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INTERVIEW

GHOST

2025.04.24UPDATE

GHOST

Member:Tobias Forge(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:金子みちる

-前作『Impera』では帝国の興亡、前々作(2018年リリースの4thアルバム『Prequelle』)では死と破滅(ペスト)がテーマに取り上げられていましたが、本作では"癒し"や"癒しのプロセス"がテーマなのですね。

ああ、その通りだ。

-本作では新たなキャラクターとして、Papa V Perpetua(パパ5世パーペチュア)が登場しています。彼について紹介していただけますか?

うーん、実は俺自身もまだ彼のことをよく知らないんだよ(笑)。これからツアーが進んでいくなかで、みんなと一緒に少しずつ彼のことを知っていくことになるんじゃないかな。
でも、その名前が示す通り、彼は"永遠の指導者"なんだ。これはちょっと面白いよね。だって永遠なんてものは存在しないから、そんな存在にはなれるはずがないわけだし(笑)。実際の世界でも"永遠の指導者"を名乗るような人間がいたりするけど、そういう人が死ぬと、また別の"永遠の指導者"が現れたりする。それってちょっと皮肉じゃないか? いったいどういう仕組みなんだ? 変だよね(笑)。でもそれはでっち上げであり、ジョークなんだ。俺としてはそのジョークを自分たちの世界にも持ち込みたかったんだよ。自らを"永遠の指導者"と呼ぶやつは、嘘をついているかもしれないっていう、ちょっとした注意喚起を促したいんだ。まぁ、世の中の人はきっとそのことを理解していると思うけどね。 彼がどんな人物なのか、これから分かるだろう。どこから来たのか、どういう役割を持っているのかとか、そういった物語の背景は、そう遠くないうちに明らかになっていくと思うよ。

-サウンド面では近作で見られた80年代アリーナ・ロックに通じる要素だけでなく、METALLICAのブラック・アルバム(『Metallica』)のような重厚なリフ・ワークも感じられたのですが、どのようなことを意識されましたか?

俺はもちろんMETALLICAの大ファンだから、その影響が自分の音楽に現れていることは否定できない。俺がレコードや曲を作るときは、常に様々な音楽を頭の中で参照しながら書いている。俺はMETALLICAだけじゃなく、Chris IsaakやTHE WANTEDみたいな全然違うジャンルの音楽も含め、いろんな音楽を聴いているよ。
METALLICAのブラック・アルバムは、とにかく曲の完成度が高く録音も音質も抜群にいいから、多くの人に強い影響を与えた作品だったと思う。あのレコードは俺が10歳のときにリリースされたんだけど、当然のように俺は大ファンになったよ。それに、1度そういう音楽に触れると、事故でも起きない限り、それを"なかったこと"にはできない。だから当然、あのアルバムは今でも自分の作曲に影響を与えてるし、METALLICAの最初の5枚は全部そうだね。特にブラック・アルバムは、今の俺の曲作りにとって欠かせない存在だ。
でも実は、俺はある意味4枚のブラック・アルバムを、それぞれ違う理由でインスピレーションの源として心から大切にしているんだよ。それはMETALLICAのブラック・アルバム、AC/DCの『Back In Black』、PINK FLOYDの『The Dark Side Of The Moon』、それからDAFT PUNKの『Random Access Memories』。これらはそれぞれ異なる要素を持つアルバムだけど、俺がテクニック面で参照として持っているレコードなんだ。 音楽を複雑にしたければ、ある程度スキルがあれば簡単にできる。でもAC/DCの『Back In Black』を聴くと、"難しくする必要はないんだ"って感じるんだ。テーマをシンプルにして、聴き手が感じられるように作ることが大事だってね。例えば、「You Shook Me All Night Long」とか「Let Me Put My Love Into You」とか、超シンプルだろう。でも、人々をどうやって踊らせるかを忘れちゃいけない。DAFT PUNKは、「Get Lucky」のように、簡潔でダンサブルだけど洗練された音楽を作った。そしてMETALLICAはメタルの側面、PINK FLOYDは知的な側面や遊び心、自由な発想を教えてくれる。例えば、女性が泣き叫んで歌っている「The Great Gig In The Sky」のようにね。 とにかく、心のままに作ればいい。でも忘れちゃいけないのは、それを他人にも理解できる形で届けるということ。誰にも理解されなくてもいい音楽を作りたいなら別だけどね。
そして、この4枚に共通して言えるのは、どれも途轍もなく大きな影響力を持つアルバムだということ。全世界の人間が知ってるような作品だよね。それを参考にしながら、俺自身も同じように大きなインパクトを与えるアルバムを作りたいんだ。彼等みたいなレコードを作りたいわけじゃないけど、人々に似たようなインパクトを与えるアルバムを作りたいのさ。つまり、いわば"5枚目のブラック・アルバム"を作ることを目指している。というように、影響を受けたのはMETALLICAのブラック・アルバムだけでなく、他にもいくつかアルバムがあるんだ。

-開放感のあるサウンドの「Cenotaph」からヘヴィな「Missilia Amori」への移行や、余韻を残した「Excelsis」の終わり方等、アルバム全体を通しての流れが巧みに整備されているように感じました。コンセプト・アルバムに近い趣も感じたのですが、曲順の意図や狙いを教えていただけますか?

率直に言えば、今君が言ってくれたような作品にしたかった。つまり、まるでドラマを観ているように、最初から最後まで聴くことで旅をしたような気分になってもらいたかったし、願わくは癒しのプロセスの一環になってもらえたらと考えている。もちろん、みんながみんな癒しを必要としているとは限らないけど、俺の音楽に惹かれる人たちの多くは、なんらかの形で癒しを求めていることが多いと思う。
だからアルバムを作るときは、まるでミシュランの星付きレストランで出される10品のコース料理のように構成したいと考えてるんだ。俺は自分の音楽やこの仕事を語るとき、映画やレストランの例えをよく使うんだけど、それは自分がシェフや映画監督に通じるものを感じているからだ。結局、俺たちはみんな本質的に同じことをやっていると思う。要するに、感情の小さな爆発を作り出して、それが喜びや成長を引き起こすようにするのさ。 俺の仕事がシェフと特に似ている点は、料理の世界ではある程度までは創造的でいられるけど、一度レストランを立ち上げて料理を作り上げると、それを何度も何度も同じクオリティで提供し続けなければいけないということ。俺の場合、3年ごとに新しい10品をメニューに加えるような感覚でアルバムを作っているんだ。新しいアルバムは10品のコースの試食メニューみたいなもので、家で楽しむこともできる。でも、俺たちのライヴに来るなら、それはレストランに来るようなもので、俺はこれまでの6つのコースのメニュー、すなわちアルバムから曲を選んで、それを組み合わせ、特別なセットを提供することができるんだ。つまり"シェフズ・テーブル"だね。 でもお客さんがレストランに来たら、昨日と同じ味を期待するよね? それと同じで、俺もライヴでプレイするときには、昨日やったのと全く同じくらいいい状態で曲を提供しなきゃならない。それがシェフとの共通点なんだ。創造的な部分もあるけど、それだけじゃなくて、肉体的なルーティンや規律もあるのさ。それが俺は好きなんだよ。