デーモン閣下
ALI PROJECT：宝野 アリカ（Vo）
インタビュアー：荒金 良介

悪魔と闇の女王の共演が実現！ デーモン閣下×宝野アリカ（ALI PROJECT）による豪華コラボレーション作『時空の迷い人』がここに完成した。表題曲はTVアニメ"八男って、それはないでしょう！"オープニング・テーマに起用され、閣下自ら作曲を手掛けている。対して、カップリング曲「薔薇異形」はALI PROJECTの片倉三起也が作曲し、歌詞は2曲共にデーモン閣下と宝野アリカと共同作業で行われ、これまでありそうでなかった異色のコラボレーション・ナンバーが揃った。特にシンフォニック・メタルを掲げた表題曲に関しては本場スウェーデンのAnders Rydholmをサウンド・プロデュースに迎え、メタル好きにも必聴曲と言えるだろう。首謀者であるお二方に話を訊いた。

とても愉快な遊園地のアトラクションが2種類ある感じ（デーモン閣下）

－今作の話をうかがう前にデーモン閣下と宝野アリカさんの出会いから教えてもらえますか？

閣下：会ったのは今回のレコーディング後なのだ。

アリカ：あっ、そうだ（笑）。

閣下：だから、1曲目は一度も会わずにレコーディングしたのだ。

アリカ：お会いしたときは、やっとお会いできましたねと。

－アーティストとしてお互いに抱いていた印象は？

閣下：（ALI PROJECTは）独特な世界観を持つ人たちだなと。我々とは音楽的な"表現"は必ずしも一致しないんだけど、共感する部分はかなりある。全体的に耽美的な音楽だし、世界観を作る姿勢に関しても似たものを感じる。他の追随を許さないというか、ALI PROJECTと似たような同じことをやっている人もいるかもしれないけれど、超えられないものを持っているから、そこも好きなところだね。

－なるほど。

閣下：インテリというか、育ちが良くないと、こういう音楽は作れないだろうと。自分のことを棚に上げて言うと、謎めいている部分がたくさんあるじゃない？ 大学とか、どんなところ行っていたのかなと（笑）。

アリカ：はははは（笑）。もちろん聖飢魔Ⅱは存じ上げていますし、私もハード・ロックは好きだし、ヴァイオリンを担当している者が聖飢魔Ⅱのことを大好きで。

閣下：ほう！

アリカ：今回一緒に作品を作ってみて、悪魔なのに、なんて真面目な方だろうと感じました（笑）。アニメ（"八男って、それはないでしょう！"）の主題歌（「時空の迷い人」）のほうは貧乏貴族の話なんですが、閣下は王族に付随した身分の高い悪魔みたいな感じですね。今回のコラボレーションを考えた人は神だと思います。

閣下：まぁ"神"だと吾輩の敵になってしまうけれど、いずれにせよすごい発案力だったね。

アリカ：MVのショート・バージョンのコメントを見ると、"ありそうでなかった"、"混ぜるな危険"みたいな感想もあったんですけど、何が混ぜるな危険なんだろうって（笑）。

－実際に共同作業した感触は？

閣下：今回は共作したけれども、ヴォキャブラリーの使い方に似ているものを感じたね。吾輩よりも難しい言葉を使っているから。

アリカ：閣下のほうが難しい言葉を使っていると思います。作り上げたいものが近い気もしますね。

閣下：歌詞を書くときにどんなテーマにするかを考えるのだが、そのテーマに行き着くためのプロセスが似ているのかなと。例えば、比喩の使い方とかね。それは特に、「薔薇異形」で感じた。

－今作に至った経緯ですが、まずはアニメの主題歌の話がきっかけだったんでしょうか？

石川プロデューサー：この企画を提案しましたきっかけは、アニメの主題が現代日本のサラリーマンが異世界に転生してしまうというお話なので、異世界から来た方々がこの現代日本で歌っていただいたら面白いんじゃないかということでした。

閣下：アリカ嬢も異世界から来たというプロフィールなの？

アリカ：違います（笑）。

石川プロデューサー：イメージです。闇の女王として。

－「時空の迷い人」は閣下が作曲したものですよね。

閣下：当初はALI PROJECTの片倉（三起也）氏が作曲する予定だったんだけど、自分のところで手一杯で作れないと言われてしまって、"閣下、書けますか？"と言われたので、急にお鉢が回ってきたのだ。発注を受けたときに、仰々しくも、荘厳なコーラスで始まり、北欧メタルに突入する感じで作ってくださいとリクエストされた。難しかったのは、デュエットなので、初めてではないけど、北欧メタルの男女のデュエット......そういう曲をほぼ書いたことがなかったので。お互いの見せ場を作らなきゃいけない。1番を吾輩が歌ったら、2番はアリカ嬢に歌ってもらうとか、サビでは掛け合いになるとか。そういうふうに考えると、例えば、メロディのキーの設定とか、そういうところが実に難しかった。吾輩は男性としてはキーが高いとはいえ、アリカ嬢のほうが"おいしいレンジ"が全然高いので、そこが一番苦労したところかね。

－「時空の迷い人」はお二方の歌声が密に絡み合うパートもあり、とても聴き応えがありました。

閣下：密にね（笑）。アリカ嬢からしても普段の歌声よりも高いところを？

アリカ：そうですね。裏声と地声で歌っていて、あれは地声で歌えるか歌えないかぐらいのキーです。普段歌っている感じとはまた違うけれど、閣下の伸びやかな声に負けないように歌わなきゃと思いました。

－相乗効果で高め合う歌い方を？

アリカ：はい。そういうメロディになってますからね。

閣下：ALI PROJECTの普段の歌は細かい歌い方が多くて、声を長く伸ばすようなアプローチは少ないものね。そして、「時空の迷い人」と比べると、「薔薇異形」はそれが逆転してるんだよね。

－「薔薇異形」はALI PROJECTの片倉さんが作曲してますよね。

アリカ：ALI PROJECTの曲を閣下が歌ったらどうなるかなって。

閣下：マスタリングしたときに曲を並べるでしょ。「時空の迷い人」が終わって、「薔薇異形」が始まると、笑えるんだよね。

アリカ：わかります、わかります（笑）！

閣下：とても愉快な遊園地のアトラクションが2種類ある感じだから。