INTERVIEW
DOLL PARTS
2025.06.05UPDATE
2025年06月号掲載
Member:ARISA(Vo/Gt) 児太郎(Dr)
Interviewer:フジジュン
ARISAと児太郎による2人組ロック・バンド DOLL PARTSが、最新アルバム『B.O.G "Bragging out garbage"』をリリースした。グランジ、オルタナ、パワー・ポップといった'90sのテイストを感じるロック・サウンドに、昭和歌謡を想像させるメロディ、歪んだ愛や情念渦巻く歌詞世界と、独創的な世界観を持つ楽曲たち。そして、ARISAの圧倒的な歌唱力やパフォーマンスは、海外のロック・ファンも注目している。2020年に児太郎が加入し、ライヴや作品を重ねるごとに明確になってきた自身の音楽性を反映した、渾身の一枚を完成させた彼女たちに、今作やバンドの現在について話を訊く。DOLL PARTSの"沼"にハマれ!
-5月28日にアルバム『B.O.G "Bragging out garbage"』をリリースしたDOLL PARTS。新作を掲げての東名阪のリリース・ツアーも終えたばかりですが、アルバムが完成しての感想はいかがでしょうか?
ARISA:今回は[B.O.G "Bragging out garbage"]というタイトルで、"ゴミを高く掲げる"といった意味があって。これは最初バンドのみんなで話して、"ロックでカッコいいよね"って付けたタイトルだったんですが、ファンの方がDOLL PARTSのライヴを観て、"沼にハマっちゃった"みたいなことを言ってくれるし、ファンの皆さんと深く共有できる作品にしたかったので。"沼(Bog)"っていうのにもピッタリのアルバムになったと思ってます。あと、ジャケットもそうなんですけど、今までのDOLL PARTSとは一味違うというか。
-アートワークも楽曲も、これまでの作品とはテイストが違いますよね?
ARISA:はい。前回『DOPE』(2023年リリース)ってアルバムを出させてもらったんですけど、そこからいろんなライヴやワンマンを何度もするなかで感じたことを、今作にしっかり反映できて。"現在のDOLL PARTSはこうだよ"ってものを、バンドとして提示できるアルバムになったんじゃないかと思ってます。
-その辺、具体的な言葉にするとどんな変化があったんですか?
ARISA:DOLL PARTSの音楽性って、一言で言えないというか。ジャンルで言うのがなかなか難しいと思うんですけど、ライヴやワンマンをやっていくうちに、バンドの色がすごく出てきて。"グランジっぽい"とか"オルタナっぽい"、"いや、ギター・ロックだよね"とか、いろいろ言ってもらう機会が多くなったなかで、"自分たちが今やりたいものはどういう音楽なのか"がメンバー内で一致してきたんです。"次やるならこんな曲がカッコいいんじゃないの?"というのを形にして、"これがDOLL PARTSの音楽です!"って提示できたのが今回のアルバムだと思っています。
-ライヴや作品作りをするなかでやりたいことが見えてきたとき、それを言葉や形にできるか力が付いたというのもあるんですかね?
児太郎:DOLL PARTSって結構幅広く曲があって、グランジだったりオルタナだったり解釈も様々だと思うんです。日々ライヴを重ねていくなかで、頭の中にあるイメージというかDOLL PARTSってこんなバンドだよね、みたいなものが形として表現できるようになってきたと思っています。自分が加入したときは20歳で、まだまだ吸収できるものがあるというか、伸びしろのある状態でしたが、2人からの音楽的な影響を受けて日々成長できていると思っています。
-児太郎さんはアルバムが完成しての感想はいかがですか?
児太郎:新曲も4曲入ってますし、ライヴでしかやってなかった曲もあるんですけど、そういった曲に自分のドラムを入れるところから始まって、COZZi(プロデューサー)さんに改めてミックスしてもらうなかで、音楽が生まれ変わった感じがあって。今まで聴いていた曲たちに、自分の色を入れるというか頭の中のイメージを形にする作業がとても楽しくて。
ARISA:児太郎が入る前の曲は別の人がドラムを叩いていたり、音源化してなかった曲はデモの段階で打ち込みのドラムだったりしたから、そういうことだよね?
-あ、今作にはそんなに昔からあった曲も入ってるんですね。
ARISA:そうなんです。DOLL PARTSを始める前、私がソロでやってたときからあった曲も入ってて。そういう曲たちに児太郎のドラムを乗せて、サウンド感も変えて録り直しました。
児太郎:だから、今までの作品と比べて完成度がめちゃくちゃ高くて。できあがった音源を聴いたとき、自分たちの演奏なのに感動するくらいいい出来で。今はもっといろんな人に聴いてもらいたいという気持ちです。
ARISA:児太郎はアレンジもイチから作って、すごくこだわったし。サウンド感も歌詞もしっかりこだわって作れたので手応えもあるし、自信作になったよね。
-そんな自信作を掲げての東名阪ツアー、お客さんの反応や反響はいかがでしたか?
ARISA:『B.O.G( "Bragging out garbage")』に収録された曲を多めにやったんですけど、アルバム収録の新曲「支配」がMVになっていたり、ライヴで盛り上がりそうな「わたしの正体」もあったりして、皆さんめちゃ盛り上がってくれました。
-ちなみにアルバム収録曲で今回新たに作った新曲はどれになるんですか?
ARISA:「支配」と「My place」、「わたしの正体」、「I'm always on your side.」の4曲です。最近、すごく熱量の高いライヴがやれてるなと思ってて、そのなかでみんなが盛り上がる曲を作っていく必要があるかな? と考えて制作をして。みんなアップテンポな曲が好きなので、DOLL PARTSらしさは崩さず、ライヴで盛り上がれる曲が作れたと思います。
-前作までと印象の異なる今作を聴いて、"こんな一面もあるんだ!"とか、"思った以上に沼は深いぞ!?"とかって驚いたファンも多いでしょうね。
ARISA:それはあるかも知れないですね。今回テーマみたいなものは決めてなかったんですが、メンバー間で共有していたのは、世界観を広くというかスケールのデカいアルバムを作りたいってことで。楽曲を作り始めてみたら、メンバーの意見がすごく合致して、"今こういう曲をやったらいい感じになるんじゃないの?"みたいな話をすると、"うん、そうだね"みたいな感じで、そこに争いは何も起きない(笑)。おかげでテンション感が高いまま制作に臨めました。今作では楽曲やサウンド感について、"こんなのをやりたい"って作曲者のCOZZiさんにしっかり伝えて、できあがってきた曲に私の歌詞や児太郎のドラムを入れてという作り方で進めたんですが。楽曲ごとの歌詞やサウンド感も自分たちで考えて、曲順もストーリーのある曲順を考えて、しっかりこだわって作れました。
-1曲目「支配」のディープな世界観にグッと惹きつけられて、濃厚でボリューム感ある14曲を聴き進めていくと、1つの物語を紡いでいるようにも聴こえて。アルバムを聴き終えたときは、1本の映画を見終えたような満足感がありました。
ARISA:映画っぽいというのは私の狙ってたところで。最後に収録された「I exist here」はエンドロールみたいなイメージで作ったので、そう感じていただけたのが嬉しいです。最後はハッピーエンドで終われた......のかな(笑)? あと、新曲の「My place」のイメージもそうなんですが、今のDOLL PARTSが出せる音や言葉を厳選して作ったんで、もっと広い場所に押し出して行きたいし、"いろんなところに届け!"って気持ちが込められているので、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。
-「My place」はまさにそういう曲ですよね。サウンド面もすごく壮大で、"まだ見ぬ場所に届くと願ってる"という願いが込められてる。
ARISA:児太郎とはもうすぐ5年になるんですけど、ライヴを重ねたりリハをやったりするなかで、理解し合える部分も多くて、最近では"姉弟みたいだね"って言われるくらいで(笑)。ライヴや楽曲に向かう道筋が合致して、一緒に歩んでいけてる部分があるので、同じものが描けたし、児太郎もめちゃくちゃ自分の色を出せたんじゃないか? と。
児太郎:自分はこのアルバムをライヴのイメージで演奏したんですね。レコーディングって慎重になりがちなんですけど、そうすると演奏がこじんまりしてしまうので。実際のステージと同じ熱量を感じてもらえるように、多少荒削りでもライヴ感を重視しました。結果、熱量感がしっかりと伝わるものになったんじゃないかな。あとはDOLL PARTSの良さってやっぱりバラードだと思っています。しっかり歌モノとして聴かせる楽曲があるのも強みだと思っていて、そういう"歌"を生かすドラミングみたいなものも意識してます。
そんな感じでアルバム収録曲のコントラストとしてもやっぱりライヴっぽいなって。