INTERVIEW
IN THIS MOMENT
2017.08.03UPDATE
2017年08月号掲載
Member:Maria Brink(Vo)
Interviewer:山本 真由
-アルバムのカバー・アートは"Ritual(=儀式)"というタイトルどおりというか、ちょっとホラーな感じなんですが、これはどういう儀式のイメージなんでしょうか?
(笑)私はもともと何につけても儀式が好きなのよね。ろうそくを灯したりして。日常生活でもそういう何気ない儀式やスピリチュアルなものを大切にしているわ。あのアートワークは、私が過渡的な場所にいるという設定なの。天国と地獄の間を漂っている感じというのかな。それと同時に、上に向かって引っ張られている状態でもあるの。何かに向かって持ち上げられている感じ。私にとっては美しくてスピリチュアルなものを意味するアートワークなんだけど、怖いって言う人もいるのは知ってるわ(笑)。たぶん私は"美しいもの"の表現の仕方が変わっているんだろうなと思う(笑)。
-今"天国と地獄"という話が出ましたが、今年の4月から行われていたツアーは、ニュー・アルバム収録曲の「Half God Half Devil」がタイトルに採用されていますよね。このタイトルもアルバムのテーマとして重要なキーワードなのでしょうか?
そうね。私のアルバムはみんな、明るさとダークさのバランスがあるような気がするけど。どんな人間にも明るい面と暗い面があるしね。誰だって、時には暗闇にはまってしまって、光を求めて苦心することもあるし、明るいところにいるときにはダークさが懐かしくなることもあるでしょ? それって人間として自然なことだと思うの。「Half God Half Devil」はそういうものにインスパイアされているんだと思うわ。私は天にいる神様のようなものを信じているの。私を愛してくれて、守ってくれるような存在。と同時に、天にいる母のようなものも信じるような育てられ方をしているのよね。母なる大地や宇宙のような存在。科学的なエネルギーも持っているようなね。でも、私には信じているものがいろいろあるの。その信じているいろんなものの狭間で苦しみながら、本当の自分を見いだしていく、そういうものを今回は表現してみたかったのよ。意味通じるかしら?
-はい。どんな人間にもいろいろな面があって、そのなかで本当の自分を見つけていくとか、そういう感じですよね。
そう。でね、私はひとつのスピリチュアルなものに固執してはいないの。愛とエネルギーと力を与えてくれるものであれば、ブッダだって信じるし、キリストだって信じるわ。......エネルギーを信じているってことね。必ずしもひとつの宗教であることはないって思ってるの。私は母なる大地を信じているから。"ひとつしか信じちゃいけない、他はダメ"って思っている人は多いけど、私はそうは思わないわ。
-個人的にすごく共感します。何か人間を超越した力の存在は信じていますけど、それが宗教の形を取る必要はないということですよね。
そう! まさにそういうことよ。私も同じように考えているわ。
-今回のアルバムは人間のいろんな面でなく、あなた個人のいろんな面も表れている気がします。あなたのヴォーカルは今作でも非常にパワフルではあるのですが、これまでの圧倒的な"メタル・クイーン"というようなイメージとは違う、もっと人間的でしなやかなひとりの女性としての強さが感じられる気がしました。今作の歌唱法に関しては、特に意識している部分はありますか?
力強さを表現するのに、ずっとスクリームしている必要はないと思うしね。シンプルで静かなメロディを歌うことで、その歌詞が何よりもパワフルなものを表現できるときもあるから。人生で今の自分に起こっていることにナチュラルに寄り添える歌い方をしているだけなの。もし私が怒り狂っていて攻撃的なムードだったら、たぶんガンガンスクリームしていると思うわ(笑)。今はもっとシリアスでスピリチュアルな境地にいるしね。自分の歌い方がどうあるべきかについては、あまりスピリチュアルな制限を設けないようにしているの。
-ということは、シャウトがいつもより少ないとか、そういうのは意識的にやったものではないということでしょうか。
そうね。自分の脆い内側を見つめて歌った結果こうなったという感じ。
-その曲の雰囲気に没頭するような。
そういうことね。
-でも、静かな歌い方のときもパワーを感じる歌い方ですよね。
ありがとう! 私もそう思うの。まぁ、何をもってパワフルかというのはみんなそれぞれの解釈の仕方があると思うけど、私がスクリームできるのはみんな知っているからね。やろうと思えば唸り声だって出せることも知っている。でも、ずっとそうしている必要はないわ。
-そのツアーでは、すでに数曲の新曲が披露されていますが、ファンの反応はいかがでしたか?
みんなとても気に入ってくれているわ。最初はまだ曲がリリースされていなかったにもかかわらずプレイしていたんだけど、みんな新しい曲が聴けてエキサイトしてくれたわ。今はアルバムが出たから、一緒に歌ってくれるようになったし、ものすごい勢いで新作に追いついてくれているのよ。
-まだリリースしてから1週間も経っていないのに(※取材日は7月26日)。
そうなのよ。昨夜もみんな新曲の歌詞を全部覚えていて、一緒に歌ってくれたわ。まだ2日しか経っていないのによ? どうしてそんなことが可能なのかわからないけど......(笑)。
-もっとあなたのスクリーミングが聴きたい、なんて言われたりはしました(笑)?
いいえ、そういう意見はまだないわ。だいたいライヴではすごくスクリームするからね(笑)。ライヴはジェットコースターみたいな流れにするのが好きなの。美しくソフトな曲もあれば怒れる曲もあって、悲しいものもあれば、この世のものとは思えないくらい優美なものもあったりして、みんなを旅に連れ出すような感じにするのが好き。ライヴではそういう状態を感じてもらえていると思っているわ。
-そのライヴですが、ヴィジュアル的にも緩急がある感じなのでしょうか。前回来日のときはほとんど曲ごとに衣装を替えていたと聞きました。ライヴでは毎回、ステージでのパフォーマンスだけでなく、あなたのゴージャスなファッションも注目を集めていますね。今作を携えたツアーでは作品の雰囲気に合わせた儀式っぽいファッションなど、いつもと違うスタイルになったりするのでしょうか?
そうね、今までよりオーガニックな感じなんじゃないかしら。裸足のことも多いしね。ワイルドな女性が森の中をふわふわした布をまとって駆けている感じとか。ヴィジュアル的にもいろいろ変化をつけるのが好きなの。さすがに1曲ごとではないけど、ヴィジュアル面でもスペシャルな体験をしてもらいたいしね。音をミュートして見たとしても、美しく力強いものであってほしいと思って。そこに音楽がプラスされたら、両方のコンビネーションがさらにスペシャルなものにさせるの。
-あなたの音楽はミュートするには惜しすぎますから、ミュートはしませんよ(笑)。
(笑)