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INTERVIEW

TOUCHÉ AMORÉ

2020.10.15UPDATE

TOUCHÉ AMORÉ

Member:Jeremy Bolm(Vo)

Interviewer:山本 真由

話し合えば話し合うほど、自分の感情がどんどん高ぶっていくんだ
そうするとパフォーマンスもよりリアルになって、力強く、正直なものになる


-ニュー・アルバムは、前作『Stage Four』の姉妹作とも言える位置づけのようですが、今作のテーマやコンセプトは? 前作から派生したようなものなのでしょうか。

そうだね。今の俺の人生を反映しているという意味で。前作から4年、母親が亡くなって6年近く経つ。このアルバムは俺がなんとか癒えて、生きていくための手助けをしてくれた人間関係や、ファンが俺に対してどういう反応をしてくれたか、そういったことがすべてテーマになっている。そういう意味で前作に付随するアルバムなんだ。

-今回のプロデューサーは前回と違ってSLIPKNOT、KORN、AT THE DRIVE-INらの作品を手掛けたRoss Robinsonを迎えていますが、彼を選んだ理由は? また、彼は今作にどんな変化をもたらしましたか?

ええと......面白い話で、俺は心の奥でずっと、いつか彼と一緒にやれたらいいなと思っていたんだ。彼の作っているものの多くは生々しい感情から生まれているものが多いから、理にかなっていると確信していた。ただ、同時に彼のことをすごく恐れてもいたんだ。彼の話はいろいろ聞いていたし、伝説もたくさんあったからね。彼が熱心なあまりシンガーや、他の人たちへの要求が強烈すぎるとか。アルバムによってはそのバンドのシンガーが泣いている声が入っていたりするし。

-あぁ、そうですね。KORNの(1stアルバム『Korn』)とか......。

SLIPKNOTもGLASSJAWもそういうアルバムがあるんだ。だから、彼と俺たちのバンドはいい組み合わせだと思ってはいたけど、同時に怖くもあった。俺たちのマネージャーはAT THE DRIVE-INのマネージャーをしていたころに、Ross Robinsonと仕事をしたことがあったんだ。あのアルバム(『Relationship Of Command』)のころにね。それで、このアルバムのプロデュースを誰にしてもらおうかという話になったとき、何人か候補にあったけど、俺たちの心の中では、俺たちにものすごく、ものすごく努力させる人が今回は一番合っているだろうとわかっていたんだ。バンドのキャリアがこのくらい長くなってアルバムも5枚目になると、自己満足に陥ってしまいがちだと思うんだよ。"ファン層も確立してきたし、内容がなんであれ聴いてくれるだろう"なんて思ってしまってね。そんな時期には、俺たちから途轍もなくヘヴィなパフォーマンスを引き出す人が必要だってわかっていたんだ。となるとRoss以上の人はいない。彼のやり方はすべてがそれなんだから。だから、パーフェクトな選択だった。この経験には本当に感謝しているし、Ross Robinsonのためなら代わりに非難も受けるよ。彼のことは死ぬほど大好きだ。Rossがいなければ、このアルバムはこういうかたちには絶対ならなかったと思う。

-彼の伝説をいろいろ聞いていると、鬼軍曹というイメージがあります。ブート・キャンプのコーチみたいな。

うん(笑)、たしかにそうだよ。俺は、彼のそういうイメージは敵対的な雰囲気からくるのかと思っていた。怒鳴りつけてくるんじゃないか、身体を揺さぶってくるんじゃないかとか、気に障ることを言ってくるんじゃないかとか。でも、全然そんなのじゃなかった。ものすごく熱が入って、愛情が深いから、どうしてもそのアーティストの生々しい部分を引っ張り出したい、そういう気持ちから行動している人だったんだ。単に語り掛けてくるだけだったよ。語って語って語りまくって......どんどん質問をしてきて、どんどん掘り下げていくんだ。俺たちの答えに対して"それはどういう意味だい?"ってね。"君はどうしてそう答えたの?"と。そうしてメンバーも交えて話し合えば話し合うほど、自分の感情がどんどん高ぶっていくんだ。そうするとパフォーマンスもよりリアルになって、力強く、正直なものになる。それが彼のやり方なんだ。しかも、ものすごく長けている。

-それはアルバムの仕上がりからもわかりますね。レコーディングはいつごろ行われたのでしょうか? 春先から、なかなか人が集まることの難しい状況が続いていますが、COVID-19のパンデミックによる影響はありましたか?

レコーディングを始めたのはたしか......2月中旬じゃなかったかな。ロックダウンが始まったころは、ほぼほぼできあがっていて、残されていた作業はひと握りだったと思う。でも、当時のアメリカではあまり信頼できる情報がなくて、どのくらいシリアスな状況なのか誰も把握していなかった。スタジオにいるときに突然"もうコンサートはできない。人が集まるのも禁止"みたいな通達がきてさ。その時点でたぶん俺はあと3曲くらい歌わないといけなかったのと、他にも加えるところや、あとミキシングも残っていた。Rossからたびたび電話がかかってきて"この部分だけ聴きに来てくれないか"とか、"こういうことを試してくれ"とか言われたよ。ある意味パンデミックのおかげで実験する時間が少し増えたと言えるのかな。ちょこちょことトライしてみた部分があるからね。アルバムを今年中に出せるかどうかもわからなかったし、"パンデミックに恵まれた"なんてことは言わないけどね。不適切だから(苦笑)。ただ、本当にやりたいことを確保するための時間が少し増えたのは確かなんだ。そういう意味では余地を与えられたと言えるね。

-先行シングルの「Deflector」は昨年秋に発表されていますが、激しさだけでなく、美しいコード進行が魅力的でエモーショナルな楽曲です。この曲はアルバムを意識して作られたものでしょうか?

あれはなかなか面白いシチュエーションでね。"水加減を見て(I'll test the water)"いたんだ。って曲の中でも歌っているけどね。

-そうでしたね。

その水加減はRossのことだったんだ。トライアウトというのかな。一緒にやってちゃんとケミストリーが生まれるか試してみたいと思ってね。彼にとってはものすごく珍しいことだというのは認識している。通常は1曲だけやってみるなんてやらないからね。それをさせてくれたというのはとても光栄なことだったし、特権だったと思う。ものすごく気の張りつめた数日間だったね。彼としては俺たちがどんなバンドなのかいち早く見極めないといけなかったし、こっちも短い間に彼の強烈さについていかないといけなかったから。ともあれその数日間が終わったあと自分がどう感じたか憶えてすらいないんだ。彼と俺は初めちょっと好戦的な感じだったのもあって。でも、ミキシングが終わって曲を聴いてみたら......"これは彼とアルバムを作るしかない"って確信したよ。彼は本当にスペシャルな境地に曲を連れていってくれたんだ。それで俺たちはアルバム向けに曲を書き始めた。去年の夏にレコーディングするつもりだったけど、合間に『Dead Horse X』をやったので、こっちのアルバムは秋にレコーディングしようと思っていたら、DEAFHEAVENとのヨーロッパ・ツアーが入ったんだ。それでレコーディングを冬に延期したら、今度はLA DISPUTEとのツアーが入ったからどんどん延期していった。"書かないとまずいぞ。スタジオのスタート日も決めないと"という話になったのは年が明けてからかな。

-なるほど。みなさん"テスト"に受かって良かったです(笑)。

そうだね(笑)。

-「Limelight」では、ギターのNick Steinhardtが、新たに習得したペダル・スティール・ギターを取り入れていますが、カントリーやハワイアンの曲に用いられるようなスティール・ギターを、試してみようと思ったきっかけは? とてもユニークなアイディアですが。

Nickが去年の初めくらいにスティール・ギターを買ったんだ。すごく興味を持ったらしくて、独学で弾き方を覚えていたよ。俺たちの音楽に使おうなんて気持ちはなかったらしいけど、段々自信がついて楽しめるようになってきたから、"それ使った曲を書いてみてよ"なんて話になったんだ。興味深いし、他とは違うからね。想定外だろう? そんな感じで、チャレンジにも近いかたちで始まったんだ。「Limelight」の終わりと、「Broadcast」に音が入っているよ。素晴らしい仕事をしてくれたと思う。才能ある男だよ(笑)。

-まったくです。ほかにも、今回これはいいチャレンジだったと思う点はありますか?

そうだな......いろんなチャレンジがあったね。俺は歌詞を書き始めるまでが難しかった。前作のあとどこから始めるかがわからなくてね。『Stage Four』みたいに歌うんじゃなくて、昔みたいにアグレッシヴに怒鳴るように歌いたいと思ったんだけど、アグレッシヴに歌っているうちに、メロディで怒鳴っている自分に気づいたんだ。それをちゃんとやるのはチャレンジだったね。がなりすぎないようにするとか。他にもいろいろチャレンジはあったけど、最終的にはどれもやった甲斐があったよ。

-そのチャレンジがあったから、今回のアルバムはメロディックさが増したのかもしれませんね。

そうだね! それは間違いないと思うよ。俺たちのアルバムの中でもアグレッシヴな部類に入るのに、一番きれいなアルバムのひとつでもあるというのが面白いね。キャリアのこの時点にきて、メロディとアグレッシヴさが最高のかたちでひとつになったと思う。初期の作品はアグレッシヴだったけど、メロディはそんなになかったし。現時点ではパーフェクトなミックスができたと思う。

-アルバムを発表しても、しばらくはライヴ活動に制限ができてしまうような状況ですが、ファンに新曲を届けるための何か新しい試みやアイディアはありますか?

あるよ。"Twitch(ストリーミング・プラットフォーム)"でライヴ・ストリーミングをやるんだ(※取材は10月上旬)。10月12日......じゃなかったかな。嘘つかないようにチェックするよ(笑)。(※何か画面を見る)......そう、10月12日だ。アルバム・リリース記念のショーだから、楽しみだよ。人じゃなくてカメラの前でやるんだけど、どのアーティストも同じ状況だから。みんな同じ船に乗っているんだ。だから、最大限に生かそうと思うよ。来年にはできるだけノーマルに近い状態に戻ってほしいね。日本にもぜひ行きたいし......絶対行きたい。世界の中でも個人的に気に入っている場所のひとつだしね。その日が来るのが待ちきれないよ。一日一日、その日にできることをしていくことだな。今はとにかくようやくアルバムを出せてワクワクしているんだ。

-まだ具体的な計画は難しいと思いますが、実際日本でライヴを行う可能性は? TOUCHÉ AMORÉのようなエモーショナルなハードコアは、日本ではとても人気があるので、ぜひ来日してほしいです。まだ時間がありそうですから、それまでにアルバムを覚えてシンガロングできるようにしておきたいですね。

そういうふうに動くことを願っているよ。みんながアルバムを楽しんで、すべてを理解してくれて、何度も聴き返してくれて、俺たちが日本に行くまでの間に心の中でも鳴り響かせてくれるといいね。本当にそうなることを願っている。さっきも言ったけど、日本が本当に大好きなんだ。素晴らしい場所だと思う。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

俺たちに注目してくれて、そしてこうしてインタビューしてくれてありがとう。新作は俺たちも心から誇りに思っているんだ。音楽が入手できるところならどこでも手に入ると思うから、ぜひ聴いてほしいね。日本は大好きなところだから、早くまた行きたいと思っているよ。何しろ俺たちが一番影響を受けたバンドのひとつが日本のenvyだからね。彼らにも、みんなにも愛を送るよ!