INTERVIEW
Versailles
2017.02.03UPDATE
2017年02月号掲載
Member:KAMIJO(Vo) HIZAKI(Gt) TERU(Gt) MASASHI(Ba) YUKI(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
激烈にして流麗でもあるメタル然とした音像を放つ一方、その徹底した美意識を貫くことで孤高の存在となったのが、今年で結成10周年を迎えるVersaillesだ。紆余曲折あったしばしの活動休止期間を経ながらも、2015年末に奇跡の復活を遂げてからはただひたすらに邁進し続けてきた結果、彼らは来たる2月14日に初の日本武道館公演"Chateau de Versailles"を開催することとなった。なお、この当日には4年ぶりのアルバム『Lineage ~薔薇の末裔~』を来場者全員に無料配布するというから、なんとも素晴らしいではないか......! タダで配ってしまうにはあまりにもったいない仕上がりの、この入魂の1枚について彼らはかく語りき。
これは、まさに今のVersaillesだからできることなんですよ。バンドとしての未来、"これから"があるからこそできること
-あまりの太っ腹さに驚きます。Versaillesは来たる2月14日に自身初の日本武道館公演"Chateau de Versailles"を行うことになっていますが、なんとその当日にはアルバム『Lineage ~薔薇の末裔~』を、来場者全員に無料配布してしまうのだとか!
KAMIJO:これは、まさに今のVersaillesだからできることなんですよ。バンドとしての未来、"これから"があるからこそできることですね。今回の場合、この『Lineage ~薔薇の末裔~』は武道館に来てくださる方たちのみへの無料配布というかたちになりますから、普通に販売するような音源と比べたら、もしかすると人数的には限られた人たちにしか聴いてもらうことができないのかもしれない。でも、要は"また作ればいい"ということなわけですから。今の僕たちならば、また必ず作ることができる。それは自分たち自身でもよくわかっているし、そのことをファンの人たちに証明する意味でも、今回のアルバムはみなさんと直接会うことができる場所(=武道館)でプレゼントしたかったんです。
-武道館公演がちょうどバレンタインの日であることを考えても、これはVersaillesからのファンに対する強い愛情表現だと考えてよさそうですね。
KAMIJO:そうですね。それに、今年はVersaillesにとっての記念すべき10周年イヤーでもありますので。その幕開けを飾るという意味でも、ここでみなさんに感謝の気持ちを表したかったというところもありました。
-だとすると、Versaillesとしてはこのアルバム『Lineage ~薔薇の末裔~』を作っていくうえで、特にどんなことを重視していたのでしょうか?
KAMIJO:まず、何よりもこのアルバムを通してみなさんに伝えたかったことは、今のVersaillesはとてつもなく高いクオリティの楽曲を具現化できる、という事実です。メンバー全員が、とにかく良い曲を生み出したい! という一心でいましたね。
-なるほど。では、各パートの立場からも今作の制作に向けてはどんな心境でいたのか、ということをぜひうかがってみたいです。
HIZAKI:素直に、今の自分たちがやりたいことを詰め込んでいくようにしました。もちろん、時代の移り変わりというものはあるにせよ、この10年間という日々の中で決して周りに流されることなく、Versaillesとしてずっと貫いてきたものをこのアルバムにも色濃く反映させたかったんです。
YUKI:実は、このメンバーで改めて集まって音を出したときに、僕は良い意味での変化を感じたんですよ。おそらく、それぞれのメンバーがいったんVersaillesから離れていた時期にそれぞれで成長をしていたということなんでしょうね。そこは聴く人たちも少なからず期待をしてくれていると思うんです。"ただ単に、前と同じ感じだったらつまんないよな"って。でも、聴いてもらったらわかると思うんですけど、このアルバムの中には確実に新しい風が吹いているはずです。その実感を、自分自身でも手応えとして得られたレコーディングでした。客観的に見てカッコいい曲ばっかりのアルバムだし、僕が聴く側だったら"このバンド、好き!"って絶対になります(笑)。
MASASHI:Versaillesとしてはもちろんだし、個人的にも、このアルバムでは現時点での最大限をかたちにできましたね。だからこそ、武道館公演に来てくれる人たちにとっての良い記念になってくれると嬉しいです。この曲たちを聴くたびに、武道館での情景が後々まで頭の中に浮かんでくるような......それだけの強いインパクトがこのアルバムの中には詰まっているはずですから。まぁ、そこに来てくれた人たちしか聴けない作品というのは、普通に考えると少しもったいないですけど(笑)、自分たちにとっては"今度はこれ以上の作品を作らなければいけない"という、ひとつの明確な目標もできました。
TERU:活動休止をしていた時期を経て(※2012年12月~2015年12月まで活動を休止していた)、僕らは復活をしたわけですからね。Versaillesとしては4年ぶりのアルバムということもあるし、ファンのみなさんからすれば、まだ今の段階ではいろいろと不安に思うこともあるかもしれません。でも、この作品を聴いてもらえればそこは必ず安心してもらえると思います。Versaillesらしい、Versaillesにしか作れない世界を、しっかりとかたちにできました。
-一方で、楽曲作りを担っているKAMIJOさんとHIZAKIさんは、それぞれコンポーザーとしてはどのようなスタンスでいましたか。
KAMIJO:やはり、武道館のステージというものは意識していましたよ。というか、さらに厳密に言うと常に武道館に対して意識がいっている中で作っていた楽曲たちだったので、必然的にそこに意識が向いてしまっていたんだと思います。
HIZAKI:そこは僕の場合だとまったく逆で、とりあえず頭を空っぽにして自分の中から湧き出てくるものを片っ端から曲にしていった感じでした。ただ、アレンジの段階では武道館でやることを意識したところもありましたね。
-アレンジの延長線上にあるサウンドメイクの部分に関しては、この1枚を通じてどんなことを留意されていったのでしょう。
TERU:Versaillesのサウンドは、もとからメタルな部分とシンフォニックな部分が混在しているものではあったんですけどね。ただ、ここまでにいろいろな経験を積んできたことによって、今回はそこの両立がよりすんなりといくようになりました。
HIZAKI:あと、今になって比べてみるとこれまでのVersaillesは、メンバー同士が個人単位でぶつかり合いながら音を出していたところがわりとあったんですよ。もちろん、そういうスタイルを否定する気はまったくないし、これからも曲によってはそういうことをやっていたいと思っているんですけど、今回のアルバムに関してはメンバー同士で真正面からぶつかり合うのではなく、全員が歌詞の内容やその曲に込められた意志をより理解しながら、同じ方向に向かっていけたんじゃないかと思います。そういう意味では、音的にもよりバンド感が強くなったと言えるでしょう。
-聴いたときの音圧もありますし、ヘヴィな部分は思い切りヘヴィなのですが、それでいて今作は全体像として非常に洗練されている印象が強いです。
KAMIJO:今回、音の積み上げ方はすごくよく考えました。主旋律に対してセブンスはあまり使わず、できる限りダイアトニックできれいなハーモニーを作っていくようにしたんですよ。コーラスの重ね方にしても、シンセ関係の入れ方にしても、そこは基本的に注意していきましたね。それと、以前は自分の作る楽曲においてはなるべく鍵盤系もアンティークな楽器を使うようにしていたんですが、今回はアナログ・シンセの音をふんだんに取り入れたりもしています。
-リズム隊のおふたりは、このアルバムの音を構築していくうえで土台をどのように固めていくことにしたのでしょうか。
YUKI:ベーシックな部分は当然デモに対して忠実にやっていったんですけど、細かいところでは自分からも"こんな感じはどうかな?"っていう提案なんかもしながら作っていきましたね。さっき、バンド感が増したという話が出ていましたけど、そこはアンサンブルを組んでいくうえで以前よりも細かいニュアンスを気にするようになった効果が大きい気がします。個人的には、曲の中で白玉(※伸ばす音符)のフレーズがちょっと続くとその間についバーッと音を入れたくなる"僻"を持ってはいるんですが(笑)、今回それは極力控えるようにしていました。
MASASHI:逆に、音数を減らすことによってひとつずつの音の重みは強調される、という場合も多々ありますからね。個々の曲の持っている色をより引き出すにはどうしたらいいか、作曲者はどんな意図を持っているのか。今回のアルバムはそういう空気を読みながら、音を作っていった感じでした。