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INTERVIEW

デーモン閣下×宝野アリカ(ALI PROJECT)

2020.05.13UPDATE

2020年06月号掲載

デーモン閣下×宝野アリカ(ALI PROJECT)

デーモン閣下
ALI PROJECT:宝野 アリカ(Vo)
インタビュアー:荒金 良介

-「時空の迷い人」は、アリカさんが"憧れの北欧メタルを歌う日が来ようとは"とコメントされてますよね?

アリカ:自分が歌う日が来るとは思わなかったです。でも、普段はそういう音楽を聴いているんですよ。STRATOVARIUS、SONATA ARCTICA、THERIONも聴いてます。エピック・メタル、シンフォニック・メタル大好き。一番好きなのはLuca Turilliなんですけどね。イタリアだけど。で、私の始まりはNOVELAなんで(笑)。

-そうなんですね!

閣下:機会がなかっただけ? バンドはやってなかったの?

アリカ:やってないですよ。高校の頃はテクノをやってましたが。あとCDでは、DEAD ENDのMORRIE(Vo)と歌ったぐらいかな。

閣下:あぁ、それは資料で貰った。(「時空の迷い人」は)もともとイントロにお互いがシャウトで絡むパートを入れていたのだ。しかし、アレンジャーのAnders(Rydholm)に"ここはないほうがいい"と言われて、カットされちゃったんだよね。吾輩は気に入っていたんだけど。

-「時空の迷い人」は、"物語の結末がどうなるのか知らなかったので、その「知らない」感覚を大切にして曲も詞も作った"と閣下がコメントされてますが、どこかミステリアスな雰囲気を入れてみようと思ったんですか?

閣下:そうね。物語の結末を知らないし、曲の中に物語の結末を入れられないから。僕はこのあとどう生きていけばいんだろう、この状況のなかでどうアイデンティティを確立すればいいんだろう、という歌になればいいんじゃないかと。ちなみに歌詞は、基本自分が歌うパートはそれぞれが書いているのだ。一緒に歌っているところは相談して作っていったのだけどね。

-そういう作詞のやり方は珍しいと思いますが、お互いにインスパイアし合うところもあったんですか?

閣下:今回のコラボレーションの最大の収穫はそこだ。歌詞のやりとりがとにかく面白かった!「時空の迷い人」は去年の夏に作って、「薔薇異形」は今年になって作ったのだが、後者は2度目になるから、歌詞のやりとりはより楽しめた。

-歌詞はワンフレーズごとにキャッチボールするような感じで?

閣下:細かくキャッチボールする感じではなく、先行の者が相手の歌う部分を空欄にして、まずはざっと書く方式。「時空の迷い人」はアニメのテーマ曲であることがわかっていたから、内容的にそこから外れるつもりはなく、お互いの共通認識としてアニメの作品があった。で、同時に書き始めると重なる言葉も出てくるだろうから、役割分担をまず考えたのだ。"男の子が主人公のアニメなので、感情的な部分は吾輩が主として考えて、情景やメッセージはアリカ嬢のほうで進めましょう"と。そうすれば言葉も重複しないだろうって。「時空の迷い人」はそういう作り方であった。「薔薇異形」はALI PROJECT主体の曲なので、"じゃあ、今度はアリカ嬢が先行でね"って。

アリカ:はははは(笑)、そうですね。こういうテーマにしますと伝えて最初に歌詞を書いて、それを渡して、"こういうふうに来るんだ。じゃあ次はこう書こうかな"という。

閣下:平安時代の恋人同士が和歌をやりとりしている感じだった(笑)。

-お互いにインスパイアされたフレーズはあるんですか?

閣下:例えば「薔薇異形」の"薔薇(そうび)"という言葉ですね。最初は"ばら"と読ませて歌うつもりだったのだが、アリカ嬢が"私は「ばら」じゃなく、「そうび」と読ませようかな"と言ったのだ。どっちがいいかなという話になり、プリプロで歌った結果、吾輩も"そうび"にするほうがいいだろうと。

アリカ:ALI PROJECTでは"薔薇"という言葉をよく使うので、それを使わない時期もあったんですよ。閣下との共作で"薔薇"という言葉を出すなら今までと違うイメージがいいと思ったので、今回は"そうび"にしました。

閣下:"「そうび」という読み方もありますよね?"とアリカ嬢に言われて、あぁ、考えたこともなかったなと思ったのだ。吾輩は"そうび"という言葉を使うことがなかったから。初めて使う単語ってウキウキするのよ。

アリカ:ははははは(笑)。

閣下:そこを含めてインスパイアされた歌詞がいくつもあって、勉強になったね。

アリカ:私も普段歌詞に使わない言葉がきて、"ここで使うと、こういうイメージになるのね!"と思う場面はいくつかありました。それは新鮮でしたね。

閣下:「時空の迷い人」は吾輩の土俵になるけど、「薔薇異形」は完全にALI PROJECTの世界だし、それは吾輩も好きな世界だから。バンドバンドしてなくて、すごく緻密に構築されていて、ファンタジー感に溢れているからね。吾輩もいろんな曲を歌ってきたけど、まだやったことがない世界観でとても新鮮であった。

-「時空の迷い人」の、"何度躓(つまず)いて 夢散らばっても/瞳を開けよ ひかりの子ら"という歌詞は、ポジティヴなメッセージに貫かれてますよね。

閣下:そこは全部アリカ嬢が書いた部分だね。吾輩もね、ALI PROJECTはどよんとした世界観のユニットだと勝手に思っていたけど、"この人は実はこんなポジティヴな歌詞を書くんだ"って意外だった。

アリカ:お話自体が異世界に行って、イチからやり直して、魔法の修行をする内容だから、頑張ってほしいと思うわけですよ。

閣下:あぁ、女性らしいというか、母性というかね。吾輩が書いた部分の歌詞はグチグチと悩んでいる感じだから(笑)、結果的にいいバランスが取れたなと思ったね。

-"みんな時空の迷い人"、"僕はボクだ"の歌詞も先の見えない世の中だけど、強い意志を持ち続けていこうと多くの人に呼び掛ける内容になってます。

閣下:そこは半分半分だね(笑)。

アリカ:はははは(笑)。

閣下:"みんな時空の迷い人"は最後のほうにできた歌詞なのだ。自分だけじゃなく、もう少し考えてみれば、転生した人じゃなくても、みんな迷みを抱えているじゃないかと。だから、"みんな"と表現したほうが共感を呼ぶかなと思って。その前に英語で"We're all..."という歌詞もあって、"みんな"と表現しているのに、くどいかな......? でも日本語と英語だからいいか、みたいな話になって。ああいう判断の場面はまぁちょっと気を使ったね。

-「時空の迷い人」はアニメが中国で放送されることもあり、前半には中国語も入れてますよね。

閣下:アニメが日本と中国で同時に配信されるので、中国語も入れたほうが観た人も喜ぶだろうと思ってね。で、中国語の歌詞は知り合いの中国人と膝を突き合わせて作ったのだ。日本語と違って1音節の中で母音が複数になるから、歌詞ができたあとにAndersにテンポを遅くしてもらった。仮ヴォーカルを録音して先生に聴いてもらったら"ちゃんと中国語に聴こえる!"と言われて、偉い嬉しかったね。今回はメインの歌は日本で録って、演奏、コーラスはスウェーデン人がやっているし、ギター・ソロはボスニア人が弾いているから、超国際的だね。

-「時空の迷い人」はサウンド・プロデュースにAnders Rydholmを迎えてます。

閣下:Andersに任せれば間違いないだろうと。吾輩もハード・ロック、ヘヴィ・メタルのバンドを長年やっているとはいえ、ギタリストが主として曲を作っているから、北欧メタル・テイストに仕上げるのはそこまで得意ではなくて。Andersの場合はどんな曲でもヘヴィ・メタルにアレンジしてくれるから。

-そして、「薔薇異形」についてはいかがですか?

閣下:きたっ! と思ったぞ。「聖少女領域」という代表曲があり、その世界観がとても好きだったので、ああいう曲がくればいいなと思ったら、本当にそういうものがきたから。

アリカ:アルバムに1曲はそういうものを作るけど、これぞ! という曲は久しぶりですね。閣下と歌うということで、想像以上に素敵な仕上がりになったので、嬉しいです。

閣下:キーは吾輩にしては低いレンジだったので、自分でもどうなるかわからなくて。「薔薇異形」は実験的であったね。

-「薔薇異形」に込めたメッセージというと?

アリカ:"異なるものたれ"と歌っていますけど、人とは異なっても、正々堂々と生きようというテーマになっています。人とは違うけど、それでもいいじゃないってなって。

閣下:"異なるものたれ"と伝えるときには何か別のモチーフや比喩を用いて、異なるものを表現するのも面白いのではないかなと思って、吾輩が書いた部分の詞はちょっと変化球にしたのだ。結果、二面性みたいなものが出ているんじゃないかと。

アリカ:男女で歌っているわけだから、そういう部分があってもいいですよね。みんなこの曲でデュエットしてほしいです。やりがいはありますよ(笑)。