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INTERVIEW

椎名ひかり × ゆよゆっぺ

2018.11.20UPDATE

椎名ひかり × ゆよゆっぺ

椎名ひかり ゆよゆっぺ
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by RIO NAKAMURA

-たしかにそうですね。ところで話は前後してしまうんですが、ふたりの初対面はいつになるんですか?

ゆよゆっぺ:いやー、これが伝説のラジオがありまして(笑)。さっきお話した八王子Pと5年くらい新潟のFMでラジオ(FM PORT"ゆよゆっぺ・八王子Pのハンドメイドラジオ")をやらせていただいていて、その中で王子(八王子P)が"椎名ぴかりんという女の子に曲を書いたんだ。今度ゲストで呼んでいいかな?"という話になったんですよ。で、当日になって、王子が収録の始まる時間に来れないという......。

椎名:初対面でふたりきりでラジオに出ました。八王子Pとゆっぺさんのラジオなのに......タモさんのいない"笑っていいとも!"が始まった、みたいな(笑)。

ゆよゆっぺ:話を回す人がいなくてどうしようって(笑)。そんななかで、"椎名ぴかりん"としてのあらゆる設定があったわけじゃないですか。僕も頑張って資料を読みながら話すんですけど、どうもキャッチボールがうまくいかないわけですよ(笑)。

椎名:それが初対面でした。そのときは"初音ミク -Project DIVA-"っていうボカロのゲームをやっていて、その中にゆっぺさんの曲も入っているので、ゆっぺさんのことは知っていたんです。そうしたら今回、曲を書いてもらうことになって。

ゆよゆっぺ:不思議な縁だよね。

椎名:ゆっぺさんの色がめちゃくちゃ出ている楽曲で、ゆっぺさんファンからしても"あ、ゆよゆっぺの曲だな"って思うかなと。高音を伸ばしているきれいな部分とかは"ひかりちゃん歌上手くなった"みたいな感覚になるかもしれないです。今回のニュー・シングルの中では聴きやすいし、且つ苦しみみたいな部分も入っているし、深く歌い上げている曲だなと思いますね。シャウトとかも入っているんですけど、そういうのがなくても素晴らしい曲なんじゃないかなっていうくらい"本質"という感じの曲です......ゆっぺさんの色出てますよね?

ゆよゆっぺ:たぶん(笑)。でも、さっき話したようにとりあえず僕の意見はなしというか、椎名さんを最大限に表現するにはどうしようってやった結果なんです。やってきたこと、得意としていることをやらせていただいても遜色のない楽曲になるだろうなと思っていましたし、ちゃんと世界観を表現できたので、マッチングしてもらったことに感謝ですね。

椎名:新曲の中で一番エモい曲です。鳥肌が立つと思う。車の中で爆音で聴いてくれたらなと。

-ちなみに、ゆよゆっぺさんに依頼しようと思った決め手みたいなのってなんだったんですか?

椎名:決め手は、まぁ......髪の毛が赤いし......フィーリングかなと。

ゆよゆっぺ:(笑)若干被ってるのか。

椎名:ちょっと"モンハン(モンスターハンター)"の"テオ・テスカトル"に似ているなと思って。私テオが大好きなんですよ。いろいろありますけど、基本はそこですかね。

ゆよゆっぺ:......基本はそこなんだ(笑)。でも音楽性どうこうの前に、なんとなく共通点とか"この人は自分と似ているところがある"みたいな、気持ちの面でも見た目の面でもそういう、ふとしたきっかけって大事なことだと思います。いい曲を書かないと淘汰されていく実力社会のなかで、ちょっとしたシンパシーで声を掛けていただけるのはありがたいことですね。


"ワンランク上の白昼夢"感が出ている曲だと思います(椎名)


-そんなきっかけで制作された曲ですが、提供された曲を初めて聴いたときの印象はいかがでした?

椎名:"ゆっぺさんてこんなゴリゴリの曲書くんだ"って思いましたね。きれいなヴォーカルと厳つい音の曲だなって。不協和音感があるんですよ......ありますよね?

ゆよゆっぺ:僕の信条として掲げていることなんですけど、きれいな部分と厳ついものの共存が一番美しいと思っているんです。今目の前にある椎名さんの新しいアー写も素敵だなと思っていて、可憐な女性と強そうなロゴ、訳のわからない格好、そういうのがすごい好きなんです。汚いもの、強いもの、怖いものに対しての美しいものって、ものすごい際立つんですよね。美しいものに美しいものを重ねるのは、とても美しいことなんですけど、それは当たり前のことで、万人に対して"いいものでしょ"って見せるものなんです。そういうことはボカロの曲を書いているときからずっと考えていて、音楽的にも不協和音とか、音楽的におかしくなっているものに対して、高いヴォーカルのような美しいものが共存していることによって、よりメロディやキャラクターが引き立つと考えています。そこはボカロの曲を書いているときと共通で、今回書いた曲にも入っている考え方だと思いますね。

椎名:そうですね。"ワンランク上の白昼夢"感が出ている曲だと思います。

ゆよゆっぺ:めっちゃいい例えですね、"ワンランク上の白昼夢"。僕的にも変な考えを起こさずというか、今回、椎名さんが等身大のアーティストとしてやるということなんですけど、僕としても等身大で作れた曲だなと思います。

-自分を殺したとは言いつつも、根底の部分で表現したいものが近しい部分もあったんですかね。

ゆよゆっぺ:あのときラジオでキャッチボールが難しかった女の子と、こんなに通ずるものがあったんだって思いました。こういうことを言うのもおこがましいですけど、感慨深いですよね。

-ラジオで会ったときは曲の提供も想像できないような感じだったんですね。

ゆよゆっぺ:言い方が悪くなっちゃうかもしれないけど、"面白いアイドルが出てきた"みたいな印象でしたね。

椎名:そうやって思われていることが多いかなと思って今回名前を変えるというのもありますね。本当に二十歳を過ぎてから悪化している中二なんですよ。(名前を本名にすることで)キャラだと思われないで表現できるかなと思いました。全部ガチで真面目なんです。

ゆよゆっぺ:当時はマジョリティの人に面白がってもらえるように見せているのかと思っていたんですけど、より自分に近い人に届けられるようにした結果なのかなと思います。

椎名:最初は言われたままのことをやっていたこともあったんですけど、途中から自分色に変えていきました。

ゆよゆっぺ:なるほど。自我が芽生えてきたんだね。

椎名:そうなんですよ。自我がなかった。音楽に関して自我なんてひとつもなかったんです。最初は"ヴィジュアル系みたいな曲がいい"って言っていたんですけど、偉い人に"アニメっぽい方がいいんじゃないかな"って言われて、"偉い人が言っているんだからそうかな"みたいな。

ゆよゆっぺ:そんななかで王子はマジでいい仕事してたよね。

椎名:八王子Pさんが作ってくれた「とろあまちゅ」(2013年リリースの2ndシングル表題曲)っていう曲でも"絶望的に愛してね!"とか"息もできないくらい/ずっとずっと一緒にいようね"とか、かわいく言っているけど今ひかりが伝えたいことに近いワードが入っているんですよ。今回の楽曲に関してはガチのトーンというか、ガチの叫び、雄叫びみたいな。

ゆよゆっぺ:隠し切れなかったダークネスな気持ちを、フィルタを取っ払って表現したような感覚です。すごくライオットって感じですね。

-最初の"ラスボスの第2形態"という表現がしっくりきますね。

椎名:般若さんになりたいなって思います。

ゆよゆっぺ:(笑)フリーザじゃないですけど、ここから何形態あるのかなっていうのは楽しみです。考え方や伝え方はこれからも変わってくるだろうし、変わっていくなかでも根底の部分は変わらず、核に近づいて来るんだろうなって思います。

椎名:そうですね。音楽に対して自我が出てきて、今までで一番自我を出したのがこの曲です。