INTERVIEW
Rie a.k.a. Suzaku
2017.05.24UPDATE
2017年06月号掲載
Interviewer:荒金 良介
-いままでの中でターニング・ポイントになった出来事は?
インスト作品もそうだけど、山本恭司さんとセッションさせてもらったことが大きいです。目の前で神のプレイを見ると、やばいなと。アームの使い方が上手くて、ギターの音色に鳥肌が立っちゃって。あの日からギターの歌わせ方が変わりました。あと、Steve Lukatherもアームを使うのが上手くて好きですね。アームを研究するようになってからは、細かな表現をつけたり、ほかにボリューム調整やピッキングの位置とかに気を遣うようになりました。こないだUli Jon Rothのライヴも観て、ビックリしちゃって。FAIR WARNINGのHelge Engelkeもスカイ・ギターを使ってるけど、音の深みが全然違うなって。
-Rieさんは現場にもよく足を運ぶタイプなんですね。
専門学校の先生に"人のライヴを観ないで、どうやって自分が良い音を出すんだ?"って、なるべく自分に投資しなさいと言われたことが大きくて。だから、観に行けるときは行くようにしてます。Gary Mooreも観に行けばよかったなと。
-プレイヤーとリスナー目線の両方を持ってますよね。
そうなんですよ。ソロは自分で曲を書かなきゃいけないから、いろんなものを吸収しないと、マンネリ化するし。私はテクノやゲーム音楽、アニメのサントラも聴くし、菅野よう子さんも大ファンで......音楽の話をすると、止まらないんです。
-はははは。このへんで音源の話に移りたいんですが、今作はどんな作風にしようと?
前作が爽やかだったから、今回はメタルをやろうと思ったんです。MY FIRST STORY、NEW BREED、DEAD BY APRILとか、シャウトとエモいメロディが入ってるバンドも好きで、そういう曲を書きたいけど、それを歌えるヴォーカルがなかなかいなくて。そしたら青木コータ君の名前が出てきて、快進のICHIGEKIが活動休止するとは思わなかったけど......過去に1曲コラボしたことがあったので、今回は全曲でコラボしましょうと。
-いわゆるラウド系と言われるサウンドに挑戦したかった?
そうですね、若い世代はそのへんの音楽を聴いてるし、そっち系のファンを取り込みたくて。いろんなファン層を取り込みながら、やっていくのがいいのかなと。今回は全部7弦ギターの半音下げチューニングで......NEVERMOREのJeff Loomisがそのチューニングなんです(笑)。
-ただ、"この人は何が本当にやりたいんだろ?"と思われる心配はないですか?
インストから入ったファンもメタル・アルバムを聴いて、"いいですね!"と言ってくれますからね。一貫していいメロディがあれば、Rie節だねと言われるので。お客さんもそこまで気にしてない人が多いし、どちらのライヴにも来てくれます。
-今作を聴いても、Rie節に貫かれてますもんね。
どんなにヘヴィになろうと、自分が好きなコード進行やメロディは出てますからね。エモいというか、キュンとする感じもあるし。
-制作はどういうふうに進めていきました?
デモの段階で完成バージョンを作るんですよ。宅録で全部作るので、ベース、ドラムだけ生に切り替えて、ヴォーカル録りして終わりです。今回は曲を書いた時期が結構違うんですよ。「野獣Girl」(Track.3)は1年前からある曲だし......私は政治にも興味があって、それでイラッとして書いた曲が多いですね。「Free For Me」(Track.1)は選挙の時期に書いた曲なんですよ(笑)。結構、メッセージ性の強い作品になったと思います。だから、コータ君に歌詞を書いてもらうときにも全曲テーマを伝えて、書いてもらいました。「Free For Me」は選挙とか見てても出来レースなのかな? と思ったり、本当の自由なんてあるのかなと。で、「Evil Brain」(Track.2)は人工知能について書いた曲で、人間はいらなくなるというか、本当にバーチャルな世界が来るのかなって。人間の心の葛藤とAIについて書きたかったんです。ギター・ソロも最初は機械的で、そのあとにエモーショナルに切り替えて表現しました。
-今作の中でもブルージーなギター・ソロで良かったです。そして、「野獣Girl」はエレクトロ色が強い曲ですね。
これはプロレスのコンペ用に書いていた曲で、完全に入場曲をイメージして書いたんですよ。曲調はBOOM BOOM SATELLITESみたいな雰囲気を意識しました。それで最後の「Don't Hide Your Face」はCHILDREN OF BODOMとかメロデス系も好きなので、そういうテイストにしつつ、ギター・ソロは元RAGEのVictor Smolskiのギターを意識しました。彼も大好きなギタリストですね。
-1曲の中でヘヴィでメロディアス、生演奏とエレクトロなど、ギャップの激しい音像も特徴的ですよね?
陰と陽というか、それは考えてますね。自分のギターに関しては、歌や歌詞で表現できない内面を表現しているつもりなんですよ。曲のためにギターを弾くというイメージですね。ラウド系はギター・ソロがあまりないけど、このギター・ソロがあるからこの曲はいいんだよ、というアプローチを取りたくて。あと、今作に限らず、アルバム1枚通して聴ける作品にしようと。全曲それぞれに違いや個性があって、しかも全曲良い曲であること。それもこだわりですね。