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INTERVIEW

裸繪札

2022.06.09UPDATE

裸繪札

Member:マチコ(Vo) TAKUMI(Gt)

Interviewer:荒金 良介

大阪発の裸繪札がセルフ・タイトルを冠したニュー・アルバムを発表した。全身にタトゥーを施したマチコはモデルとしても活動し、14年に加入したTAKUMIはギタリスト兼トラックメイカーとして辣腕を振るう。今作はダンス・ミュージック調のサウンドに舵を切り、歌えて踊れるキャッチーな魅力を倍増させた1枚に仕上がっている。キャリア18年目に入る彼らにこれまでの歩みや中毒性の高い音楽性、そして、視覚に訴えるMVについてなど、あらゆる方面から話を訊いてみた。

-裸繪札の結成は05年まで遡る形ですよね?

マチコ:そうです。僕と神事(DJ)のふたりで始めたんですよ。

-神事さんはトラックメイカー的な役割で?

マチコ:はい。僕はラップをやってました。こんな音楽をやりたいというのは今もなくて、創作居酒屋みたいな感じです(笑)。"ありもんで、できたよ!"って感じです。怒ってます?

-いえいえ(笑)。

マチコ:そもそもヒップホップのところでラップをやっていたんですけど、トラックにTHE PRODIGYを使っていたら、当時めっちゃ怒られる時代やったんです。"そんなん、ヒップホップちゃう!"って。でもお客さんは盛り上がってるし、なんでもいいんじゃないのって。

-TAKUMIさんは14年加入という形になりますが、それ以前から交流はあったんですか?

TAKUMI:そうですね。僕は別にユニットをやっていて、マチコとは友達でしたから。裸繪札の3枚目のアルバム(2012年リリースの『孕』)のときに"1曲参加してくれへん?"という話になり、じゃあ、ライヴでもその曲をやろうと。それで"全部弾いたら?"という話になり、知らない間に入ってました。

-音楽的な価値観が似ているところもありますか?

マチコ:たっくん(TAKUMI)の胸毛が好きなんですよ。最近の子らは胸毛が生えてないじゃないですか。しかも当時はロン毛でしたからね。ギタリストを入れると言ったら、先輩に"お前らは上モノが多いから、ギターはやめとけ!"と言われたんですけど。僕はなぜかロン毛のギタリストが欲しくて。フライングV(ギブソン・フライングV)のギターを弾いてたし、それもかっこ良かったんですよ。

-裸繪札の音楽性にギターは必要なの? と思う人はいるかもしれません。

マチコ:そう思うでしょ? 僕もそう思います。そもそも音源を出す意識がなくて、ライヴをしたいだけなんです。ライヴを考えると、ギターが中音で鳴っていると、僕のテンションが上がるから。あと、ギターがいたほうがかっこ良くないですか? 音楽わかってるやつらっぽいでしょ? 彼は音も作れますからね。

-TAKUMIさんは裸繪札でトラックも手掛けているわけですよね?

TAKUMI:そうですね。ライヴではギターを弾きますけど、曲を作っている段階ではギターを入れてない曲も山ほどあります。

-おふたりが通ってきた音楽ルーツは?

マチコ:ここ(TAKUMI)とは全然違います。僕は音楽を全然知らなくて、やっと今勉強中なんです。きっかけは、中学の頃雑誌にストリート芸能人が出てたんですけど、そういう人になりたくて、バンドをやっているだけなんです。たまたま観た友達のバンドとかがルーツです。でも、"トレインスポッティング"を観て、音楽かっこいいなと思いました。その映画のサントラにUNDERWORLD、IGGY POPが入っていたんですけど、間違えてTHE PRODIGYを万引きしてしまったんです。間違えたけど、かっこいいと思ったんですよ。だから、THE PRODIGYがルーツかもしれない。

TAKUMI:僕は昔から雑多に聴いてました。強いて言えば、LUNA SEAですかね。

-TAKUMIさんが14年に加入した当時の裸繪札はどんな感じでした?

TAKUMI:僕が入った頃は3人(マチコ、神事、TAKUMI)だったんですけど......。

マチコ:5年前に神事がやめて、今のふたりになったんです。今までこういう音楽をやろうと明確に話したことはなかったけど、ふたりで話したときに踊れる感じがいいよねって。

-ダンス・ミュージックで方向性が一致したと。

マチコ:はい、ライヴでお客さんを踊らせようと。3人でやっているときは凶暴というか、むちゃくちゃやってたいんですよ。それもやり切った感じがあるから、もっとラフに楽しくやりたいなと思ったんです。実際、丸くなったと言われるけど......若い頃はナメられたくないという気持ちが強くて。活動しているうちにナメられなくなったから、楽しくやろうかなと。

TAKUMI:昔、中村達也さんに"おっちゃん、めっちゃいい靴はいてるやん!"って、ラフに声を掛けてましたからね(笑)。

マチコ:あとで"あれはあかんで!"と言われて。それから人のことを覚えるようにしてます。

-その遠慮がない感じは歌詞にも出てますよね。

マチコ:ほんまですか? でもめっちゃ気を使うんですよ。特定の誰かを傷つけることは言わないようにしてます。誰のことも悲しませたくないから。

-そしてこれまでドイツ、ベルリン、台湾など海外ツアーをやっていますがそれもやりたいことのひとつなんですか?

マチコ:特に海外だからやりたいとかはないけど、呼んでいただけたら、どこでもってスタンスです。TAKUMIは行ってないけど、ベルリンのライヴで、僕らの音はめっちゃ大きいんですけど、そしたらバー・カウンターの人が注文が聞こえないから、"音を下げてくれ!"と言われたことはあります(笑)。海外の方は反応が素直やし、大阪が一番ムズいかもしれない。東京もすぐに盛り上がる印象ですね。大阪はお客さんというより、プレイヤーが多い印象で。(※腕を組んで)こういう感じで観ている人もいるんで、盛り上げるのに一番苦労しますね。

-なるほど。あと、マチコさんはAGAINST ME!の7thアルバム『Shape Shift With Me』収録の「Provision L-3」に参加してますよね。僕も大好きなバンドなんですが、これはどういう経緯で?

マチコ:僕は刺青が結構入っていて、それはふたりの彫り師にやってもらったもので、その刺青をインスタで見たヴォーカルのLaura(Laura Jane Grace)が、自分もやってほしいとコンタクトを取ってきたんです。日本で出会って、ライヴも観に行きたいと言われて、めちゃくちゃかっこ良かったと言ってくれて。アルバムに参加してくれと言われたんです。

-へぇー! タトゥー繋がりで実現したんですね。

マチコ:Lauraもそのふたりの彫り師にやってもらってました。AGAINST ME!のことは全然知らなかったんですけど、今でもたまにコンタクトは取りますね。

-では、今作の話に移りたいんですが、作品としてはリリース済みの配信曲や再録曲も多数収録された内容です。

TAKUMI:全体的なヴィジョンは特になかったんですよ。

マチコ:思ったよりも聴きやすい作品で、あっという間に終わるなと。

-セルフ・タイトルを冠してますが、裸繪札というユニットを改めて自己紹介したい気持ちもありました?

TAKUMI:そこまで気負ってはないんですけど、結果そうなったんかな。

マチコ:("裸絵札"から)"裸繪札"という難しい漢字のほうに変えたけど、みんなが覚えてくれないので、それをアルバム名にしました。神事が抜けてから、難しい漢字のほうになったんです。最近はもうカタカナでもいいかなと思ってます(笑)。

-今作はたしかに聴きやすくなっていて、ループ/ダンス・ミュージック的なトラックが増えましたね。

TAKUMI:再録曲を除いて、僕が作曲しているのでそこが大きいかもしれない。

-以前と比べて、マチコさんのラップやリリックも聴きやすくなっているなと。

マチコ:それはTAKUMIに教えてもらったんです。僕は言葉を詰めすぎる癖があるらしく、"詰めすぎやで"と言われて。ライヴの情景を思い浮かべるから、無言の場合どうしたらいいんやろと思って、言葉を詰めてしまうんですよ。でも今回はいるところ、いらないところをTAKUMIに指摘してもらいました。

-言葉数を減らしたことで、マチコさん自身のラップ・アプローチに変化も?

マチコ:ありますあります。単純に長いと覚えきれなくて、それもデカいですね。ラップって16小節書いたりするじゃないですか。言いたいことは別にないんで、8小節で最高のものができたら、それだけでいいやんって。お客さんも覚えられたほうが口ずさみやすいし、歌いやすいかなと。