INTERVIEW
POPPY
2023.10.27UPDATE
2023年11月号掲載
Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子
ニュー・アルバム『Zig』は、本格的なダンス経験のバックグラウンドと、ダークな美しさを持った音楽性が交わった、挑戦的アート作品
-実はあなたの映像表現についても質問するつもりでした。「Church Outfit」や「Knockoff」のミュージック・ビデオでも披露されている、コンテンポラリー・ダンスのような身体表現には非常に驚かされます。先ほど"ダンスのバックグラウンド"という話が出ましたが、ダンスを専門的に学んでいた経験もあるのですか?
そう、11年間踊っていたの。ポップ、ジャズ、バレエ、ヒップホップ、リリカル・ダンス(※ジャズ・ダンスとバレエの間に位置するような舞踊スタイル)、それからもっと器械体操に近い、アクロバティックなダンスもやっていたわ。それをやめて歌い始めたのだけど、ここへ来てそれらの世界が融合しつつあるのよ。
-ギターなども若い頃に始められたようですが、ダンスと同時進行の時期もあったのでしょうか。
そうね、少しだけ時期が重なっていると思う。ギターやベースは独学で、そのあとシンセサイザーを少しいじっていた時期もあったわ。ギターを始めたのは11~12歳くらいだったかな。
-いろいろな経験を融合させているのですね。それもあるのか、サウンドと調和するようなヴォーカルも特徴的ですが、ヴォーカル面で気をつけている点などはありますか?
レコーディングで歌っているときは、歌詞をどう表現するかに気をつけているわ。ライヴの場合は......そうねえ......なんでもアリだわ(笑)。歌いながらその曲の世界に没入してしまうこともあるし、その曲のメッセージや起源について思いを馳せて、書かれた当時のことや内容を思い出したりして。そうじゃないときは"ショーが終わったら何食べようかな"なんて思いながら歌ってるわ(笑)。でも歌いながら感極まってしまって、泣きながら歌うこともあるのよ。それほど感情移入するときもあるしそうじゃないときもあるけど、その瞬間その瞬間に全力を尽くしているわ。
-どこかのフェスで歌っているときのライヴ映像を観ましたが、フェスということで全員があなたのファンではないところに、ハートを掴むのがうまいなと思いました。そしてその瞬間に没入していましたね。
ありがとう! フェスでプレイするのが大好きなの。他のバンドも観れるし、友達にも会えるし、友達のバンドもやっていたりするし、すごく楽しい。もう数週間でメキシコでフェス("Hell And Heaven 2023")に出るんだけど、今から楽しみにしているわ。たしか今年最後のライヴになるのよね。日本にも来年には行きたいって強く思っているの。そうなったらすごく楽しいだろうな~。
-アルバムに話を戻しますが、今作で特にこだわったポイントや、お気に入りの楽曲を教えてください。
『Zig』の中では「Flicker」の歌詞が特に気に入っているの。まだ出ていないからあまり話せないけど......次のシングルは「Hard」になる予定よ。日にちはわからないけどわりとすぐじゃなかったかな(10月20日リリース)。そっちはアルバムのために書いた最後の曲なの。出るのが楽しみ。
-さらに「Motorbike」のミュージック・ビデオでは、黒のライダー・スーツをクールに着こなして、颯爽とバイクにまたがる姿を披露していますが、景色のいいロケーションでバイクを走らせる映像などにも解放感や爽快感があって、そのあたりにもこだわりを感じました。普段からバイクに乗る習慣やこだわりがあるのでしょうか?
そうなの、バイクには確かに乗っているわ。乗り始めて数年になるかな。あれを乗りこなすにはその瞬間に没頭しないといけなくて、メディテーションみたいな感じになるのが好きなの。目の前にあるタスクにフォーカスしないといけないっていうのがいいなと思って。
-そのメディテーション的な要素というのは曲の内容にも関係してくるものでしょうか。
うーん......内容とはあまり関係ないかな。曲のほうは私がバイクに乗っている女の子に恋をすることによってエンパワーされて、楽しく生きる、みたいな感じなの。あまり深刻に考えすぎないように、みたいな曲がアルバムにあってもいいなと思って。投入するのに合っていて楽しい曲だと思うわ。笑顔になれるしね。
-Instagramでは、アーティスティックな衣装やメイクの写真が公開されていますね。こういった衣装、ヘアメイクなどのヴィジュアル表現も、ご自身ですべてプロデュースしているのですか?
写真では全部のメイクを自分でやるわけじゃないけど......信頼している友達がやってくれるからね。でも、インスタの投稿や内容のキュレーションは自分でやっているわ。あれも自分の一部ということで、いい自己表現になっていると思う。
-インスタの内容はMVなどとリンクしているのですか。
ええ。映像は心から楽しんでいるわ。......MVを自分でプロデュースすることもあるのよ。他人のをプロデュースしたこともあるわ。今はショート・フィルムのプロジェクトに取り組んでいて、もうすぐできあがるところ。
-本当に勤勉ですね。今回のアルバムの前にもEP(2022年リリースの『Stagger』)を出していますし、ツアーもしましたし。
ショーをやるのも曲を作るのも大好きだし、楽しいことだからね。興味があるものに引っ張られてやっている感じ。興味を持ったら自分でもやってみたくなるの。
-あなたのクリエイティヴなファッションやメイクに憧れている女の子たち、男の子たちもいると思いますが、彼らにアドバイスするとしたら?
うーん......毎日自分が愛することをすること。それから、大好きなことをやっているときの自分の魂の赴くままに進むこと、かな。
-あなた自身もそういうアドバイスを受けて育ったのでしょうか。
そうね、それに近いことを言われたことはあるわ。音楽やアートをやりたいなら、自分の好きなアーティストがやってきたことを研究しなさい、みたいな感じ。その人たちの歩んできた道から学べることがあるはずだから。私がアーティスト的に傾倒してきた人たちはみんな何かしら逆境を味わったことがあるけど、それって私にとってはなじみ深いことで(苦笑)。特にすごく幼い頃は学校でいろいろあったし。でもアーティストたちの歩いてきた道を知って、彼らを身近に感じることができたの。何か前人未踏だったりユニークだったりするものにチャレンジするときは、ダウナーな人たち(※気を滅入らせたり出鼻をくじいたりする人々のこと)にたくさん遭遇するものだけど、そういう人たちのことは走って通り過ぎないといけないのよね。
-あなたは精力的にライヴ活動をしていますよね。そういうときに特に若い子たちが"あなたの存在に救われた"とか"あなたのおかげで自分も何か始めようと思った"とか言ってきたりしますか?
ええ。私のショーではVIPのミート&グリートをやっているからね。最近は携帯を禁止にして、私がアコースティックで歌うのを観てもらったり、Q&Aの場を設けたりしているの。ショーの前にね。みんなすごくリスペクトの気持ちを持ってくれていて、すごくいい質問をしてくれるのよ。質問しながら私に対して心を開いてくれて、感極まる人もいたわ。すごく貴重な出来事だし、そうやって弱い自分を出せる人たちのことも尊敬してる。そういうことをしていると、すべてのアートはセラピーになるんだなってつくづく思うわ。その人たちに影響を与えるものを私が作っているなら、私のやっていることにも価値があるんだなって思えるの。
-すごく自然な感じで、なおかつ親密なミート&グリートなんですね。
そうね。初めての試みだったけど、すごく楽しかった。将来的にはもっとやってみたいわ。
-最後に、日本のファンヘメッセージをお願いします。
この記事を読んでくれてありがとう! POPPYです。近いうちにショーで会えますように。それから......『Zig』を楽しんでもらえますように!
-ありがとうございます。ちなみに日本の雑誌でのインタビューは激ロックが初めてですか?
久しぶりではあるわね。前回は数年前で、レスリング(プロレス)がテーマだったの。
-レスリング!?
そうなの。私、レスリングが大好きで。私とイオ・シライ(紫雷イオ)でWWEに一緒に出たのよ。彼女は日本人なんだけどね。
-お友達なんですか?
彼女は日本人レスラーで......アメリカのWWEで活躍しているの。私の曲が彼女の入場曲になっていた時期があった関係で、WWEに彼女と一緒に出ることになってね。日本のレスリング雑誌の取材をイオ・シライと一緒に受けたのよ。
-それは興味深いですね。音楽雑誌は激ロックが最初だったのでしょうか。
そう! 間違いないわ。
-この記事で日本の音楽ファンの間にあなたの名前が広がることを確信しています。そして、もうすぐ日本に来られますように。
そうなったら最高! 私にインタビューしてくれて本当にありがとう! (※日本語で)アリガトウ!!