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INTERVIEW

moreru

2025.10.22UPDATE

2025年11月号掲載

moreru

Member:夢咲 みちる(Vo) Dex(Dr/Vo)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

-制作のプロセスに関して、前作までとの違いはありますか?

Dex:最近はメンバーみんながアレンジに加わるようになりました。例えば「絶滅によろしく」、「完全他殺マニュアル」はアツヲ(Gt/Vo)がデモを作った曲だし、「ROCKSTAR」のメタルっぽいパートは自分が作ったとか。各自が得意なパートを任せるっていうのは以前から試してはいたんですけど、このアルバムで本格的にやってみた感じですね。

-これまでは夢咲さんがデモを作るパターンが多かったみたいですけど。

夢咲:そうそう。でもみんなが曲を作れるから、自分がやるより良くなるだろうっていうところはお願いして。

-その方法論と、夢咲さんの"縦の直線"でしかないという全体のコンセプトの整合性を保つのは難しそう。

夢咲:まぁでも、みんなのことを信頼してるから大丈夫。俺には絶対できないことがみんなにはできるから、むしろバンドでしかできないことができて良かったです。

-サウンドも、今までより聴きやすくなってますよね。もちろん相変わらずうるさいんだけど、ノイズは抑えられている。

Dex:そうですね。今まで、特に『山田花子』と『闇の軽音楽で包丁を弾く』はわざと演奏をノイズで埋め尽くしてたんですけど、今回は演奏自体はしっかり聴かせつつ、"ここで鳴ってたらカッコいい"っていうポイントでノイズを強く出すっていうミックスは意図してやってます。

夢咲:今の自分が趣味で聴く分には『山田花子』ぐらいの音が一番好きなんだけど、それは小6ないし中1の俺がびっくりしちゃうかなって。てか、もうすでにやってる音をもう一度やる意味がない。小6の俺も、どうせその後にディスコグラフィを辿っていけば『山田花子』の音に出会うから。あと、やろうと思えば音は個人的に割れるしね。大した労力をかけずとも。なので一旦フラットにしました。

-収録曲についても聞かせてください。先行シングルは「乙女座最終日」と「絶滅によろしく」でしたけど、やっぱりアルバムの軸になるのはこの2曲なんでしょうか?

夢咲:あー......いや、特にリード曲みたいなのは意識してないですね。

Dex:最初にできたから。

夢咲:できた順番でしかないです。

-そうなんだ(笑)。

夢咲:一番聴かせたいというか、ポイントになる曲は「ROCKSTAR」かな。

Dex:俺も。1曲目から2曲目(「初恋と戦争の準備」、「ROCKSTAR」)の流れが一番核になってる。

-「ROCKSTAR」のメタルっぽいパートは、かなりヤバいですね。

夢咲:激ロックなんで。激ロック、よろしく。

Dex:ちょうど、みちるも自分もIRON MAIDENを聴いてた時期だったんで。ちょっと古めの単音リフにしました。

夢咲:"ロックスター"と聞いたときに想起されるグラム・ロックじゃなくて、思いっきりメタルをやるっていうのが、皮肉っぽくていいかなって思った(笑)。逆に。

-「ROCKSTAR」をはじめとするアルバム前半のアグレッシヴな曲を聴いていて改めて思ったんですけど、やっぱりmoreruって演奏が上手いですよね。

夢咲:そうなんですかね。俺はmoreruしかやったことないから、相対的には分からない。

Dex:結構言われますけど、個人的には"ハードコア的なことをやってるバンドの中では上手い"っていう意味だと思ってます。メタルとハードコアを分ける上で重要なものって気合だと思ってて。ハードコアは気合で、メタルはテクニック。もちろんmoreruとして演奏は上手くなりたいですし、めっちゃ練習して頑張ってますけど、どれだけ技術が向上してもそれを上回る気合が大事かなって。いくら演奏がちゃんとしてても、"こいつらめっちゃ必死やん"って思わせるのがライヴをやる上でめっちゃ大事。

夢咲:うん。"上手い"って言われてピンとこないのは、俺等が必死すぎるから。毎回、"助けてー!"って感じで演奏してるんで。上手いっていうのはもっとクールなイメージ。

-たしかに。ただ、単純に出音の説得力がすごいなとライヴを観るたびに思いますよ。だから全然スカムじゃないし。

夢咲:もともとはスカムだったけど、6年もやって毎週スタジオ入ってるとね。地道なもんですね。

-そのなかでもカオスさを保つために、作編曲がどんどんエクストリームに進化していくんだろうなと思います。「中卒無双」なんかも、青春パンク風だけどすごい楽曲。

夢咲:"青春パンク、全然完成してないでしょ"っていう。まず、ブラストビートや絶叫がない時点で、完全に改良の余地があるから。

Dex:青春パンクって基本的にDビートだから、ブラストビートのほうが良くない? っていう発想から始まって。

-めちゃくちゃ面白い(笑)。じゃあ模倣するというよりもむしろ。

夢咲:完全にアップデートだと思ってますけどね。それとまぁ、青春パンクの価値観みたいなものが普通に嫌いで、敵だと思ってるから。サウンドの良さに対して、歌詞の悪さがある。

-それで言うと、「討死!」もインパクトがある楽曲です。言ってしまえば下北沢のギター・ロックっぽい曲で。

夢咲:"あいつはクソだ"って言いながら別の音楽をやるよりも、敵だと思ってる人の領土に出向いて踏み荒らすことこそが真に革命的なことだと感じてるから。それはそれとして、嫌いとかウザいとか言いつつ、青春パンクやギター・ロックのサウンド面に関する一定の快楽を自分は完全に認めているので。グラインドコアなんかも含めて、ずっと全部のことをやりたいと思ってる。

-とはいえこれはmoreru的にアリなんだなって、ウケちゃいました。

Dex:全然、ウケてもらって大丈夫です。聴いて笑っちゃうのって、最高の音楽だっていう証明でしかない。

夢咲:自分でも、作りながら笑うしかないみたいな。笑えない曲はあんまり採用しません。

-ラスト・トラックの「あのね」も正直笑っちゃって。

夢咲:イメージしてたのは70年代後半から80年代に入って、電子化されてきた頃の昭和歌謡。女子のメンバーがいるから歌わせようってことで。

Dex:女子って。

夢咲:これがラストに流れることで、それまで歌っていた"君"がついに登場してしまったみたいな。だけど、最後のブラストビートでそれが全部妄言だったことが分かってしまうみたいな。自分の中では一貫したストーリーがある感じです。

-なんていうか、思いの外楽しく作品を作っているんですね。

夢咲:サウンドは楽しく作って、作詞はひたすらしんどい。この二面性は大事だと思う。

-ギター・ロックだったり昭和歌謡だったり、ある種型にはまったことをやってるときのmoreruが一番伸び伸びしているように見えて、それって面白いなって。

夢咲:それには最近結構自覚的になってますね。「ROCKSTAR」みたいに"完全に新しいものを作ってやるんじゃ!"っていう意志を持って作ってる曲はどうしても悩んでしまうけど、「中卒無双」や「討死!」、「あのね」には答えがあって、それを増幅させるだけでいいから楽。

Dex:完全に新しいものを生み出しているように聴こえるものも、膨大な過去のアーカイヴをつぎはぎしまくった結果だっていう側面があるから。オマージュ元がハッキリしていて、その上でふざけるっていうやり方はたしかに伸び伸びできる。

-その開き直りが、逆にmoreruが自己を確立したことの証左のようにも思えるんですよね。"エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)"で言うところの"おめでとう"じゃないですけど、そういう祝福のアルバムかもしれない。

夢咲:たしかに、"エヴァ"を終わらせた感じはありますね。「あのね」が"おめでとう"って感じでした。

-あとはもう単純に、素直になったっていうことなのかも。GEZANのツアー("47+TOUR『集炎』")にmoreruと5000が出演したとき、GEZANのマヒト(マヒトゥ・ザ・ピーポー)さんが、MCでmoreruの音楽について"俺にはI Love Youにしか聴こえない"と語っていたのが印象に残ってるんですけど、このアルバムではわりと素直に"I Love You"って言い始めてるような気がする。

夢咲:最近、俺はすごい根がいいやつなんじゃないかと思うんですよ。そういう時期とそうじゃない時期があるだけで。分かんないけど。で、実際は自分たちの周りにも悪いやつなんていなくて、ただ悪い時期といい時期があるだけじゃないかと思う。最近の自分はそんな感じでとても冷静なので、俺は人類愛に溢れたやつなのでは? とか考えてます。

Dex:今が正気を失ってておかしいのかもしれないけどね。また具合が悪くなったら変わるかもしれない。

夢咲:具合の悪いときといいときを繰り返すだけ。

-どんどん具合が良くなるように生きていこう、という話でもない?

夢咲:個人的には良くなりたいけど、そうならないこともなんとなく分かってるし。複雑な感情を持ってちゃんと生きていきたいですね。なんのインタビューなんだ、これは......。

-「絶滅によろしく」で、ずんだもんに"愛や絶望を使って/生き延びないとならないのだ"と語らせているのにも驚いたんです。ハッキリと、生き延びることを表明する姿勢に。

夢咲:まぁ、歌詞を書いてるときは本当にフライアウェイしてる状態なので。どうなんだろう。人は生き延びるべきなのか......でも、俺は生き延びようかな。

-さて、他人に聴かせるための作品ではないと言ってもこのアルバムはリリースされるわけですが、どんなふうに受け入れられるのをイメージしていますか?

夢咲:今まではある程度予想ができたけど、このアルバムが持っているものは本当にまだ計り知れないんです。自分で聴いてて、もはや嫌になったりもしたし。でも、めっちゃ広がってほしいとは思う。反応はどうであれ。

Dex:とりあえず全員、耳が痛くなる直前ぐらいの音量で1曲目から12曲目までスキップせずに聴いてください。イヤホンかヘッドホンかいいスピーカーで。スマホのスピーカーで聴くのはやめてください。そこからどう思うかは自由なので。

-そして、12月25日には渋谷clubasiaにて初のワンマン・ライヴ([moreru 4th Album Release Tour "霊霊障障新新感感染染" 最終編])が開催されます。2部制とのことですが。

夢咲:疲れるから。

-なるほど(笑)。どんなライヴになりそうですか?

夢咲:僕がギターを弾くターンがあったりしますけど、演奏が急に止まって演劇をやりだすとかはないです。もう、やるしかねぇ。戦います。頑張りますよ。

Dex:moreruを長めに観たい人は来てください。

夢咲:今までで一番長く演奏するから。

Dex:休憩もあるし。疲れたら休憩しよう。