INTERVIEW
てのひらえる
2021.09.02UPDATE
2021年08月号掲載
Interviewer:吉羽 さおり
今年1月に初の全国流通盤1stシングル『灰かぶりのサンドリヨン』をリリースしたソロ・アイドル、てのひらえるが3rdシングル『new fable』をリリースした。1stシングルからのプロデュースを手掛けてきたDOG MONSTERのgouache.が作詞/作曲/編曲をした「new fable」は、新しい物語へと向かっていくワクワクと不安、いろんな感情を抱えながらも歩み出していくキラキラとした衝動や鼓動が詰まった曲で、それが爽快なサウンドとしなやかなヴォーカルで表現された1曲になった。それまで、どちらかというとラウドなサウンドやダークなニュアンスの曲や印象があったが、ポップな掴みから駆け抜ける曲になっている。今回は激ロック初登場ということで、てのひらえるの活動について、思いについて語ってもらった。
-てのひらえるさんは、これまでどんな活動をしてきたんですか。
初めてステージに立ったのが2015年のことで、2016年の1月10日からソロでの活動を開始しました。あとは2017年の8月から、82回目の終身刑というバンドのメンバーとしても活動を始めて、今年2021年7月4日にもうひとつAmyというバンドを始動させました。そんな感じで、今は3つのわらじを履いていろんなところで活動させていただいています。
-バンド、82回目の終身刑ではダンサーとしてクレジットされていますね、どういう経緯で加入したんですか。
ダンサーとしてパフォーマンスをしています。ダンスとマイクを使った煽りという感じで(笑)。82回目の終身刑自体は、ヴォーカルの葉月ちゃんやマニピュレーターの鈴原優美ちゃんも個人個人で活動されていて、その方たちが集結したバンドなんです。私は葉月ちゃんにダンスの才能を認めていただいて、ダンサーとして一緒にバンドをしないかと直々に声を掛けてもらいました。
-ダンスはずっとやっていたんですか。
私はもともとずっとダンスをやっていて、今の社長さんとはダンス・スタジオで出会っているんです。その社長さんが、アイドル事務所を作るからアイドルになってみないかと声を掛けてくれて。最初は"アイドル?"って思って。ずっとダンスをやってきたし、どうしようっていう気持ちがあったんですけど。社長にあるアイドルさんのライヴを一緒に観に来てくれと熱い誘いをいただいて観に行ったら、それがすごくかっこ良くて衝撃的な世界だったんです。これは私の人生を180°ひっくり返して、もっと楽しいことができるかもしれないと思って、アイドル活動をスタートしました。
-ダンスを始めたきっかけになったような人はいるんですか。
小学生のときに、音楽をかけて教室で踊るみたいなことが流行っていて。クラスの女の子にダンスを習っている子たちがいて、楽しいなって思い始めてから、ダンス・スタジオに行ってみたい気持ちが大きくなってきて。そこからダンスを習い始めました。
-ゆくゆくはダンサーになろうみたいな?
最初はそうでしたね。今は歌に魅了されてというか、パフォーマンスとしてダンスも歌もどちらも頑張っていきたい気持ちはあります。
-アイドルやバンドと幅広く活動していますが、音楽的なところで自分がハマっていったのはどんなバンドとかアーティストですか。
もともとバンドが好きで、いろんなフェスやライヴに行くのが好きだったんですけど。その中でもTHE ORAL CIGARETTESが大好きで。アニメを観るのも好きだったんですけど、THE ORAL CIGARETTESが"ノラガミ ARAGOTO"というアニメのOPテーマ(「狂乱 Hey Kids!!」)をやっているときにすごく衝撃的で、めっちゃいい曲だなって思って。そこから調べ出して、ズブズブはまっていったんです。ライヴに行き始めたのは、THE ORAL CIGARETTESの影響がすごく大きいです。
-自分でもバンドをやりたいなというのは当時からあったんですか。
そうですね、ずっと憧れとしてはありました。だから82回目の終身刑とか、新しく始めたAmyは、私の中での大きな転機になりましたね。アイドル活動ではできないことをバンド活動で展開していきたいなという気持ちが出てきて。それを一緒にやってくれるメンバーが揃って、今活動をしています。
-最近スタートしたというAmyはどういうバンドですか。
パンク! っていう感じですね。メンバーとは、女の子だけど男の人たちにも負けない熱くてかっこいいバンドになりたいねっていう話をしていて。最近はあまり、ゴリゴリなパンクとか強い感じの女の子のバンドを見ないなと思っていて、女の子でもそういう熱い気持ちがあるんだぞっていう思いを、もっともっと出していけるバンドにしたいなって考えています。
-Amyとソロのてのひらえるとでは、どう分けている感じですか。
ソロとしては、私の中で理想のアイドル像が結構しっかりとあるんです。人にあまり弱いところを見せないとか、アイドルとしてキラキラ輝いている自分を見てほしいなという気持ちがあって。バンドではもっと、私の中身の部分、人間らしいところとか内側から滲み出てくるものを自分の歌詞や、メンバーが作ってくる音楽に乗せて歌っていきたいなという気持ちで、内と外とで分けている感じがあります。
-ニュー・シングル「new fable」は、作詞/作曲/編曲とgouache.(DOG MONSTER/Gt)さんが手掛けていますが、てのひらえるさんが自分でどんな曲にしたいかというイメージをgouache.さんに伝える制作なんでしょうか。
今までは私がこういう曲を歌いたい、こんな曲が欲しいですと注文をして、それに対して私が歌詞をつけるという感じで活動してきたんです。でも、自分ではまだまだ経験不足なところもあって、レパートリーや歌詞の世界観の広がりが少ないなという気持ちがあって。他の方から見た私の曲が欲しいなって思っていたときに、gouache.さんと出会ったんです。とにかくgouache.さんが見たままの私、私に歌ってほしい曲というのをいただいて、それを私が表現するという形になっていて。だからgouache.さんとの曲では、私の思いを伝えて、こういう曲が歌いたいですっていう面はない感じなんです。
-そうなんですね。では曲を貰って、他者から見て自分ってこういうふうに見られているんだなとか、てのひらえるとしてこういうことを歌ってほしいんだなという、自身とのギャップなり新たな発見はありますか。
すごくありました。全国流通盤のシングル3作の中でもガラッと歌い方が変わっているんです。私の中では、"かっこいいアイドル"というのが大前提であったので、歌い方も声を張り上げるとか、全力で頑張るみたいなことが多かったんですけど。"今後、アーティストとしてこういう一面も見せていったらいいんじゃないか"とか、歌い方も"えるちゃん(てのひらえる)にはこういういい声があるよ"っていう、自分では見えていなかった部分を掘り起こしてくださって。数々の発見がありましたね。