－そのときそのときの精神状態がソングライティングにも音にも出るバンドなんですね。

岡田：だいぶ感情に左右されるバンドだと思います。「A place in the sun」（Track.6）は、ずっと陰にいて、スポットライトも当たらないけれど、いつかはきっと日のあたる場所に行きたいなー......という願望を歌った曲のような気がします。この曲をYouTubeで聴いてくれた人もいいと言ってくれていて、やっぱりそういうものを書くと伝わるのかなって。ライヴとかも誰かひとりがテンション低いと、みんなテンション低くなっちゃったり......自分の歌がだめだと、みんなをだめな方向に引っ張っちゃうこともあって。

－たしかに、4人がそれぞれ好き勝手なことをやっているというのではなく、4人が歌をめがけてぎゅっとひとつになったサウンドだと思います。LASTGASPは願望や苦悩を歌ったものが多いですが、4人が一丸となったサウンドが、成功を掴もうとしているという歌詞の説得性を増させてるとも思いますし。

岡田：僕らはそういうやり方しかできないんですよね。特化してできることは、今はそれだと思うので。そういうものをレコーディングでも出せたのは良かったなと思います。実際のところ、歌詞だけ見るとものすごくネガティヴなことを歌っていて"もうだめだよ！"みたいなことばっかり言っているとと思うんですけど......それを明るい曲調でやるのが、俺にとってひとつのテーマにもなっていて。それは言わなくても、なんとなくメンバーにも伝わっている気がしてるので、それが"らしさ""色"になってるのかな......という気がしてます。

－Track.8「Continue」は特にそうですね。

岡田：めちゃくちゃネガティヴな別れの曲なんですけど（笑）、曲調は優しいというか。そういうところも意外とみんな考えてくれてる気がしますね。歌の邪魔にならないように、歌を立たせようとはしてくれているので。

－岡田さんは歌詞だけではなく、メロディ・メイカーとしてのポリシーもありそうですね。

岡田：どうなんですかね？ メロディから曲を作るタイプなので、メロディができないと何もできないんです。影響を受けたアーティストは絶対的にロック･バンドなんですけど、それ以前に音楽を好きになったきっかけは、いわゆるJ-POPや歌ものがルーツなので。自分が歌いたいと思うメロディを作るので、そういうところからそう感じられるのかもしれませんね。

高山：聴いててすごく曲に入りやすいメロディですよね。

小野田＆成瀬：入りやすい、入りやすい。

岡田：わ、メンバーに褒められた（笑）。

－メロディや歌がど真ん中にくる感じは、少年漫画の主人公が自分の目指すところに向かっていく感じとリンクするので、そういう意味でも弱虫ペダルのタイアップはよく合致しているなと思います。

岡田：弱虫ペダルの2曲は"このメロディに対してこの言葉"というのをしっかり考えて作ったんです。でも今までの曲はどちらかというとパズルみたいで"このメロディの語数に合う言葉を探す""頭の母音と終わりの母音だけ決まってるから、そこに合う言葉をはめる"みたいに、歌いやすい言葉を入れていく感じだったんですけど、今回は弱虫ペダルきっかけで知ってくれた人も聴いてくれるだろうということで、メッセージ性も大事にしてるのかな。"このメロディには強い言葉を使おう"とか、そういうことはすごく考えました。そういうことを意識して考えるようになったのは最近ですね。

－ベスト・アルバム的なニュアンスのあるアルバムとはいえ、やはり新曲ではそういう挑戦を突き詰めることができていますし、今後も楽しみですね。今回はタイトなスケジュールの中での制作を乗り越えることもできたのですから。

岡田：やっぱりそこはシンプルに"できた！"とひとつ大きな自信になりましたね。僕たちはメッセンジャーというか伝える人間、発信する側だと思うので、ひとつ何かに自信を持ってやることは大事な武器だと思うんです。今回それがもらえたのは本当に良かったと思います。

－今年の9月にはこのアルバム・タイトルを冠した自主企画野外フェスが愛知県の常滑りんくうビーチで開催されますしね。

岡田：りんくうビーチは本当に海に面してて、飛行場がすぐそばにあるから、飛行機がすぐ近くを飛んでいるようなところで、遠くには高速道路が海の上を通っていて......本当に綺麗ですごく広いところです。開放感があって。

小野田：全然構想も立ってなかったんですけど、ようやく最近"こんなステージ"くらいのイメージができてきて、具体的になってきてます。

岡田：僕らほとんどフェスとかに出たことがないんですよ。このメンバーになって1回もない。ことごとく誘ってもらえないんですよね。だから"誘ってもらえないなら自分でやってやろう！"って。最初は小さかったとしても、少しずつ大きくして毎年やっていけるような、仲間がどんどん集まってくるようなフェスをやりたいなと思ったのがきっかけなんです。今回1回目ということで、僕らの仲のいいバンドや大好きな人たちを呼んで。お客さんももちろんなんですけど、俺らを好きな人だけでなく出演するバンドが好きな人が集まって......いずれは"the Last resort"というフェス自体を好きになって、愛してもらえたらいいなという気持ちです。成功させようという気しかないし、自分たちのことながらすごく楽しみにしています。

－その前に初のワンマン・ツアーもありますし。

岡田：そうなんです。初めてだらけで。

小野田：初のフル・アルバムだしね。

岡田：初の書き下ろし、初のフル・アルバム、初のワンマン・ツアー、初の自主企画フェス......今まで何をしてたのかと（笑）！

全員：はははは！

岡田：すべてタイミングかなと思います。それにこのタイミングじゃなきゃだめだった気がするんですよね。去年フル・アルバムを出してても、去年ワンマンでツアーをしてもきっとだめだったと思うので。今回"ここしかない！"というタイミングでアルバムを出せると思うので、本当にたくさんの人に聴いてもらえたらなと思いますね。