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INTERVIEW

LORNA SHORE

2023.03.20UPDATE

2023年03月号掲載

LORNA SHORE

Member:Will Ramos(Vo)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

俺は悲しい曲を書くのが好きなんだ。書くというより聴くのが好きなのかな 悲しい曲はその人の感情をグッと引き出すことができると思うしね


-本作『Pain Remains』はコンセプチュアルなアルバムだそうですね。「Into The Earth」のMVでも描かれているように、内面的な世界で繰り広げられる悪夢のような物語性を感じさせますが、そのあたりについて詳しく聞かせてください。

そう、コンセプト・アルバムなんだ。どこかに逃避したい人が出てきて、夢に逃避を見いだす。夢の世界に入っていって、現実世界では見つけられない幸せを見つけたりするんだけど、やがて夢の中で道を見失ってしまって、最終的には夢の中で見つけた幸せも、自分が本当に欲しかった幸せとは違うことに気づくんだ。それで今度はその世界からの逃避を探しに行く。最後の「Pain Remains」3部作はそのクライマックスで、いろんな感情が爆発して"とにかくここから出たいんだ!"という感じになる。そして最後の最後にその人は夢から覚めるんだ。で、アルバムの最初は夢に入っていくところっていう。でも最後のところは振り出しに戻る感もあるから、エンドレスなループを描くストーリーでもあるんだよね。......という感じにしたいと歌詞を書いたときに思っていたんだ。俺は自分の意見を曲にするよりも、ストーリーを書くことのほうが得意なんだよね。ストーリーのほうがモラルとかを伝えてくれるような気がするんだ。

-なるほど、わかる気がします。たしかに、例えばlucid dream(明晰夢)ですとかdream(夢)ですとか、同じ言葉が繰り返し別の曲に出てくるところが、エンドレスなストーリーを感じさせるような。「Sun//Eater」では"イカロス"という言葉が、「Cursed To Die」では"クロノス"といったように、神話上の登場人物や神の名前が登場することで寓話的な印象も受けます。また、あなたの書く歌詞は、直情的な怒りを強調する他のヘヴィなバンドと違って、独特の悲哀や、痛切なエモーションが感じ取れますね。そのような作詞のスタイルは以前からあったものなのでしょうか。

個人的な話になるけど、俺は悲しい曲を書くのが好きなんだ。書くというより聴くのが好きなのかな。悲しい曲はその人の感情をグッと引き出すことができると思うしね。誰もがどこかの時点で悲しい思いをするわけだし。だから俺はSLEEP TOKENが大好きなんだ。彼(VESSEL)が何を歌っているかわからなくても、悲しいという感情が伝わってきて、何度も何度も繰り返し聴きたくなる。俺はそういう感じの音楽に愛着を持っているんだ。今回のアルバムを書くとき、俺個人としては悲しくてなおかつハッピーなものを書きたいと思っていた。ほろ苦いような感じの......そうそう、昔の話だけど、あるアニメを観たんだ。タイトルとかはまったくわからないけど。子供の頃は10本、20本とたくさんアニメを観て育ったからね。ある物語に、夢の世界に迷い込むのが大好きな女性が出てきたんだ。その人は夢の中ではハッピーでいられるから、それが高じて起きたくなくなってしまった。それで夢の世界にずっととどまっていたんだ。ものすごく壮大なストーリーのほんの一部分がそんな感じだった。ほんの短い一部分だったけどすごく印象に残ってね。俺はハッピーな話だと思ったんだ。ある意味彼女はハッピーだったわけだから。でも同時にものすごく悲しい話でもある。ひとりの人間として彼女の経験を見ていると、とても悲しいことだからね。そんなフィーリングを今回は捉えたいと思ったんだ。なんとか逃避しようとしているほろ苦いような感情。怒りはあまり出てこないね。最後のほうでちょっとあるくらいかな。それも具体的な矛先があるわけじゃなくて、ただただすべてのものに対して怒っているという感じなんだ。疲れ切って、すべてにうんざりしてしまってね。俺は悲しい曲が好きだから、自分でもそういうのを作ろうとしているんだ。

-その手の曲を聴いたり書いたりプレイしたりしているというのが、ある意味不思議な感じはします。というのも今こうして話しているあなたはとてもハッピーな人柄に感じられるので。もしかしたらこの手の曲に取り組むことで、内側に潜んでいる悲しみを昇華しようとしているとか、そういうことはありますか。

それはあるだろうね(※微笑む)。そういう感情を曲にできるとすごく気分がいいし、"よし、小さなセラピーが成功だ!"なんて思ったりするよ。

-以前は映画関係の仕事をされていたそうですが、映画や本などの音楽以外の作品は、あなたの書く詞に影響を与えていますか。

アニメからは間違いなくたくさんインスピレーションを得ているよ。アニメよりもマンガかな。今はあまりアニメを観ないからね。マンガは次の週まで待たなくても続きを読み進めることができるし。最近は特に、映画関係の仕事をしていたことが役立っているなと思う。撮影のときってみんな本当にクレイジーなんだ。本当にたくさんのクルーがいて、見ていると"いったいこいつらなんの話をしているんだ?"と思うことが多かったよ。例えば監督が"照明を1°左にずらしてくれ"なんて言うんだ。"光がそこにある小さなものに反射しているから、照明をずらしてほしい"なんてさ。でも自分がレコーディングするようになって、そういうディテールへのこだわりが理解できるようになったんだ。細かいところまでちゃんと目を配るように気をつけているよ。

-先ほども話に出ましたが、アルバムのハイライトとなる後半の3部作のような大胆なアイディアは、バンドにとって大きな挑戦だったと思います。例えば「Pain Remains I: Dancing Like Flames」は、あえてデスコアというジャンルの中で見れば実に叙情的で、Adamのギター・ソロもかつてないほどにメロディアスですね。このような試みは意識的なものだったのでしょうか。

100パーセントそうだね。さっきの話になるけど、すごく悲しい曲を書きたかったんだ。Adamも同じ気持ちだったから、お互いのヴァイブが合うものを作ろうとしてね。俺もあいつに"悲しい曲を書きたい"と言って、3曲に分かれたストーリーを考えたんだ。これはラヴ・ソングみたいな感じにするつもりだったよ。その愛する相手はもしかしたらもう存在しないかもしれない、という感じだね。夢の中にも現実世界にも。その人がどこにもいなくなってしまったことに腹が立って、世界中に怒りを覚える。そして自分の生きる意図を探そうとするんだ。

-MVの中でも初めはカップルがハッピーなのに悲しいことが起こって急展開しますよね。

そう、あの曲は悲劇にするべくして書いたからね。ただ、実を言うとあのMVは単なるサイド・ストーリーみたいな感じなんだ。主旨を表しているというわけではなくてね。夢の世界に入り込むとかそういうわけじゃないし。コンセプトの一部を引っ張ってきて別のストーリーに仕立てる感じかな。

-わかります。スピンオフみたいな感じでしょうかね。必ずしも曲の歌詞の内容にリンクしているわけではなさそうですし。

その通りだよ!

-「Pain Remains II: After All I've Done, I'll Disappear」は、アルバム全体の中でも特に悲痛で、MVも衝撃的な内容でした。主人公の男性が自殺を図るという......。ちなみにスピンオフとはいえ、MVのコンセプトもあなたたちの意見が反映されているのでしょうか。

俺たちはアイディアを持っていたけど、それが実現可能かどうかは監督に聞いてみないとわからない。そうすると何が可能で何が可能じゃないか教えてくれるんだ。物理的にできることとできないことがあるからね。で、何ができるかを聞いてからはそれをバンド全体で検討して、"じゃあこうすればうまくいくんじゃないか"、"あとこれもできそうだ"なんて話し合う。それをまた監督に持っていって、とアイディアを投げ合っていたよ。監督とバンド全員で考えて、いいアイディアのすべてを網羅できるようなMVを作ろうとしたんだ。

-3部作ラストの「Pain Remains III: In A Sea Of Fire」は9分を超える大作です。タイトル名も含まれる"I'll salt the earth and disappear in a sea of fire"という虚無的な一節でアルバムは終わりますが、この言葉はあなたにとってどのような意味を持つのでしょうか。

このアルバムのストーリー全体が明晰夢、夢だってわかっていながら見ている夢なんだ。アルバムのどこかの時点で、登場人物が"これは夢の中なんだ"と気づいてしまってね。全能の存在がいろんなものを叶えてくれていたのが、夢の中でしかなかったと理解して希望を失ってしまう。で、繰り返すけど自分たちが追い求めていた幸せはこれじゃなかったと気づいてしまうんだ。それで最後には"自分が死んだら自分もろともすべてを破壊してやる"みたいな感じになって、"すべてがリアルじゃないなんてもううんざりだ。全部破壊して出ていく"と考える。沈んでいく船の船長が船もろとも沈んでいくような感じにね。そういう情景を映し出そうとしたんだ。これは彼の船で、彼の世界のすべてだった。それを捨てて、一緒に死んでいくんだ。

-それでsalt the earth(不毛にすること)なんですね。

人が住めないようなところにする、という感じだね。

-前作『Immortal』も高く評価された作品ですが、『Pain Remains』はバンドとしてさらなる高みに達しています。その理由のひとつにあなたの加入があったことは間違いありません。プレッシャーも大きかったとは思いますが、ご自身が成し遂げたことを誇りに感じていらっしゃいますか。

いやぁ、本当にハッピーだよ。このバンドに入ることになるとは思ってもみなかったしね。今もここにいて、すべてがうまくいっているなんて、本当に恵まれていると思うよ(※微笑む)。

-謙虚ですね(笑)。さてこのインタビューの冒頭であなたも言っていましたが、このアルバムで日本に来られるようになるといいですね。2020年の1月に来日キャンセルとなってしまってからずっと、日本のファンはあなた方のライヴを観ることを心待ちにしています。今後の来日予定はありますか。

俺のマニフェストの中にあるんだ。狙おう! という感じだよ。もし行けそうなことがあったら絶対に飛びつくね。今年も来年もすでにいろんなスケジュールで埋まっているけど、かなり先を見越して計画しないといけないから、日本のみんなには"俺たちは絶対に行くよ。ただ時間を少しくれ"と言いたい。辛抱強く待っていてくれ、絶対に行くから。みんなのためにフルレングスのライヴをやりたいんだ。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

もちろん! コンニチハ、LORNA SHOREのWill Ramosだよ。俺たちの曲を聴いてくれてありがとう。『Pain Remains』も気に入ってくれると嬉しいね。たくさんの愛を込めて作ったんだ。日本にも絶対に行くから、ちゃんと目を開いて待っていてくれ! LORNA SHOREは君たちのところに行くよ!