INTERVIEW
Verde/
2025.11.12UPDATE
Interviewer:山口 哲生
Alice Nine.のヴォーカリスト、Shouによるソロ・プロジェクト、Verde/。バンドの無期限活動"凍結"後、2023年12月から始動したこのプロジェクトは、凄まじいペースで楽曲を発表。昨年リリースした1stアルバム『V/』(読み:ヴェルデ)から約1年で、早くもEP『OBSIDIAN/』を完成させた。ハードさ、ヘヴィさをさらに増しながらも、きらびやかでスケール感のある楽曲たちを詰め込んだEPと、ここまでの歩みについて、Shouにじっくりと話を訊いた。
ライヴを観に来たいと思うような楽曲が一番のテーマ
-Verde/を始動されてからまもなく2年になりますが、ここまでの活動を振り返ってみて率直なご感想というと?
バンドで活動していたときは5人で協力してやっていたことを、サポート・メンバーに助けてもらいながらも、基本的に僕が責任を持ってやるという状態で活動しているので、前よりも目まぐるしく、あっという間の2年でしたね。
-しかもかなりハイペースですよね。リリースもライヴの本数も多かったですし。
そうかもしれないですね。たしかにハイカロリーなので、本当はこんなに動くのは難しいのかもしれないです。
-だけれども、自分がこれをやりたいと思っているからこそみたいな。
バンドをやっていた頃は、ソロ活動をしたい欲はそこまでなかったんです。Alice Nine.は本当にパズルが組み合わさったようなバンドで、お互いの弱点も長所も補い合える関係でしたし、自分がソロをやらなければいけないという必要に迫られる感じもなかったので。ただ、バンドを凍結することになったときに、"音楽を続けたほうがいい"という後押しが、先輩や仲間からあって。じゃあやってみようということで、"将"という(Alice Nine.での)名義ではなく、緑が咲き乱れるような落ち着ける場所をずっと守りたいという気持ちで、"Verde/(=緑)"という名前を付けて活動を始めてみたら、曲を作るのがすごく楽しかったんですよね。どんどん曲ができていくので、曲を出したいからライヴをしているという感じもあるかもしれないです。
-先輩や仲間から"音楽を続けたほうがいい"という言葉を貰ったときにどう思われました?
僕としてはデザインとか裏方っぽいことが結構好きなので、そっちに回ろうと思っていたんですけど、後輩のSHIN(シン/ViViD/Vo)から"絶対嫌です。一緒にツアー回ってください"と言われて。分かった、やろうよということで、曲を作る前からツーマン・ツアー("SHIN × Verde/ 2MAN TOUR「双龍-Twin Dragons-」")を決めていて。あと、お名前を出すのも申し訳ないぐらい憧れの先輩に、"ソロをやって力を付けなさい"というアドバイスをいただいたんです。その方が、とあるアーティストの東京ドームのライヴに連れて行ってくださって、その方のお車で"こうやって歌ったらどう?"って歌って聴かせてくださったり、ヴォイス・トレーナーを紹介してくださったり、本当に身に余るような施しを受けて。そのお気持ちをふいにしたら、人間として一生後悔するだろうなと思って、自分が基軸となるアーティストとしてもう一度歩み直そうという思いになりました。
-後悔しないようにという気持ちもありつつ、純粋にすごく嬉しいですよね、そう言っていただけると。
すごく嬉しかったです。もう舞い上がるぐらい。
-SHINさんもかなり強く出られたんですね。"絶対嫌です"という。
Alice Nine.はもともと解散という話だったんですけど、"「解散」という言葉は寂しいです"ってSHINに言われて。じゃあ別の言葉探そうということでメンバーと話し合った結果、でも活動休止じゃないよねという感じだったので、"凍結"になったんです。
-そこにもSHINさんの一言があったんですね。Verde/を始めるにあたって、こういう音楽がやりたいというヴィジョンみたいなものはあったんですか?
始動のときに発表した「The Wanderer/」(2023年)は、MACHINE GUN KELLY(現MGK)とかYUNGBLUDみたいなアーティスト像をイメージして作ったんですが、最初の1年は、僕がAlice Nine.でこういう曲をもっとやりたかったなという、ちょっと胸の中に残っているようなものを発信しようということで、1stアルバムの『V/』を作ったんです。なので、曲の作り始めはそういったソロ・アーティスト像みたいなものがリファレンスとしてあったんですけど、やっぱり19年の中でファンの方々と僕とで育ててきたものを、自分でもう一度定義し直してみる作業をしていきました。それもあって『V/』は、Alice Nine.でやっていてもおかしくないような、日本人独特の美しいメロディで、ちょっとハード・ロック寄りのアルバムになりましたね。
-曲がどんどんできたというお話もあった通り、制作はスムーズだったんでしょうか。
そうですね。自分にとって昔ながらのやり方というか。鼻歌で歌ったメロディを打ち込んで、リズムとコードを付けて、サポートしてくれているVerde/のメンバーに、メロディを尊重してもらいながらアレンジをしてもらっていて。Alice Nine.でも僕の曲はそうやって作っていくことが多かったので、地続きになっている感覚が聴いてくださっている方にもあるかなと思います。
-歌詞に関しても、こんなことを歌いたいというものがはっきりとあったんでしょうか。
Alice Nine.の凍結を発表してから1年間、"LAST DANCE"というテーマでツアー([ALICE NINE. TOUR 2023 LAST DANCE ACT.3「Graced The Beautiful Story」ep.2〝Farewell Flowers〟]、"ALICE NINE. LAST DANCE ACT.4「Frozen Waterfall」")を回って、各会場で寂しがってくださる、悲しい顔をしているファンの方々の前で歌ってきたので、1stアルバムはそういった人たちに対して寄り添うようなテーマの歌詞がすごく多いですね。
-そういった言葉が自然と出てきたと。
むしろ自然な書き方しかできなかったものですから、ひねりがないかもしれないんですけど、自分の心の中にあるものしか表現できないんだなって自分で実感しました。
-その『V/』から約1年で発表されるEP『OBSIDIAN/』について、こういう作品にしたいと考えていたものはありましたか?
1stアルバムで僕のキャリアに寄り添ってきてくれた方々に、今の自分の気持ちをちゃんと提示できたと思ったので、満を持して、自分がやりたいことを聴いてくださる方々に提示するタイミングかなと思いました。Verde/を今一緒にやっているのは、摩天楼オペラの優介(Gt)と燿(Ba)と、ドラムはSEX MACHINEGUNSだったKEN'ICHI君か、LiSAさん等で叩いている石井悠也さんで流動的なんですが、ほぼ固定メンバーでやっているんです。なので、仲間と一緒に音を出す前提のアレンジというか。結局僕は、バンドという集合体で戦ってきた人間なのもあって、やっぱりチーム戦だと思ってるので、自分の歌がよく聴こえる楽曲をサポート・メンバーにコピーしてもらってやるのではなく、この仲間だからこそできるもの、このメンバーとやったときに一番輝くようなアレンジにしたいと思っていました。
-なるほど。先行して発表されていた楽曲は、かなりハードな手触りの残る楽曲でしたよね。
僕としてはもともとハードめな楽曲も好きですし、特に優介は本当にテクニカルで美しいギターを弾く人なので、彼とのツイン・ヴォーカルみたいな感じの楽曲にしてみたいということと、ジャパニーズ・メロディのメタルコアみたいなものを追求してみようかなというテーマもあって。そういった切れ味が鋭くて深みがある、でもきらびやかさは残っているというものについて言葉を探していたときに、黒曜石(=OBSIDIAN)がピンときたので、それを掲げながら作曲して、アレンジに優介も深く関わってもらいながら一緒に作り上げました。
-ジャパニーズ・メロディのメタルコアというお話がありましたが、「Burning/」はまさにそういった感じですね。そういったサウンド面に関してもそうですし、曲の展開や構成も面白いなと思いました。
「Burning/」はメロディと構成を先に考えたんですが、A、B、サビ、A、B、サビ、落ちサビ、サビ、終わりってだいたい決まってる人が周りに多かったので、なんでいつも同じなんだろうっていうちょっと不思議な感覚があって。僕にとってはこの構成が自然に出てきたというか、「Burning/」に関してはこれが一番美しいなと思って原曲を作りました。
-歌詞の流れもこの形だったんですか? 最初のブロックが最後にもう一度出てきますけど。
メロディの流れが最初と最後のサビでひっくり返るという感じで作っていたので、歌詞もそれに合わせて自然とそうなった形ですね。
-なるほど。循環するような流れになっていて美しいなと思いました。
コロナ禍で小説を書いてみたんですけど、プロットの様式美として、"行きて帰りし物語"というのがあって。例えば"ロード・オブ・ザ・リング"は、最後にホビットの村に帰ってくるじゃないですか。あの、行って帰ってくる美しさみたいなものをすごく学んだ覚えがあるので、ストーリーテリングの手法の一つとして自分の中でやってみたかったのかもしれないです。
-もう1曲先行して発表されていた「White Noiz/」も同じくハードな印象が残る楽曲で。あと、メイン・メロディとコーラス部分で掛け合っていて、どちらかだけでなく、その2つで成立しているような感じもありますね。
楽器が弾けるようになったことよりも、歌を歌えるようになってからのほうが全然長いので、やっぱりメロディが頭に浮かんじゃうんですよね。イントロのギター・リフのメロディ、クリーン・ヴォーカルのメロディ、シャウト・ヴォーカルのメロディみたいに、メロディをずっと聴かされている感じになるのが(笑)、僕の曲の特徴かもしれないです。
-新曲として収録されるものも1曲ずつお聞きしていきたいです。まず、リード・トラックの「Nightglow/」は、中盤にはハードで重厚感があるブロックを設けつつも、気品もあって、とてつもないカタルシスのあるアップテンポ・ナンバーになっています。
この曲のデモを作っているときに一番肝だったのは、ギター・フレーズとドラムのキメでしたね。イントロとアウトロと1サビの後に出てくるあのフレーズがすごく気に入っていて、これはライヴでめちゃくちゃかっこいいだろうなと思ったので、ライヴ・アンセムにしようと思って作っていきました。僕はやっぱりVerde/はバンドだと思っているので、ライヴを観に来たいと思うような楽曲を作ろうというのが一番強いテーマとしてありましたね。
-歌詞についてはいかがでしょうか。
僕は谷川俊太郎さんと宮沢賢治さんが好きで。そういったものをモダンなメタルコアに乗せて歌ってるやつなんて世界中を探しても僕しかいないと思うので(笑)、そういったことをやろうと思ってました。
-そのお2人をメタルコアにという発想がそもそも浮かばないというか(笑)。
好きなものを強引に合体させた感じですね。片一方の頭はライオンで、もう片一方の頭は竜みたいな、めちゃくちゃなことをしています。
-ヤバいキメラですね(笑)。それでいてしっかりメッセージも入れていこうという。
僕の実家は繁華街のど真ん中にあったんですけど、遮光カーテンがなかったというか、世の中に遮光カーテンというものがあることを知らなかったので、子どもの頃は街の光とか、車のハイビームの光がバンバン入ってくる部屋で寝ていたんです。眠れない夜は天井を見ながら、窓から入ってくる光をぼんやりと眺めていたんですけど、そういった夜の光をどう表現しようかと思っていろいろ考えて、組み合わせが一番しっくり来て響きも美しかった"Nightglow/"をタイトルにしました。メッセージ性としては、早く夜が明ければいいな、光をもっと目指してもがいていたいなという思いをシンプルに表現しています。
-眠れないときに見上げていた天井の光って、今思い返すときれいだったなと思ったりします?
生きていくなかで、ドラマと似たようなシーンがあったりすると、そのときの経験を思い出して記憶がどんどん美化されていく感じがありますけど、当時はあんまり好きじゃない景色でしたね。きれいだなってのんきに思っている余裕はなかったです(笑)。早く寝なきゃとか、自分はこのままでいいのだろうかっていう焦燥感とかのほうが強かったので。そういった感情って誰しもが抱えていると思うので、この曲を聴いて勇気づけられる方がいらっしゃったらいいなといった思いも歌詞に込めてます。















