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INTERVIEW

MEPHISTOPHELES

2018.09.19UPDATE

2018年09月号掲載

MEPHISTOPHELES

Member:梅原“ROB”一浩(Vo)

Interviewer:杉江 由紀

-それこそ、ROBさんと葉月さんでは世代が違うかと思いますけれど、ヴォーカリスト同士としての親睦はかなり深くいらっしゃるのですね。

飲みに行ったり、話をしたりしていても、別に歌について語り合うとかはあんまりないんですけどねぇ。僕は世代とか先輩後輩みたいなことはまったく気にしない方なので、普段はしょうもない話ばっかりしてますよ(笑)。むしろ、僕はバンドマンの中での上下関係みたいなのは大っ嫌いなんです。葉月君もまさに今の時代を第一線で動かしているアーティストなので、刺激を受けることがたくさんあるし、話をしているだけでもすごく楽しいです。あと、葉月君は正直で素直なところも大好き。ライヴのMCで、動員のリアルな話とかも普通にしちゃうでしょ? "今日はソールド・アウトにならなくて悔しい"とか。あれは僕からすると、ほんとに驚きでした。"えっ! そんなことまで言っちゃうの!?"って。

-詳細に"あと何人でソールドでした"というところまで彼は言及しますものね。

そこがもう、僕からすると最初は理解不能で(笑)。だけど、彼の場合は一緒にお酒を飲んでいて、そのときに言ってることも、ああやってステージで喋ってることもいつもと同じ感じなんですよね。ポーズでもなんでもなく、裏表なく本当にそう思ってるんだなっていうことがわかったときに"この人はすごいな"って思ったし、フロントマンとしてあそこまで飾らずに正直でいられるっていうのはかなりうらやましいなとも思ったんです。

-今回のレコーディングにあたって、葉月さんに対しROBさんから何かしらのオーダーを出すことはあったのでしょうか。

あらかじめ、ちょっとしたやりとりはしましたね。「Dictator ship」は以前も音源化したことのある曲(2001年リリースのアルバム『METAL ON METAL』収録)なので、資料として一応それは送ったんですけど、今回の場合それとはキーが全然違うんですよ。だから"自分の歌いやすいようにやってね"っていうことは言いました。そもそも、「Dictator ship」を歌ってもらうことにしたのも、このアルバムの中では最も葉月君に合っているだろうなと考えたからなんですよ。何しろ僕は、もう何十回とlynch.のライヴは観ていて葉月君の声の特性もよくわかっていますからね。あの声が「Dictator ship」に入ったら、間違いなく映えるだろうなと思ったんです。そういう意味で、別に細かくオーダーを出す必要はありませんでした。


やっぱり、ヘヴィ・メタルっていうのは強くあるべきもの


-かくして、今回のアルバム『Hide and seek』は現在進行形で動き続けているレジェンド・バンド MEPHISTOPHELESにとって非常に大きな意味を持つものへと仕上がったのではないかと思います。今作を無事に作り終えた今、ROBさんはどのような手応えを感じていらっしゃいますか。

この『Hide and seek』は、バンドとしての"強さ"を感じさせるような作品にすることができたと思います。歌ひとつをとっても、何テイクか歌った中から最も力強く聴こえるものを選んでいったんですよ。怒鳴るでもなく、がなるでもなく、かといってシャウトをするのともまた違う、声色や説得力というのかな。そこは今回サウンド・プロデュースをしてくれている岡垣君(TERRA ROSA/Aphrodite/Jill's Projectの岡垣正志/Key)にも立ち会ってもらいながら、どの曲も録っていった感じですね。それによって、ここ数年で多少ブレが出てきていたところもいい方向に導くことができたと思います。

-今さらではありますが、その近年に生じていたブレとはいったい......?

これはさっきのサポート・メンバーの話とも重なるんですが、HIRO君や前任のベーシストと一緒にやるようになって新しい刺激を受けたのと同時に、MEPHISTOPHELESが一時的に、彼らの持っている個性に必要以上に寄ってしまったところがあったのも事実なんですよね。それに、2015年に出した前作『devils on metal revitalized』は、僕が制作中に歌い方を変えたこともありましたし、今思うと、あれはいろいろな面で迷ったなかで作ったものだったなという後悔がどうしてもあったんです。進化をしていきたいと思うがあまり、僕が自分の進むべき道を見失っていた時期だったんですよ。でも、去年hibiki君がサポートとして参加してくれるようになったことで、メタルの正統な部分を改めて強化できたこともありますし、僕自身も"MEPHISTOPHELESはジャパメタのバンドだろ!"という意識を取り戻せたところがあったので、今回の『Hide and seek』は進化を果たしながらも、メタル・バンドとしての存在感をしっかりと打ち出す作品にすることできたのではないかな、と感じてます。

-"MEPHISTOPHELES、ここにあり"という貫禄ある威厳を、音そのもので証明したメタル・アルバムになったことは間違いないでしょう。

やっぱり、ヘヴィ・メタルっていうのは強くあるべきものだと僕は思いますしね。聴いた人たちに、そこが伝わってくれたら嬉しいです。

-では、"Hide and seek"というアルバム・タイトルはどのようにして決まったものでしたか?

これは"ジキルとハイド"のイメージから、二面性という意味を込めて付けたタイトルです。今回のリード・チューンになっている「Hide and seek」はレコーディングの最後の方でできた新曲で、この曲の歌詞では自分の中の強さとか弱さとかがすんなりと表現できたので、ここ近年の自分が投映されたものになったなということで、アルバムのタイトルにもすることになりました。

-ちなみに、激ロック読者の中にはMEPHISTOPHELESの歴史や過去を知らない方や、場合によってはバンド名自体を初めて聞くという方もいらっしゃるかもしれません。そこを前提とした場合、ROBさんは今作『Hide and seek』について、彼らに対しどのようなメッセージを投げ掛けたいとお考えでしょうか。

年齢的にいうと、僕らはレジェンド・バンドだと思うんですよ。だけど、このアルバムの音を聴いて、ライヴを観てもらえば、おそらく今のMEPHISTOPHELESに対してレジェンド感を感じることはないと思います。普通に若い子たちもライヴで暴れているし、レジェンドっぽい、いかにもな落ち着き感とかはないんですよね。たしかに14年間っていう長いブランクはありましたけど、今は逆にそれがいい形で作用しているような気もするんですよ。若かった20代のころから感覚はそのままで、気がついたらこの50歳くらいのところまで飛んでしまっていたというか。

-そう考えると、MEPHISTOPHELESは1980年代から現代へと奇跡的にタイムリープしてきたような感覚に近いのかもしれませんね。

そこは良くも悪くもで、僕らと同世代くらいのお客さんたちからすると"ついていけない......"となってしまう可能性もあるでしょうね(笑)。実際、今やってるライヴでもそういう現象が起きているんですよ。テンポの速い曲で首を振りながら暴れているのは、ほとんど若いお客さんたちですからね。前にlynch.とツーマンをやったときも、まさにそんな雰囲気でした。だから、今回のアルバム『Hide and seek』もそうだし、これからやっていくライヴも、激ロックさんを読んでくれている人たちに、しっかりと楽しんでもらえるものになっていくと思います。今回のアルバムは、最高に気に入って自分でも毎日聴いているんですよ。今のこの前衛的なMEPHISTOPHELESに、ぜひ触れてみてください。