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INTERVIEW

CHAOS CONTROL

2023.08.24UPDATE

CHAOS CONTROL

Member:Hiroyuki Kaneko(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

-そんな良縁ありきで生まれた今作ですが、その中で表題曲となるのが「The Legacy Within」です。こちらはもしや、曲作り期間の初期からタイトル・トラックとして準備されていたものだったりするのでしょうか。

むしろ、これは一番最後にできた曲でしたね。2月のライヴをmihoさんが観に来てくださっていたんですけど、そのときにお互いの好きなバンドや音楽についていろいろ話す機会があったんですね。その中で、"やっぱりスラッシュメタルっていいよね!"っていう話をきっかけに作ったのがこの曲だったんです。で、他のメンバーたちにも聴かせたところ"これ、アルバムの1曲目にしたらいいんじゃないですか"っていう意見が出たんですよ。

-歴史を振り返ると、スラッシュ・メタルは1980年代にMETALLICA、ANTHRAX、SLAYERなどが登場して以降とても大きなムーヴメントを起こすことになったわけですが、そこからは時間をかけて進化してきた面もあるように思います。2023年になった今現在、CHAOS CONTROLとして打ち出すスラッシュ・メタルにHiroyukiさんが盛り込みたかったファクターとはどのようなものでしたか。

近年のスラッシュ・メタルはより攻撃的なものになってきている印象がありますけど、当時のスラッシュ・メタルって今の音よりも独特な生々しさを持っていた気がするんですよ。機械的な感じもあまりなかったし、無理やり人力で速い曲をやるみたいな。「The Legacy Within」は、あえてそっちに寄せたテイストにしましたね。でも、それにプラスして2000年以降のデスラッシュの要素とかも混ぜ込んでます。

-リズム・トラックが固まったあとには、Hiroyukiさんがギターを弾いていかれることになったのだと思いますが、今回のアルバムにおいてギターの音色の面で特に重視されていたのはどのようなことでしたか。

ローを削らない、っていうことを最も大事にしました。まずは楽器を弾く時点で少し角を立てた音にしたりもしつつ、ローは極力削らずに全体のバランスを取りながらいらない部分だけちょっと削る、といった音作りをしています。今回の『The Legacy Within』は前作『Call Of The Abyss』と同様、STUDIO GALAXY BLASTでミックスとマスタリングをしていただきました。

-昨今のメタルに関しては、音圧もあってドライで分離もいい反面、ややのっぺりした音に聴こえることもあるせいか、この『The Legacy Within』からは奥行き感や厚みを感じることができてどこか新鮮でした。

実際に弾くタイム感だけで音を入れているから、不自然な音の切り方をしてないぶんそういうのっぺりした感じがないのかもしれません。

-古臭さはありませんけれど、この『The Legacy Within』の中にはいい意味でのノスタルジーは漂っていますよね。往年のメタル・サウンドがブラッシュアップされて今に甦った、というような雰囲気を感じます。

良かった! その感想はまさに狙い通りで嬉しいです(笑)。僕が音楽を作るときには生の良さとか、下手でもいいから思いっきり弾くとか、そういう人間が生み出す音だからこその良さっていうのは大切にしたいなぁと思っているんです。

-下手でもいいから、とはまた意外なお言葉ですね。Hiroyukiさんのギター・プレイは、相当にテクニカルでいらっしゃるように思います。

たしかに、僕も10代の頃とかはすごくテクニック志向が強かったです。でも、何せいったんバンド活動を休止してからは24歳でサラリーマンになって17年間ギターを一切弾いてなかったですからね。触ったらまたやりたくなっちゃうと思ってたんで、機材もほぼ断捨離して、メインのギターだけは持ってましたけど、それもずっと押し入れにしまったまま出したことなかったんですよ。

-それだけブランクがあったなかで、よくここまで復活されましたね。驚きです。

自分にできることを粛々とやってる感じですね。自分のプレイが上手いみたいな意識はないですけど、自分は曲を書くことはできるので、今はなんとかその曲を弾けるくらいにはしっかり弾きたいな、という気持ちでやってるんです。

-自分も久しくギターを弾いていない、という方が読者の中にいたとして。勘を取り戻すのに何か良い方法がありましたら、Hiroyukiさんからご伝授いただけますでしょうか。

僕は2021年に復帰したとき、まず"ギターの持ち方ってどんなだったっけ?"っていうところからのスタートだったんですよ。だって、ギターを弾いてた時間よりも離れてた時間のほうがその時点で長くなってましたからね。そう思ったときに、前と同じことをやろうとしないほうがいいんじゃないかなって自分の場合は思いました。それよりも、今やりたいことをまずやってみるっていう意識で始めましたね。最初はとにかく音を出してみる、っていうところからでも全然いいし。またイチから始めるっていう感覚でいいと思いますよ。実際、僕も人から"ギター暦は何年ですか?"って聞かれると"2年目(17年ぶり)です"って答えてます(笑)。

-貫録あるギター・プレイの詰まった『The Legacy Within』を聴いていると、とてもそうは思えません。

歌とドラムとベースさえ良ければ、あとのギターはなんでもいけちゃうって思ってますから。もっと極端なことを言うと、ギターは自分じゃない誰かが弾いたとしても、自分の書いた曲は成立するだろうって思ってるくらいですよ。

-予想外の発言にこれまたびっくりです。

ギタリストが何言ってるんだと言われてしまいそうですが(笑)。ギター・ヒーローって呼ばれる人たちの存在はまた全然別としても、個人的には歌とドラムがいいメタルならギターの存在はそこまで気にしないで聴けちゃいます。

-しかしながら、今作には「Second Impact」、「Inferno」という2曲のインスト曲も入っております。歌の入らないこれらについては、どのような概念をもって作られていくことになったのでしょうか。

正直言うと、前作『Call Of The Abyss』のときは歌を作る作業から解放されたいといった思いからインストを入れたという事情もあったんです(苦笑)。今回の場合だと「Second Impact」のほうはアルバムの中のインタールードというか、ちょうどヴォーカリストが切り替わる場面に入るインストという役割になってますね。

-そうした一方で「Inferno」はボーナス・トラックにあたるようですし、ギター・プレイの面では"やり倒している"感が音に滲んでいるように思います。

もともと「Inferno」は前作『Call Of The Abyss』を出したときに、ディスクユニオンの購入特典としてつけたデモ音源として作ったものだったんですよ。その曲を今回は現メンバーでレコーディングし直して、ボーナス・トラックとして収録したということなんです。僕は曲を作ってからいつもギターで歌メロをつけていくのですが、歌メロをつけるのと近い感覚で作った曲だったのではないかと思います。

-そのほかにも今作にはたくさんの楽曲が詰め込まれておりますが、表題曲以外でHiroyukiさんが激ロック読者におすすめしたい曲がありましたら教えてください。

超絶シャウトが聴けるという点で、特にヴォーカルに注目してもらいたいのは「Still Alive」ですね。ギターとして僕が一番好きなのは「Headbanger's Journey」です。で、トータルで聴いてほしいのは「Hold In My Fear」なんですよ。曲調としてはメロスピっぽいんですけど、これはその昔やろうとしていたことを今の時代に持ち込んだものなので、今のリスナーさんからどういうリアクションが返ってくるのかが一番興味深い曲だったりします。"今でもこの曲やっていいんですか?"っていう気持ちもちょっとありますよ(笑)。

-「Hold In My Fear」は往年のメタルを知っている人からするとキタコレ感を得るでしょうし、最近のメタルが好きな方にとっては新鮮さを感じる曲かもしれません。

これは前作もそうでしたけど、作る側としては全曲キラーチューンという意識で作ってますしね。今回はその目標は達成できたアルバムになったと思います。

-"The Legacy Within"というアルバム・タイトルに相応しい仕上がりですよね。

これは"内なる遺産"っていう意味のタイトルですから。自分がやりたいこと、表現したいものは現時点ですべてここに遺したっていう作品になりました。

-さて。20年ぶりだった前作『Call Of The Abyss』、そこから約1年ぶりでの今作『The Legacy Within』と来て、"次"はどうなりますかね。

また作りたいです、そう遠くないうちに。どんな体制でやるのかも、どんな方向性でやるのかもまだ何も決めてはいないですが、次は"遺産"に頼らずまた一生懸命やっていくだけですね。