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FEATURE

ASINHELL

2023.12.19UPDATE

デンマークが誇る国民的ロック・バンド VOLBEATのフロントマン、Michael Poulsen率いるデス・メタル・トリオが衝撃のデビュー!

Writer : 井上 光一

古き良きデス・メタルへの限りない愛情とリスペクトが生み出した、極上のエクストリーム・メタル


オーセンティックなヘヴィ・メタルやハード・ロックにロカビリーの要素を取り入れた独自の音楽性で頭角を現し、今や本国デンマークでの国民的な人気はもちろん、ヨーロッパやアメリカなど世界的な成功をも成し遂げたVOLBEAT。現時点での最新作『Servant Of The Mind』(2021年リリースのアルバム)も本国でのチャート1位をはじめ各国のチャートで軒並み上位にランクイン、その人気の高さを改めて証明してみせたVOLBEATだが、唯一のオリジナル・メンバーであり、フロントマンとしてバンドを牽引し続けるMichael Poulsen(Vo/Gt)が2023年、新たなバンドを始動させた。その名もASINHELL。

すでに海外では発売済みのデビュー・アルバムとなる『Impii Hora』を"VOLBEATのフロントマンの別プロジェクト"として聴いて、プリミティヴなデス・メタルを基調とした激音が飛び出してきて驚いたという人もいるかもしれない。実際に内容に触れる前に、そもそもMichaelの音楽キャリアはデス・メタル・バンドから始まったということには触れておきたい。MichaelがDOMINUSというデス・メタル・バンドを始動させた当時はなんと16~17歳だったというのも驚きだが、特に初期の音源はオールドスクールなデス・メタルを鳴らしており、VOLBEATの面影すら感じない音は事情を知らない人が聴いたら衝撃を受けるだろう。そんな彼らもキャリアを重ねるごとに徐々に音楽性を変化させ、VOLBEATというバンド名の由来となったアルバム『Vol.Beat』(1997年)では90年代らしいグルーヴ・メタルへと傾倒しているのが今となっては微笑ましく、興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。

閑話休題。つまりMichaelのルーツにはデス・メタルがあり、30年近い時を経て彼が再び自身のルーツと向き合ったのがASINHELLというバンドなのだと言えよう。

興味深いことに、Michaelはギターと作曲に専念して他のヴォーカリストを迎え入れている。DOMINUS時代に強烈なグロウルを駆使していたMichaelだが、ASINHELLを始動させるにあたって、DOMINUSとの差別化という意図もあり、最初から別のヴォーカリストを起用するつもりだったようだ。そのヴォーカリストは伝説的なジャーマン・デス・メタル・バンドのMORGOTHでヴォーカルとベースを務めていたMarc Grewe。ドラマーにはデンマークの重鎮 RAUNCHYの結成メンバーであるMorten Toft Hansenが参加しており、プロデューサーとマスタリングを務めたJacob Hansenがベースのレコーディングを担当している。

MichaelはASINHELLについてBOLT THROWERやENTOMBEDにAUTOPSY、GRAVEといったバンドの名前を影響源に挙げているが、その時点で彼の本気具合が窺えるし、内容も保証されたようなものだと感じる人もきっといるのではないか。重苦しいグルーヴと疾走するブルータリティが容赦なく迫りくるTrack.1「Fall Of The Loyal Warrior」を皮切りに、Track.2「Inner Sancticide」やTrack.3「Island Of Dead Men」あたりに顕著なスウェーデン産のオールドスクールなデス・メタル・スタイルを基調としつつも、前述したように様々な先駆者たちへの憧れが随所に感じ取れる、古き良きデス・メタルへの限りない愛情とリスペクトから生み出された本作は、まさに極上のエクストリーム・メタル作品だ。Michaelのシンプルながら殺傷力高めなリフや時折見せるメロディックなソロを軸として、Marcの暴虐極まりない生々しいシャウト、Mortenによる超重量級でいて緩急自在のヘヴィ・グルーヴを生み出すドラムスによる鉄壁のバンド・アンサンブルは、楽曲の世界観に完璧にマッチしている。Marcは作詞も担当しているが、Marcの友人のFrank Albersという心理学者(デス・メタル・ファン!)に協力を仰いだことで、社会への痛烈なメッセージを含みながらも、時にホラー映画的であったりシリアル・キラーについて言及していたり、ダークでアイロニック且つ猟奇的な世界観を描くことで、ラテン語で"邪悪な時間"という意味を持つタイトルを冠した本作独特の雰囲気を作り上げていることも大きな特徴であろう。

Asinhell - Fall of the Loyal Warrior (OFFICIAL VIDEO)


Asinhell - Island of Dead Men (LYRIC VIDEO)


言うまでもなく、本作はVOLBEATのようにスタジアムが似合うシンガロング必至のメロディや広義の意味でのロック・ファン向けの音には見向きもせず、徹底的に凶悪で破壊力満点のサウンドで構成されているのだが、あえて言えばキャッチーと表現したいフックも満載であり、比較的聴きやすいアルバムということには言及しておきたい。ドラマチックな楽曲展開が印象的なTrack.5「The Ultimate Sin」を聴けばわかるように、80年代後半から90年代前半のデス・メタルを単に焼き直すのではなく、あくまで2020年代の音として鳴っているのはMichaelの優れたソングライティング・センスの賜物であろう。気の置けない友人たちとの演奏を楽しみつつ、Michaelによる本気のデス・メタル愛が形となった本作は、ぜひ多くのヘヴィ・ミュージック・ファンに届いてほしい。



▼リリース情報
ASINHELL
NEW ALBUM
『Impii Hora』

SICX-30189/¥2,640(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV
[Sony Music Japan International]
2023.12.20 ON SALE!!

1. Fall Of The Loyal Warrior
2. Inner Sancticide
3. Island Of Dead Men
4. Trophies
5. The Ultimate Sin
6. Wolfpack Laws
7. Desert Of Doom
8. Pyromantic Scryer
9. Impii Hora
10. Føj For Helvede

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