"音源もいいけど、ライヴは違うよね"って思ってもらえるバンドになりたい

－うん、このままのセットリストでのワンマンをやっても良さそうですね。"だったら「支配」は後半に持っていって......"とか、アルバムの曲順を見ながら想像ができます。

ARISA：うちのバンド、ライヴのときはギターのチューニングはドロップが多かったり、毎回セッティングが変わるんですよ。なんで曲順がマジで難しくて、ギターを3本とか絶対持って行くんですけど、対バンの人に"3人のバンドなのにこの機材の量はおかしいでしょ！？"ってよく言われて。

－あはは（笑）。じゃあ、このセットのままやろうと思ったらいろいろ大変そうですね（笑）。ARISAさんも制作しながらライヴをイメージしていました？

ARISA：そうですね。『B.O.G』で沼にハマってほしいと話しましたが、私の中で沼は沼でも汚い泥沼のイメージで。ライヴを経験していくうちに、ちょっと泥臭くというか、小綺麗にまとまりたくないって思ったので、そこはすごく意識しました。

－歌詞の面では、自身の表現や作風の変化って感じてたりしますか？

ARISA：私、普段は1日とか2日で歌詞を書いちゃうんですけど、今回収録されてる楽曲たちは、作る段階でいろんなところに届けたいという気持ちがあったので、"本当にこれでいいのか！？"って自分に問う時間も多くて、何回も書き直して作っていって。もともと曲のテーマは決まってたんですが、聴く人にスッと入ってくるワードや分かりやすさを追求して、完成したのがこの形という感じでした。

－作品を映画に例えましたが、ARISAさんの歌詞からはふっと画が浮かんでくる瞬間があったり、歌から主人公の表情や感情が入ってきたりする瞬間があります。

ARISA：そもそも私は映画みたいなストーリー作りを意識してることが多くて、"この曲はこういうことを歌ってるんだ"とか、"ARISAはこんな思想なんだ"とかが一発で分かるような歌詞を書くことに専念していました。歌詞を書く行程としては、例えば「支配」だったら、曲から"蛇"とか"絡め取る"みたいなイメージが最初に出てきて、展開していくみたいな書き方で。そこからストーリーを組み立てていくという感じなんです。

－そこに生まれる発想もすごく面白くて、"全部実体験です"と言われたら驚きますけど、歪んだ愛情や情念みたいなディープな世界観が、リアルに生々しく描けています。

ARISA：汚い言葉や現代的な言葉、例えば"スマホ"みたいな言葉は使わないという自分の中のルールがあったり、きれいな言葉で書き連ねていきたいというスタンスで書いていたりするので、映画っぽい表現になるんだと思うんですけど。ちっちゃい頃から歪んだ愛とか人間のドロドロした部分に惹かれるものがあったし、そういった日からのインプットが多かったので、実体験もあるにはあるんですけど、これまで自分がインプットしてきたものを反映して書いてる感はあります。

－創作に自分の想いを組み込んで、よりリアルにしていくというか。

ARISA：そうですね。ただ、今回新曲で書いた「My place」とかは自分のことを書いた曲になっていて。そういう歌詞って今までは少なかったんですけど、今思ってることを素直に書いた曲でしたね。

－これは勝手な推測で、「My place」も含めた今作を聴いて、今DOLL PARTSはこの状況を変えたい、次のステージに行きたいとやきもきしてるんじゃないか？ と思ったんです。

ARISA：あ～、でもさっきも話したように、バンドとしての熱量が上がってきてるしいろいろと話すことも増えてきて、"何かやりたい"みたいな欲求は常にあります。あとはまだ音源化してない曲や未発表の曲もたくさんあるんですけど、メンバーがみんな結構飽き性で（笑）、冷蔵庫に入ってる野菜が3日くらいで傷んじゃうように、うちのバンドは同じ曲を3回くらいやると新鮮さがなくなっちゃって。どんどん新しい曲を作っていかないと、傷んでいっちゃうような焦りがあるんです。なので、新しいことをやりたいという意欲は常に高いレベルで持っていると思ってます。

－そうか。現状がどうという話以前に、常に新しいことをやりたい気持ちや向上心があるし、それがバンドのモチベーションになってるんですね。

ARISA：ただ前回『DOPE』を出して、DOLL PARTSの音楽が広まっている実感もすごくあったので、今作には"ここで一発行っとくか？"みたいな気持ちはあります。最近海外の方からお声掛けいただく機会も増えて。例えば、オルタナやグランジの中に日本の音楽のニュアンスやメロディラインを入れて、海外のロック・ファンにも面白がってもらえるものを作ろうというのは狙ってます。

－YouTubeの動画を観てても、海外の人からのコメントも多いですよね？

ARISA：そうなんです。海外の方が私たちのMVを観て感想を言うチャンネルみたいなのも流行ってるみたいですし。海外の方から連絡が来て"ラジオで流したいんだけど"と言ってくださったり、地道に広まっていくんじゃないか？ と期待してますし、頑張ります。

－今後に期待できるような面白い展開が生まれてきてますね。ARISAさんは、音楽活動を始めるために上京したのが2016年。現在みたいな活動や状況は想像していました？

ARISA：想像できてなかったです。もともとソロでやっていて、バンドを始めて、児太郎とも5年になりますけど、バンドを始められて本当に良かったなと思ってます。バンドでいろんな気持ちや音楽性を共有できるようになって居心地が良いですし、バンド・サウンドにこだわっていきたいって気持ちはずっとあったので、それができていることや、こうして形になってきたことがすごく良かったなと。 約8年前に私が1人で渋谷の路上でストリート・ライヴをやってる動画がYouTubeにあるんですが、今更それがバズり出してるらしくて（笑）。15万再生とか行って謎にバズってるんですけど、久しぶりに動画を観ると、あの頃はデカいところでライヴやりたいとか単純なことは考えてたけど、音楽に対する思考はまだまだ未熟だったなぁと思い出します。今こうやってバンド・メンバーといろいろ話し合いながら、1つの作品をみんなで作っていく経験や、ライヴを一緒に盛り上げていく経験ができてるのは、自分の音楽人生の中の貴重な財産だなって改めて思いました。

－児太郎さんは加入したばかりの20歳の頃から考えて、今の状況をどう感じています？

児太郎：COZZiさんという大先輩がいるので、そこからの影響はかなり大きいですね。普段はユーモアたっぷりなんですが（笑）、音楽に対しての向き合い方だったりストイックな所にいつも刺激を受けてます。生き方というか、人としての奥行きみたいなものが音楽にはしっかり出るんだなと感じます。

ARISA：うちは（笑）？

児太郎：......まぁ、そんな感じです。

－わはは、すかされちゃいましたね（笑）。ではせっかくなんで、それぞれ『B.O.G』に収録された曲で特に思い入れの強い曲、みんなに聴いてほしい曲を教えて下さい。

ARISA：今回こうしてアルバムを作れたことは本当にすごいことで。ファンの方がいないと成り立たないというか、ライヴをやっていく上で熱量持ってやれてるのもファンのおかげだと思うし。うちのファンって動画をアップしてくれたり、友達に広めてくれたり、頼んでもいないことをすごく一生懸命頑張ってくださるんですが、そのおかげでDOLL PARTSの名前が広まってきたというのは絶対あって。"このアルバムができたよ。こういうバンドになったよ"とまずはみんなに提示したいと思ってます。 "私は今ここで歌えるよ"って気持ちや"もっと広まっていけ"という気持ちを、みんなにも向けて書いた「My place」をぜひ聴いてほしいのと。「I'm always on your side.」はファンのみんなに向けて書いた曲で、他の曲とちょっとテンション感も違うんですが、"私はいつでも君の味方だよ"って気持ちを素直に書いたんで、そっちもぜひ聴いてもらいたいです。

児太郎：自分は"DOLL PARTS といったらこの曲"というのが「My place」で。サウンド感もだし、歌詞もそうだし。この曲に関しては、ありちゃん（ARISA）が自分自身のことを歌っていると思うんですね。自分はステージに立ってこそ輝くことができるし、ステージこそが自分の居場所なんだと。最初にこれを聴いたとき歌詞にめちゃめちゃ痺れましたし、これこそがDOLL PARTSだと。一番気に入っています。

ARISA：児太郎って普段クールなんですけど、「My place」ができたときは、"ちょっとこれはヤバイのができた"っていつもとテンション感が違ったんです（笑）。ライヴでも荒削りくらいがカッコいいみたいな感じで、ちょっとずつ変化していて。これからも大事な曲になっていきそうです。

－手応え十分のアルバムが完成して、ここからの目標はいかがですか？

ARISA：もちろんもっと広い会場でライヴがやりたいとか、みんなに認知されたいとかいう気持ちはありますけど、バンドをやっていく上で、今自分がやりたい曲を貫いてそれが広まっていくのが一番いいなと思うので、これからも妥協せずにやっていきたいのと。さっきも話しましたけど、海外の方に聴いてもらうとか、より広いところで活動していけたらいいなと思っていて。

児太郎：実際、最近は海外の方が増えてるのを体感していて。海外の方って音楽の聴き方や解釈の仕方が日本人より鋭かったりするし、いいなと思ったらめちゃくちゃ盛り上がってくれるので、自分は海外でも活動していきたいなと思っています。まだステージを観たことのない人にも、一度観てもらえたら"いいね"って言ってもらえると思うので、海外の方に限らず、初めての人にもぜひライヴを観てもらいたいです。

ARISA：DOLL PARTSはライヴ・バンドというか、"音源もいいけど、ライヴは違うよね"って思ってもらえるバンドになりたいと思って頑張ってるので、『B.O.G』を起爆剤にしてバーン！ と行きたいですね。