INTERVIEW
IVORYLINE
2008.05.22UPDATE
Member:Jeremy(Vo.)
Interviewer:MAY-E
-また、シングル曲がアルバムの後半の10曲目に収録されているのは珍しいですね。それだけ秀逸な曲が揃っているという証でもあると思うのですが、トラックリストを決めるのに時間がかかったり、メンバー間でもめたりしなかったですか?
曲順はすんなりとは決まらなかったよ。メンバー各自が曲順のリストを持ちより、それを比較してみた。おもしろいことに、自分たちが作ったリストは全く使うことはなかった。アルバムをプロデュースしたアーロンとエンジニアのランディを信頼し、彼らに曲順決定の手助けをしてもらったんだ。彼らの判断に全幅の信頼を寄せているんだけど、2人の仕事ぶりには本当に驚くよ。結局ほんの少し手直ししただけで、彼らが考えた曲順でいくことになった。俺たちの間には何の問題もなかったよ。気のおけない間柄だし、あの曲順に満足していた。
-「Days End」「Bravery」などのエッジーな曲においても、滑らかで、艶やかな感触をきちんと残しているところからも、あなた方のセンスの良さが感じ取れます。音楽的なルーツを教えてください。
大御所のU2からインディーのMeWithoutYouまで、影響は様々だよ。それが"俺たちらしさ"を形成しているんじゃないかな。俺たち、まず曲を一緒に書いて、そこに各々のメンバーがインプットを加え、曲に仕上げていくんだ。4年間一緒にプレイしてきて、互いのソングライティングのスタイル、長所と短所を学べたところで、書きたい曲が書けるようになったのさ。
-アルバム・タイトルは「THERE CAME A LION(=ライオンが来た)」で、アルバムのアートワークに描かれているのもライオンですが、このライオンは何を象徴しているのでしょう?
"There Came A Lion"というタイトルは、アルバムを作っていた時の自分たちを表わしているんだ。お祈りの手引書を読んでいてたまたま見つけたフレーズで、やたらと印象に残ったんだ。読み進めていくうちに、自分たちの人生経験にピタリとはまるテーマだって思ったんだ。どんな内容かというと、誰もがその人生において幾多の"ライオン"と面と向かわなければならないというもので、それらの中には命を脅かすほど危険なものもある。でも大切なのは、それとどう戦い、各々の人格や人生に活かしていくかということだよ。欲望、ドラッグ、不安、そして死などは人間が常日頃格闘している"ライオン"の例だ。俺たちは、耐えることそして神様の恵みによって様々な労苦を克服することをしっかりと学んだ。このアルバムこそがその結実なんだよ。アルバムのアートワークはみんなが困難を経験したものの、最終的にはそれを克服したということを表わしている。注意して見ると、ジャケットに描かれている他の動物たちが何を表わしているのか、色々なヒントが見えてくると思うよ。
-IVORYLINE(IVORY=象牙)なのに、何故、象じゃなくてライオンなのですか?また、このバンド名の由来を教えてください。
IVORYLINEっていうバンド名は,Death Cab For Cutieの曲の1節にインスパイアされたものなんだ。Death Cab For Cutieのシンガーが、ある女の子の肌が連なっている様子を見たって言っていて、それがすごくクールなコンセプトだと思ってね。人は無限に連なる肌でできているってことがね。IVORYLINEって名はそうやってインスパイアされたんだ。でもその裏に何かメッセージが隠されているなんてことはないけどね。バンドを描写する名に相応しいというだけのこと。俺たちの名を耳にして象を思い浮かべるという人は他にもいるけど、別にかまわないよ。実はここ数年のツアーで使っていた折り畳み式のテーブルには、小象のマスコットを貼っていたしね。
-最近では、プログレッシヴな要素を取り入れ複雑な曲を作る若手のバンドが増えてきたので、これだけストレートなアプローチで、なおかつパンチ力のあるIVORYLINEのサウンドは、胸の真ん中にまっすぐ突き刺さってきます。あなた方のロックへの想いが、多分そのままエネルギーに変わってリスナーに伝わってくるのだと思うのだけど、音楽を通じて伝えていきたいメッセージは何でしょうか?
もし俺たちの音楽が、今君が言ったことを体現しているとすれば、自分たちは正しいことをしていると思う。それって正に俺たちがねらっていることだからね。俺たちは人々の魂と心にストレートに訴える熱くてピュアな音楽を作りたいと思っているんだ。音楽を通じて伝えたいメッセージはひとつだけじゃない。全ての歌詞は俺が強く感じ、実際に体験したことについて吐露したものだ。俺たちはとても信仰の厚い人間の集まりだし、互いに信仰を分かち合っているから、それが間違いなく曲作りに表れているよ。俺たち、真実と希望にあふれたポジティヴなメッセージを送るよう努めているんだよ。ややダークな歌詞もあるけど、人生の暗い部分もそのまま出さなきゃいけないと思うし、信仰に基づいて生き、神様を愛し、そして汝のように隣人を愛するよう導かれている俺たちの生き方と対照を成すんだ。
-近年のロック・シーン、特に「エモ」と呼ばれるシーンに何か思うことはありますか?
これまで俺たちがシーンで経験してきたことはポジティヴだといえる。アメリカのほぼ全土でプレイしてきたけれど、全米各地のローカル・シーンも大いに盛り上がっているね。明らかに今のシーンにはいいバンドがあふれているし。メディアの発達、特にインターネットのおかげで以前とは比較にならないほどバンドが露出する機会が増えて、今のシーンには成功を目論む新たなバンドがひしめき合っている。purevolumeやmyspaceなどのオンライン・ミュージック・サイトがなかったら決して聞くことができなかったバンドが、人々の耳に届くようになっている。実に刺激的な時代だと思う。ただ、ダウンロードやデジタル・ミュージックのテクノロジーの発展がCD製品を壊滅させるなんてことがないよう願っているよ。願わくば、高音質と耐久性に優れた新たな媒体が発明され、市場に出回り、再び消費者の購買欲を刺激するようになってほしいね。
"エモ"のブームに関してだけど、俺自身は衰退してしまったと思うね。この言葉は乱用されてすっかり意味のないものになってしまった。汚名がついて回るようになったし、誰もその名で呼ばれたくないジャンルになってしまった。本来は俺たちのように、エモーションに満ちた音楽という意味だったのに。エモーションに欠ける音楽は実に味気ないし退屈だ。そういった観点からいえば音楽におけるエモーションは不可欠だと思うけど、"エモ"ということであれば全然ダメだな。