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INTERVIEW

清春

2024.03.19UPDATE

2024年03月号掲載

清春

Interviewer:杉江 由紀

-SADSの「忘却の空」(2000年リリースの4thシングル表題曲)がドラマ"池袋ウエストゲートパーク"のテーマ曲として起用されたのは2000年のことですから、約四半世紀前のことなのですよね。その記憶が未だに鮮烈にみなさんの中で生きているというのは、すごいことだと思いますよ。

たまにイベントとかフェスに出て「忘却の空」をやると、やっぱり盛り上がるんですよね(笑)。嬉しいし、喜んでくれてるのもわりとその世代の男が多いっていうね。それは本当にありがたい。ただ、僕としては今やってることをいろんな人に知ってもらいたいという気持ちはまだ全然ある。

-それはアーティストとして当然の欲求であるはずです。

わかりやすいところで言うと、David Bowieみたいなアーティストって他になかなかいないじゃないですか。特に日本では。アルバムごとにカラーも違うし、死ぬまで新しいものを作り続けるようなね。

-ラスト・アルバムとなった『★』は素晴らしいクオリティでした。

そう、カッコ良かった。とはいえ、Bowieも亡くなったあとにいろいろ語られたり、映画として描かれるときは"Ziggy Stardust"の頃が多くなりがちっていうのはある気はするし。難しいところではあるけど、僕も音楽を作り続けていく以上は想い出産業みたいなことだけじゃなく、それが大切っていうのもわかったうえで、ずっと新しいものをクリエイトしていきたいです。

-その点、今作『ETERNAL』には先鋭的な生々しさと斬新さが溢れていますよね。鮮烈さも感じられる音像が、ここでは見事に具現化されているのではないでしょうか。

ここ何年かやってきたことを踏まえて、より明確に自分のやりたいことを形にできたなという手応えはあります。今ってタイムラインで情報がどんどん流れていってしまう時代だから、プロモーションをしたとしても実際にリンクまで飛んでMVを観てもらったり、曲を聴いてもらったりというところまでは意外と辿り着きにくいですけど、一度まずはこの音に触れてみてほしいです。

-ちなみに、今作『ETERNAL』においては先行シングル曲でもあった「SAINT」と表題曲「ETERNAL」 がリード・チューンとなっているそうですが、「ETERNAL」に白羽の矢を立てた理由とはどのようなものだったのでしょう。

作ってる側としては全曲に対して自信持ってますから、そこはレーベルであるヤマハ(ミュージックコミュニケーションズ)さん側の意向もありです。僕はどれがリード・チューンでも良かった。でも、MVになってる曲はそれぞれ映像も含めて気に入ってますよ。あと、さっき話に出た「SWORD」もほんとにいいし、「sis」っていうのもいい曲を作れたなって思ってて。それぞれにどの曲も好きなんですよ。

-「sis」はエヴァーグリーンな普遍性を持った美しい楽曲ですね。

はい、これはめちゃくちゃスウィートな曲にしたかった。

-その前の「狂おしい時を越えて」が退廃的な空気感の濃い曲だけに、そこからのスウィートな世界が描かれる「sis」はより映えているというのもありそうです。

曲順とかはあんまり気にして作ってないですけどね。アルバムの最初に「Carnival of spirits」と「SAINT」を入れたいっていうことは決めてて、なんとなく「sis」で本編が終わりっていうイメージがあって。そのあとに来る「鼓動」は、ゲーム("KENKA METAVERSE")とのタイアップ曲として作ったんだけど、まぁいい曲だから入れたいとなって、ある意味ボーナス・トラックとして収録しました。この曲だけcoldrainのKatsumaがドラムを叩いてる。最後は「ETERNAL (reprise)」を入れてループ感というか、エンドレスに聴ける感じになればいいかなと。

-そればかりか、今作では「砂ノ河」という曲の前に「Interlude by DURAN」が挟みこまれる場面もありますし、そこからさらなる形で「Interlude by タブゾンビ (SOIL&"PIMP"SESSIONS) & 栗原健」、そして「DESERT」へと続く展開もアルバムならではの醍醐味を感じられる構成になっていますよね。

映像が見えてくるような音をそのあたりでは感じることができると思います。特に、ギターのDURANの果たしてくれている役割は大きいですね。最高のギタリストですよ。彼は天才っぽくもあるしめちゃくちゃ努力したやつでもある。レコーディングではいつもお任せで弾いてもらってる。DURANはいつもだいたいワンテイクで終わりますね。

-一方で、[タブゾンビ (SOIL&"PIMP"SESSIONS) & 栗原健]のチームについては、そもそもどのような馴れ初めで今回の制作に加わっていただくことになったのでしょう。

僕、彼らのライヴを観に行ったんですよ。それがもうとにかく素晴らしかったので"プレイしてほしい"って頼みました。素晴らしいです、ほんと。

-そのほかにも、今作には英語詞がメインとなっている「RUTH」や、清春さんのエモーショナルなヴォーカリゼーションが存分に聴ける「霧」、緩急あるメロディと粋なリズムが絡み合う「ロープ」、芳醇な音の重なり合いがドラマを生み出す「FRAGILE」と、今作には粒ぞろいの楽曲たちが収録されておりますが、こと歌詞の面で清春さんがこのアルバムを仕上げていく際に重視されていたことはありましたでしょうか。

歌詞には結構自信あるんですけど、自分の歌を楽器のひとつとして考えてるところもあるので、実はあんまり"歌詞を聴かせる"っていうことにはこだわってない。よく"何を歌ってるのかわからない!"って言われてますけど(笑)、僕はそれでいいんですよ。むしろ、そのほうがいいくらい。まずは聴いたときの響きが重要で、意味は歌詞を読めばわかるでしょ? っていうスタンスです。今回のアルバムは今の僕が思う死生観が基本になっています。

-死生観を描いた『ETERNAL』というのは、実に興味深いところですね。

 

何年か前までは、僕も必ず終わりが来るとか別れが来るとか、そういうことをよく書いてた。でも、今回はタイトルが"永遠"。終わりは来ない、なぜならば......っていうところを歌ってます。

-表題曲「ETERNAL」で歌われている"過去よりか未来よりか せめてもの今日、感じてるよ"というくだりが、個人的にはとても印象的だと感じます。

今が一番大事ですよね。もし消えてなくなったとしても......っていうのを生きてるうちに歌っておきたいのかな。ちょうど今年デビュー30周年だし、人生もそろそろ50代後半に向かっていくタイミング。一般的な寿命はまだまだとしても、ロック・ミュージシャンとしてのキャリアはベテランの域になってるのは認めないといけないので(笑)。

-その30周年というところでいきますと、今春から清春さんは2025年の2月まで断続的に続いてゆく"清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA"を開始されることになります。ソロでのライヴに加え、途中にはSADSとしてのツアーもあり、ファイナルは2025年2月9日の黒夢として行う東京ガーデンシアター公演になるそうですが、このスケジュールはずいぶんとハードそうですね。

いやもう、こんなの全然完走できる気がしない(笑)。でも、目の前の1本ずつはベストを尽くしますよ。その積み重ねで気がついたら終わってた、というのが理想ですね。

-なんでも、近いところでは3月にBorisとオーストラリアにも遠征されるのだとか。

それはBorisに"海外へ連れてってもらう"ツアーですよ。僕、今まで海外ツアーに行ったことはないですし、なんならプロモーションとしての海外公演に対しては否定派だったんですけど、Borisはあまりにもリアルワールドワイドですからね。日本では知る人ぞ知るバンドだけど、アメリカだったらどこでも満員で、オーストラリアでも人気あって、それも"日本のバンドだから"ジャパン・カルチャー的な枠で活動されてるわけじゃないんですね。僕も最初は彼らのこと知らなくて、MORRIEさんのトリビュート・アルバム(2013年リリースの『DEAD END Tribute - SONG OF LUNATICS』)に参加するときに教えてもらったんですよ。"海外では有名やねん"って。それで、実際に会ってみたら彼らの感覚に驚きましたね。

-それはどういう意味でです?

日本人だし日本に住んでるんですけど、日本のマーケットに対してまったく興味がない。そんな人たちが僕のライヴに来てくれて"清春さん、一緒にオーストラリア行きませんか?"って言ってくれて。4月に帰ってきてからは横浜と大阪でもBorisとやるんで、みんな観たほうがいいです。僕も初めての海外ツアーというものを経験してくるので、ちょっとビビりつつ楽しみにしてます。この歳で新たな体験ができるなんてね(笑)。

-いずれにしてもこの1年間は、清春さんにとってこれまで以上に濃密なものとなっていきそうですね。

30周年なんで、今までやってきたことを断片的に見せていったり、みんなと想い出を共有したりっていうサービスもアリだとは思うんでそれもやりますけど、すべては僕の目の前にいるファンのおかげ。それがなかったらSADSも黒夢も再生することなんてないわけです。あくまで30年活動できたから再生するんです。バンドだけ復活することはありません。今年は『ETERNAL』の曲をツアーでやってまた発見できることもたくさんあるだろうし、ひとつずつ生かしながら、30周年の集大成になるようなツアーをやっていきたいと思います。