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INTERVIEW

moreru

2025.03.10UPDATE

2025年03月号掲載

moreru

Member:夢咲 みちる(Vo) Dex(Dr/Vo)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

既存のシーンのファンに嫌われて新しいリスナーが付くっていうのは、新しいことをやってることの証明でしかない


-いわば"光の軽音楽"のカウンターになるようなバンドの在り方を示せるのかも?

夢咲:そうです。外部を思考し続けるということです。

-EP『闇の軽音楽で包丁を弾く』は、そういったコンセプトが先にあって作られた作品なんですか?

夢咲:そうですね。これは中学生のときに聴き狂っていた毛皮のマリーズ『Faust C.D.』を聴き直したときに、中学生スイッチが入っちゃって、大人としてハードコアをイデオロギーや政治的な問題にする前に、子供の想像する闇の軽音楽として置いてみることによって、逆説的に超越性を獲得できるのではという着想がありました。それはあらゆることを差し置いて、様子のおかしい複数人が1つの音楽を共にして集団投射している=バンドであるということの美意識の"その感じ"を纏った"バンド"をやっておきたかったっていう。『呪詛告白初恋そして世界』に比べたらメロディも少ないけど、遠回りせずにやりたいことを伝えるとこうなりました、という感じです。

-たしかに、これまでの作品よりも肉体的な印象を受けました。これまでは精神世界で鳴っていた音が、今回はライヴハウスやクラブで鳴っているような。

Dex:バンド全体で一発録りした曲もあるし、あえて自分が知っている限りでは一番安いスタジオでレコーディングしました。そういうRAWなイメージで作った作品です。

-収録曲の中でも、「神の裁きと訣別するために」は異彩を放っています。こういった歌モノに振り切った曲は以前からやりたいと思っていたんですか?

夢咲:これもコンセプト先行です。現代で軽音楽として想像されるものは、悲惨なものです。タバコの吸殻が積もったワンルームの賃貸でセックスをして、崩落していく生活を飲みの場で大きい声でいっている、以上、みたいな世界観を共有してシンガロングして、馬鹿なんじゃないかなと思います。ましてやそれがロックだパンクだと形容されているから激オコなのです。だから、あえてグラム・ロック的なものを軽音楽として解釈し直すことで、神から授かった超越性を含ませなければダメなんじゃないかと思ったんです。ロックと名乗るのなら、生活でなく超越で頼むよってことです。

-グラム・ロックという手法が選択された理由についてもう少し詳しく聞かせてください。

夢咲:しかしグラム・ロック的を完全に志向しているわけでもないのです。ただ超越をもたらしている音楽があって、それに比べて、今の日本のインディー・ロックが履き違えているものを告発したかったんです。

-先程お話していたような、"生活を歌うロック"が?

夢咲:はい。売れてる誰かとかではなくて、そこに蠢いている何かが。死にたいで戯れているだけではそれは生活なんです。なぜ俺が死にたい世界が存在しているのか、という次元に問題系を移送し、そこで初めて外部の存在を知覚し、外部=神を抱いてやるぜというのが私のロックの基本的な世界観です。

-昔のほうが技術的に優れていたとか、そういうことではなく。

夢咲:そうですね、80〜90年代のロックを崇拝して昔はよかったというノスタルジックに逃げ込むつもりもないです。ただ単に最近は過剰性と演劇性が足りてないじゃないですか。リアルより大事なファンタジーもある、そこで初めて到達できる存在論がある......優劣ではないかもしれませんが......。

Dex:別に優劣を付けてもいいと思うけどね。

夢咲:超越的な目線を、神を想定しさらにそれの外に立っているという視座を自分の中に取り戻したかったんです。

-目に見えるものしか歌えないようでは話にならないと。

夢咲:話にならないですね。目に見えるものだけを歌って目先の共感を得るような形態に堕落してほしくないですね。そして俺の部屋の狭さや汚さのほうがヒドいと思う。......とにかく、moreruは本来そういうバンドじゃないけど、この曲をやらざるを得ないような状況だった。

-やらざるを得ないような状況?

夢咲:そう。みんながこんな体たらくだから、俺がやらなきゃいけないみたいな。ポストマリーズ(毛皮のマリーズ)的なバンドも出てきているとは思うんですけど、そいつらはちゃんと分かってるのか? 俺は分かってる。だから俺が正しいことをやる。そんな義務感に駆られた曲でした。こんなのを仮想敵にしてるのも小さいやつと思われるのでしょうが......。

-曲名はアントナン・アルトーの著書"神の裁きと訣別するため"からの引用ですよね。

夢咲:アルトーは、言語や自分の理解、見えてる世界の外に挑戦してる。身体の外側に向かう演劇性が、そのままロックンロールの寓意のようだと直感的に感じたので、タイトルに借りさせていただきました。

-3月11日からは、テキサス州のニューメタル/メタルコア・バンド OMERTAとのツアーが行われますね。彼等との出会いや開催のきっかけを教えてください。

Dex:OMERTAの存在自体は前から知っていたんですけれど、去年の5月にリリースされて、日本のネットでもバズった「Charade Feat. Vincente Void, Hash Gordon」っていう曲が、めっちゃ良くて。それから、XでOMERTAがmoreruをメンションしたことがきっかけでやりとりし始めました。MVも楽曲も、かなりmoreruと通じるものがあるなと思ったし、海外アーティストの招聘にも興味があったので、最初は半分ノリだったんですけど、一緒に日本でツアーをすることになりました。

-親和性を感じたとのことですが、音楽性自体は直接的に似通っているわけではないですよね。

夢咲:だけど、ヤバい曲を作ろうっていう姿勢があるじゃないですか。ニューメタルとかメタルコアって快楽原則があって、そこに則ってれば既存のリスナーを安心させられる曲を作れると思うんですけど、あえてそこを乗り越えようっていうマインドを感じて。それは単純に素晴らしいし、俺もそういう気持ちでやってるから、同じ世界に生きてるなって思えた。

-OMERTAは自ら"アメリカで最も嫌われているボーイズ・バンド(America's most hated boy band)"を標榜していますが、そういう態度はmoreruと似ているのかもしれません。

Dex:そうかもしれないですね。俺たちも嫌われてるし。

夢咲:既存のシーンのファンに嫌われて新しいリスナーが付くっていうのは、新しいことをやってることの証明でしかないですから。そういう精神性が合って、"やっと同じ感覚でやってる人を見つけた"っていう。

-そして、ツアーの各公演のラインナップがかなり面白いなと。

Dex:はい(笑)。

夢咲:面白いですよね。はなまるうどんで会議に会議を重ねました。いろんなことを考えましたね。お客さんが喜ぶのと、OMERTAが喜ぶのと、俺がやりたいの。

Dex:あとは、ツアー全体として見たときの美しさとか、いろんなものを加味して考えて。いいラインナップなんじゃないでしょうか?

夢咲:妥協してるところは一切ないですね。声を掛けたアーティストにはほぼ出てもらってるので、当初の理想通りに組めてる。ただOMERTAを呼んだだけだと、メタルコアやメタルのリスナーであるおじさんたちがいっぱい来ると思うんですけど、それじゃ何も起こってないのと一緒だから。誤ったところに届けてしまう=誤配が大事。

Dex:うん、誤配ね。

夢咲:だから、誤配が起こるように仕組みました。実際にどうなるかは分からないけど、ツアーはただのお祭りで終わらせちゃダメなんで。

Dex:ここが終わりじゃなくて、ここから何かを始めていかないといけない。

-特にファイナルの東京公演は、国内エクストリーム・シーンのターニング・ポイントになる予感すらしています。moreru自身、そういう使命感で臨んでいると。

夢咲:そうですね。OMERTAを呼ぶなら、ただOMERTAを好きな人やmoreruを好きな人が喜ぶものではなく、事件を起こしていかないと。

-moreruが主催している"evilspa"、"霊障"とはまた違うヴィジョンを描いているのでしょうか?

夢咲:まぁ"霊障"も近いところはあって、誤配を大事にしてますね。目的地じゃないところに辿り着いてしまうのが重要。俺だって、そもそもハードコアに辿り着くような人間ではなかったのに、何かを間違えたから今があるわけで。そういうことが起きないと新しいものは生まれない。俺は新しいものが生まれるのを見るのが好きなので。今回のツアーもとにかくいろんな人がたくさん来てほしい。

-moreruにとっては、Earthists.のようなメタルコア、あるいはKRUELTYのようなデス・メタル色の強いバンドとのマッチアップは新鮮なのではないでしょうか?

夢咲:自分はいち観客としてKRUELTYのライヴに行ってたんですが、普通に考えたら交わる機会ないよなーとか思ってました。ただこういうタイミングで誘うことに誤配の重要な可能性があるのではないかと思いました。比較的馴染みがない人にKRUELTYやナーバス(nervous light of sunday)をかましたいという欲望もあります。

Dex:今回、連絡したことない人にもめっちゃ声掛けたしね。

夢咲:自分等の身内でやっていくっていう美学もあるだろうけど、完全にそうじゃないことをやりたいので。

-激ロック読者やメタルコア・リスナーにとっては刺激的な一日になると思います。どのように楽しんでほしいですか?

夢咲:特にこうしろっていうのはないです。逆に、何を思ってくれるのか楽しみですね。怖いし、不安だけど、こういう機会もなかなかないので。逃げちゃダメだ......。

-OMERTAは、会場でベイブレードをやろうとポストしてましたね。本当にやるんですか?

Dex:分かんないです(笑)。渋谷に泊まるんで、まんだらけとかに連れて行ってあげようかなとは思いますけど。

-それでは最後に、ツアーに向けての意気込みをお願いします。

夢咲:チケット代めちゃくちゃ安くないですか? これはひとえに世界のための愛です。とにかく来てみてください。来なさい。

Dex:チケット代も頑張って安くしたし、こんなツアーは他にないと思うので、ぜひ来てください。

-ありがとうございました! ところで余談なのですが、『呪詛告白初恋そして世界』収録曲「ROCK'N'ROLL PHOENIX」に客演参加していたBIRDS FEAR DEATHが個人的に大好きで。

Dex:いいですよね。

夢咲:最高ですね。ああいう人が日本からる土壌を作るための実践でもあります。

RELEASE INFORMATION

moreru
NEW EP
『闇の軽音楽で包丁を弾く』

CD/配信:NOW ON SALE!!
LP:2025.4.2 ON SALE!!
【CD】MMCD24002/¥2,000(税込)
【LP】MMCD25001/¥3,850(税込)
[MUSICMINE]

TOUR INFORMATION
"Omerta × moreru Japan Tour 2025"

3月11日(火)shibuya CYCLONE
3月12日(水)心斎橋 CONPASS
3月14日(金)名古屋 HUCK FINN
3月15日(土)渋谷WWW X
出演:OMERTA / moreru
前売 ¥4,000 / U20 ¥3,000(D代別)
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