーというトリビュート盤を完成させることができて、恐らく世界で最初にこれをやったという歴史的な名誉を手に入れたのがすごく嬉しいです。 そして俺はバンドマンであり音楽コレクターなので、めちゃくちゃいろんなパンク・アルバムをコレクションしてるんですけど、自分の持ってるパンクのCDの中でも一番好きなアルバムができたのが何より嬉しいです。音の粗いところも好きやし、"GG(Allin)が俺に降りたな"と思うくらい忠実なところもあれば、独自の解釈での崩し方でカバーもしたり。何度も繰り返し聴きたくなる、すごく好きな一枚になりました。

-GG Allinのトリビュートを完成させてからオリジナル・アルバムの制作に取り掛かったそうですが、GG Allinのスピリットが注入されてか、(オリジナルの)1曲目「アンチェインオーバーキル」からすごく振り切れてて、これまでの流血(ブリザード)のイメージを覆されました。

ユダ:「アンチェインオーバーキル」はめちゃくちゃ難しくて。最後になって、"なんかパワーが伝わらん。もう1回やらせてください"って言って録り直したんですけど、改めて聴き返しても録り直して良かったと思います。

ミリー:アルバムの中でも「アンチェインオーバーキル」のイントロが一番難しかったからな。でも、これまでのアルバムではそこまでテクニカルなことをやってこなかったから、今作を完成させて"アタイらもちょっとだけ前に進めているのかな?"っていうのを感じられた。「アンチェインオーバーキル」をリード曲にしようと言ったのはユダなんだけど、曲のアイディアは何年か前からあって。"Unchain"っていうのは、鎖から解き放つというか、なんにも縛られていない状態のことで、この曲のアイディアを出したときくらいから、ユダは何か鎖に縛られてるというか、重圧を感じていそうな気がしていた。

ユダ:歌詞を見たら、自由を制限してくるものや人への怒りと、そこから解き放たれて熱を取り戻して、もう一度やってやろうって気持ちになる内容になっていて。そういう意識をして書いたかどうかも覚えてないんですけど、パンクの世界でずっとやってきて、しがらみとかがすごくしんどくなっていた時期があったんです。何にも縛られたくないって気持ちでやってるのに、いろんなところで制限されて。自由にできるからパンクやってるのに全然自由もなくて、ホンマに苦しかった。"みんな矛盾してるやん、全然自由なんかないやん"と思ったら、正直パンク・ロックさえも愛せなくなってた時期があって。"こんなところから抜け出したい"って気持ちが歌詞に出たんやと思います。

-紙資料には、"コンプライアンス順守なロックバンドに対する「アンチテーゼ」"と、今作のテーマが書かれてました。

ユダ:そうですね。実はパンクってしがらみが多いジャンルでもあって、"こんなんしたらパンクじゃない"とか言われたり、伝統芸能以上に固い部分もあったりして。逆にパンク・シーンに全く入らず、パンクなんてほとんど聴いてないバンドのほうが、全然パンクじゃない代わりに自由だったりするんですけど、それは全く別物で。個人的にはやっぱりちゃんとパンク文化を通った上で、オリジナルなものが加えられてるバンドが好きなんで。このシーンの中でどうするか? っていうのは、すごく苦しみました。

ミリー:あと、アルバムができたことで、自分で自分を縛ってたと気付かされたところもあったよな。

ユダ:たしかに、流血ブリザードらしさっていうものに縛られてたところもありましたね。最初はアンチでやってたことが、"なんで今日は何も投げなかったんですか?"とか、"なんで脱がなかったんですか?"とか聞かれるようになって。正直、そんなんしたくない気分のときも、"一応、やっとこうか"って、ルーティンみたいにやってるところがあったりして。ライヴハウスに怒られたり揉めたりしながらやってた頃は好きでしてたのに、求められて当てにいってる自分が嫌になってうんざりしたり。

ミリー:アタイらもキャリアが17年とかになったから、何をやっても受け入れてくれるような、バンドとしての理想の形が広がってきてるんだけど、自分たちが"流血ブリザードはこうあるべき"と考えてたときも、知らず知らずにあったなと思って。自分は自分を縛らないでおこうっていうのが、このアルバムを作って感じたことだな。

ユダ:それと今回、いろんな人の力を借りて作れたのも大きくて。『アンチェインオーバーキル』では、いろんな人がレコーディングに来てコーラスを入れてくれたのもそうやし、元メンバーの力もあるし。ワンダー久道(ワンダー久道/Gt/作詞者/作曲者/Vo)君が「MY SWEET HOME OSAKA」の編曲やギターをしてくれたり。