前菜からデザートまでのフルコースのような作品なので、美味しく味わってください

－たしかに、新加入のMINAさんの存在感が存分に押し出されている曲だなと。どのような思いでレコーディングに臨みましたか？

MINA：正直に言うと、やっぱり最初は加入を受け入れていただけるか不安な気持ちもあったんですよ。だからこそ、1発目の楽曲では出るところで出ていきたいなと。パンチがあって、ベーシスト MINAとして求められているものをアンサンブルに溶け込ませたいと思いました。MEGさんにもご相談して熱いやりとりをしつつ、前に出すぎない、いい塩梅を探しながらレコーディングしましたね。

－派手なスラップはもちろん、Bメロのウォーキング・ベース的なフレーズもカッコいいです。

MINA：嬉しいです！ タッピングもやったり、いろんなバリエーションを持たせてみました。

－メンバーが怪盗団に扮したMVもユニークですね。ストーリー仕立ての映像は初の試みですが、撮影はいかがでしたか？

Ayasa：みんなで揃って撮ったのはラストのサビだけでした。あとはそれぞれ個人行動（笑）。今までは演奏シーンを推したものが多かったので、今回は趣向を変えてみました。お客さんはライヴ衣装の私たちばかり観ているだろうから、MINAちゃんはもちろん、他のメンバーの新しい一面も見せたくて。特にMIZUKIさんのトレーニング・ウェア姿はレアだったんじゃないかな。

MIZUKI：私は普段からパーソナル・ジムに通っているんですけど、それを監督さんが知ってくださってたみたいで。20キロのバーベルを用意していただいて、"これでスクワットしてください！ 重いですか？"、"いつもやってるんで大丈夫です！"とか言って。でも、ちゃんと翌日に筋肉痛になりました（笑）。

－撮影と筋トレが同時にできたんですね（笑）。

MIZUKI：お得な一日でした（笑）。

－そして、第2弾シングルとなったのが3曲目の「Darkside Lotus」。この曲は強烈ですね。テクニカルでプログレッシヴなメタルコア・ナンバーで、音ゲーのボス曲のような。

Ayasa：いきなり難しくなって。

MIZUKI：テンポが変わったりね。

－和風な旋律にマッチした湊さんの艶やかな歌唱が印象的です。

湊：デモの段階だとボカロっぽさのある曲だったんですけど、それだとちょっと味が出ないと思ってたんです。そこでふと、演歌のような要素を入れてみたら面白くなるんじゃないかと思い付いて。おふざけ半分でやってみたら見事にハマりました。

－ディレクションがあったわけではなく、自らそのアイディアに至ったんですね。楽器隊の皆さんにとっても、チャレンジングな1曲になったのではないでしょうか？ MIZUKIさんのドラムは、複雑なリズム・ワークやブラストビートが盛り込まれていますし。

MIZUKI：はい、ビックリしました（笑）。Djentっぽいフレーズって、本当に染み込ませるのが大変なんですよ。だから今もずっと練習してます。でも、レコーディングでは間奏のめっちゃ踏むパートが一発で録れたんですよ。1回目のテイクが一番良くて。本当に安心しました（笑）。

Yuki：（作詞／作曲／編曲を務めた）漠さんからはヴォイシングについてアドバイスを貰って。最初はコードの構成音のうち上のほうの音だけを弾いてたんですけど、"ここはルートを拾ったほうがいいですね"とか、細かいところまで突っ込んでいただきました。

－そしてアルバムのクライマックスとなるのが、先程も話題に上った「IKIZAMA」です。

Ayasa：この曲は、マジで"男か？"と思うよね（笑）。

MIZUKI：今回のアルバムは、音圧とか音像とか、やってること全てが男のバンドのアルバムかと思うくらいゴリゴリで。

Ayasa：特に「IKIZAMA」は、それぞれの音をガッツリ太く出さないとカッコ良く聴こえないんですよ。私のヴァイオリンも、きれいにサラサラと弾いていたら全然ダメで。それこそ、ヴォーカルも全然高くないんですよね。

湊：そう。だから最初は"あれ？ これ男声のキーじゃない？"と思いました。でも、今までの甲高い感じとは違って低音で勝負できるいい曲だなって。

Yuki：今までは高い曲が多かったけれど、あかねさんが歌う「IKIZAMA」を聴いたときに"このキーの歌声もいいじゃん"ってしっくり来ました。

Ayasa：話すときも、高いテンションでまくし立てるより、低い声で喋ったほうが伝わるときってあるじゃないですか。それと同じで、「IKIZAMA」の歌詞とキーの低さが相まって曲に説得力が生まれたと思います。キーを上げようかっていう話もあったんですけれど。

湊：そうそう。それで何パターンか送っていただいたんですけど、"ちょっと待てよ？"って。キーを上げるだけで、全然違う雰囲気になっちゃう。

Yuki：それと、キーを上げるとギターがすごく弾きにくくなる。ドロップDチューニングだとちょっと不可能な押さえ方になっちゃうので、"すいません、このキーでお願いします"って言って（笑）。

－結果的には、言葉に合った歌い回しになったんですね。湊さんのヴォーカルに関して言うと、個人的にはアルバム中盤の「I don't say goodbye」、「Don't Look Back」という流れがすごく好きで。バラードやミドル・テンポで、繊細な歌を味わえるのが新鮮でした。

湊：私も「Don't Look Back」が好きなんですよね。このぐらいのキーがちょうどいい。その他の曲でも、作家さんにディレクションいただいたり、ワーナーのスタッフさんと共に楽曲をセレクトしたりという初めての経験ができたので、前作よりも成長しながら、納得できる作品に仕上がったなと思います。

－通常盤限定で収録されているインスト曲「YELLOW CARD」は、これまでにもライヴで演奏されてきた楽曲ですね。

MIZUKI：私がMaoさんと一緒に制作していて、メロは私が全部作りました。ラストのドコドコって踏み倒すところとか、ドラムでやりたかったことを詰め込んでます。あとはギター・ソロとヴァイオリン・ソロで戦ってほしかったので、短めのソロを交互にやってもらってます。

－メンバーが作曲したヴォーカル入りの楽曲も聴いてみたいです。

Ayasa：それこそ今、MIZUKIさんが。

MIZUKI：そうなんです。今回のアルバムで、あかねっちの歌がすごく幅広くなったことにビックリしたんですよ。"全曲、全然声が違うけど"みたいな。それを聴いて曲を書きたくなったから、今トライしています。みんながいいよって言ってくれたら、次の作品に......。

－改めて、今作の聴きどころを一言ずつお願いいたします。

MINA：いろんな側面が見える、前菜からデザートまでのフルコースのようなアルバムなので、美味しく味わってください。

Ayasa：音源として楽しんでいただくのはもちろん、ライヴ映えする曲がいっぱい入っていて、今年はフェスにもたくさん出られたらいいなと思っているので、聴きながらライヴを楽しみにしていてください。

MIZUKI：MINAちゃんが加わってサウンドが変わったので、埋もれがちなリズム隊にも注目して聴いてもらえたら嬉しいです。それと、ライヴで盛り上がれる曲がいっぱい入ってるので、どうノるかをイメージしながら予習していただいて、お客さんからも提案いただけたらとても楽しいライヴになると思います。

湊：全曲を通して聴いたら1曲は絶対にハマる曲があるはずなので、それを見つけてください。

Yuki：細部までこだわってレコーディングしたので、メンバー全員のいいところがいっぱい詰まってます。"今回はMIZUKIさんのドラムに集中して聴いてみよう"、"今回はAyasaさんのヴァイオリンを聴いてみよう"とか、何回もループしてほしいですね。

－そして、本作を引っ提げたツアー"East Of Eden Spring Tour 2025 ～ Seeds Of Hope ～"も控えています。ツアー・ファイナルは初の海外公演となる上海での開催ですね。

Ayasa：どういう反応が来るか、本当に未知数ですね。もちろん海外でのライヴをやりたいと思っていましたけれど、EOEとして中国に向けて具体的な展開をしてきたわけではないので、どうやって楽しんでくれるのか、どの曲が一番刺さるのか。もしかしたら一緒に歌ってくれる人もいるかもしれないし、言語の壁を越えて楽しませたいですね。上海だけじゃなくていろいろな国に行けるように、次に繋がるようなライヴにできればと思います。

湊：とにかく楽しみだよね。

Yuki：私たち自身が楽しめるところまで持っていきたいですね。