FEATURE
MAGNOLIA PARK
2025.04.10UPDATE
Writer : 山本 真由
重厚感のあるサウンド、ドラマチックな展開で描く、SFダーク・ファンタジー"Nocturne Nexus"の世界観
近年のポップ・パンク・リヴァイヴァルの盛り上がりは、もちろんBLINK-182やAvril Lavigne他、かつてのブームを支えたアーティストの根強い人気と再認識によるところもあるが、やはり、若いファンを引っ張っていってくれる新たなバンドが育っていることも大きいだろう。このMAGNOLIA PARKもそんな新星の1つだ。西海岸パンク・ロックの総本山、Epitaph Recordsと契約し、今や同レーベルの影響力を支えるフレッシュな才能として、期待を背負う存在にもなっている。
そんな今勢いに乗っている彼等だが、そのニュー・アルバム『Vamp』もかなり話題性のあるものになった。今作は、"オーロラ X1"という半人間/半サイボーグの主人公が、レジスタンスの仲間たちと共に強大な敵に立ち向かう......という、SFダーク・ファンタジーのオリジナル・ストーリーをコンセプトにした壮大な作品だ。なぜ、彼等はそんなチャレンジングな作品を手掛けることになったのか。そして、その内容はどういったものになっているのか。新作について紹介する前に、まずは彼等の活動遍歴を少し振り返ってみよう。
MAGNOLIA PARK は2018年に結成、いくつかのシングルを発表したのち、2020年には1st EP『Vacant』をリリース。その後、世界的なパンデミックにより予定されていたツアーの中止を余儀なくされるものの、コンスタントに楽曲を発表し続け、SNSを中心に人気を獲得していった。初期の作品から、フロントマン Joshua Robertsの洗練された歌声には定評があり、キャッチーなポップ・パンクというだけでなく、深みを持ったメロディやジャンルレスな要素でもその個性を発揮。
SLEEPING WITH SIRENSのKellin Quinn(Vo)をフィーチャーした、シングル曲「Love Me」(2020年)が話題となる等、ポップ・パンク・シーンにとらわれずエモ、ポップ・ロック、ヒップホップ他幅広いジャンルからゲストを招き、柔軟性のある楽曲で多くのファンを魅了した。MAGNOLIA PARK は、いわゆるBLINK-182リスペクト的なイメージがあり、それは純粋な青春ポップ・パンクというだけでなく、ヒップホップ等のカルチャーを取り入れた姿勢も含めたブリンク(BLINK-182)っぽさが、根底にあったように思う。
Magnolia Park - Love Me ft. Kellin Quinn
そして、そのジャンルにとらわれない表現というスタンスはさらに進化し、前作『Halloween Mixtape II』(2023年)では、シャウト・ヴォーカルを用いたヘヴィな楽曲へと結び付く。特に、ラップを入れつつダークな雰囲気を出したラウドロック「Do Or Die」や「Animal」は、もはやブリンクからはかけ離れ、FALLING IN REVERSEのようにアグレッシヴで、ギターもまるで別人のようにダウン・チューニングされたゴリゴリのサウンドに。こういったスタイルの楽曲のライヴでの盛り上がりを見て、バンドはヘヴィな楽曲に手応えを感じたのか、新作の方向性もそちらへシフトしていくことになったようだ。
Magnolia Park & Ethan Ross - "Do Or Die"
Magnolia Park, PLVTINUM & Ethan Ross - "Animal"
ニュー・アルバム『Vamp』は、先述の通りコンセプト・アルバムとなっており、全体を通して一貫した世界観を描いていて、ヘヴィでダークな"Nocturne Nexus"の物語に合わせたアルバム構成となっている。新機軸のポストハードコア的な重厚でダークな雰囲気のある楽曲が中心となるが、彼等の持ち味である親しみやすいメロディ・ラインや、エモーショナルなアプローチも随所に盛り込まれ、従来のファンも納得の、バランスの良い仕上がりだ。さらにエレクトリック・サウンドも取り入れた豊かなアレンジ、アッパーなリズム、ブレイクダウンと緩急を付けた展開もドラマチック。楽曲個々の仕上がりもさることながら、アルバム全体としての完成度というか、満足度がとても高い。
Magnolia Park - "SHADOW TALK"
アルバムのコンセプトとなっている"Nocturne Nexus"のストーリーは、彼等の公式サイトで公開されているので、そちらも併せてぜひチェックしてほしい。キャラクター・デザインも魅力的だし、設定も作り込まれているので、コミック化やアニメ化したらいいのにと思うけれど、それはアルバムを聴きながら脳内補完することにしよう。
ニュー・アルバムで、これまで以上の進化と潜在能力を発揮したMAGNOLIA PARK。今作をきっかけに、ファン層が広がりそうな予感と同時に、ここから新たなトレンドが生まれていきそうな予感もする。かつてのポップ・パンク・ムーヴメントがそうであったように、ジャンルが細分化されエモーショナル且つヘヴィなサウンドが隆盛していく流れは、時代が巡る必然なのかもしれない。そんななかでもMAGNOLIA PARKに関しては、これが終着点という気がしないのだ。まだまだ何か新たな表現、挑戦の可能性を秘めている気がする。シーンを牽引するアーティストとして、飛躍を続けるMAGNOLIA PARKの今後にも注目していきたい。
MAGNOLIA PARK
NEW ALBUM
『Vamp』
2025.4.11 ON SALE!!
[Epitaph Records]
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