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FEATURE

十五少女

2022.08.10UPDATE

2022年08月号掲載

2020年代パンクの現在地を投影しているのは誰か? 次世代/仮想少女が奏でるポスト・パンク幕開け前夜

ライター:小椋 シゲコ

十五少女は、次なる"今"の到来を予感させてくれるアーティストだ。

一説によると、音楽の流行は四半世紀周期と言われている。今から約25年前に世界を席巻していたのはポップ・パンクだった。そんな90年代パンクのリヴァイヴァルを奏でるMACHINE GUN KELLYやYUNGBLUDなどが、確かに今、次世代のスターとして注目を浴びている。

約5年刻みで新たな(ポスト)シーンが出現するというのも音楽の定説だ。パンクのあとにポスト・パンクが生まれると、それはメロディック・ハードコアや前述のポップ・パンク誕生の原動力となった。そのまた延長線上に(日本ではラウドに分類される)ポスト・ハードコアが生まれた。

もう少し詳しく書くと、70年代後半にニューヨークやロンドンでオリジナル・パンクが生まれ、そのスピリットやスタイルを引き継ぐ形でハードコアやニュー・ウェーヴなど、80年代を象徴するポスト・パンクが形成されていった。90年代に入ると、さらにそのポスト(次)に位置するオルタナやグランジが台頭。SONIC YOUTHやNIRVANAを短絡的にパンクと分類すべきではないが、パンク史で彼らに触れないのも違う。90年代の後半からはGREEN DAYの躍進を起点としたポップ・パンクの時代で、世界中のキッズがその熱狂に身を投じた。二十一世紀に入ってもその熱が醒めることはなく、日本ではラウドと称される、エモや次世代メタルまでをも内包した広義なミクスチャー文化が形成されて現在に至る。

もちろん、日本国内でも各時代のパンクを象徴するバンドが生まれた。80年代にはTHE BLUE HEARTSが、90年代にはHi-STANDARDが、00年代には青春パンク系の猛者たちが活躍し、2010年代からはラウド勢が隆盛を誇った(ちなみに、十五少女はラウドの先駆者、FACTなどを輩出したレーベル"maximum10"からリリースされている)。

それでは、現在......脈々と紡がれたこの国のパンクの系譜を、誰が受け継いでいるのだろうか?

正直、2020年代のバンド・シーンを率いているのは、パンクの系譜にいる人々ではないように見える。例えば、現在のシーンの礎を築いたとも言えるSuchmosは、同じ90年代でもアシッド・ジャズの系譜にあったし、今をときめくバンドたちの多くもパンクあるいはラウド直系とは言い難い。

パンクの始祖のひとりであるJohnny Rotten(SEX PISTOLS/Vo)の言葉を借りれば、"Punk rock is dead"なのか? ......そんなことはないはずだ。


少し目線を変えてみると、答えは明白だ。世界で最も売れた日本のメタル・バンドはラウドの系譜を継いだBABYMETALに違いないし、楽器を持たずともBiSHは紛うことなきパンク・バンドだ。PassCodeは、エレクトロ+スクリーモの正当な後継者の一翼として認知されている。

つまり、今の時代、グループの形態呼び名はバンドでもアイドルでもなんでもいいのだ。パンクとは、音楽とメッセージを指す言葉であって、その形は問われていない。リスナーは、ファッション(流行や形状)ではなく、純粋に音で判断している。

十五少女の最新EP『ASTRONOTES』は、完全にパンク・ロックの系譜上にあり、いてもたってもいられなくなる青さとエモさに満ちている。パンクスという人種が演奏側だけでなくオーディエンスの呼称にもなっている理由は、それが持つ衝動性がミュージシャンだけでなくリスナーにも乗り移り、行動を起こさせる力を持っているからだ。


十 五 少 女(15 Voices)/// Eureka 」Music Video


十 五 少 女(15 Voices)/// Alien 」Music Video


十五少女からは、一貫してアナーキー(反体制的)やユース(青春)といったパンクスの矜持を感じる。こと『ASTRONOTES』はその部分を前面に押し出した作品に仕上がっている。先ほども書いた通りパンクに形は問われない。そのスタイルが、とうとうバーチャル・アイドルという世界線にも波及したと考えるべきだろう。

講談社からは彼女たちを主人公にした小説が発表され、自らもジュブナイル(少年少女向けのエモい小説や映画)を標榜する十五少女は、おそらくバーチャル・アイドルという羊の皮を被ったポスト青春パンクの孤狼だ。そして、その音像はラウドのひと言に尽きる。ミックスにはSHADOWS、HEY-SMITH、My Hair is Badなどを手掛ける永田 進を、マスタリングには、GREEN DAYやONE OK ROCKなどを手掛けてきた世界最高峰のエンジニア、Ted Jensenを迎え、パンク/ラウド勢には垂涎の激情溢れる見事な仕上がりとなっている。

講談社による十五少女/表紙ビジュアル+前日譚小説ページはこちら

全曲の作/プロデュースを務めたのは新進気鋭のロック系ボカロPであるichica。6曲入りのEPというタイムラインに、退廃的で感傷的な現代らしいエモーションをしっかりと詰め込んだパンク・ロック・アンセムが並んだ。"ライヴハウスで多くの拳が掲げられるのが目に浮かぶけど、バーチャルだしな......"なんて思っていたら、どうやらこの秋から無料のオンライン・ライヴが始まるらしく、バーチャル・アイドルならではの今っぽい取り組みは、それはそれで楽しみだ。

あえて"今っぽい"という表現を使ったのは、彼女たちがメタバースを活用すると明言しているからで、彼女たちのSNSで随時発表されている(ライヴ会場にもなる)息を呑むような仮想空間のリーク画像は、もうひとつのパンク・シーンへの訴求に成功している。


十 五 少 女(15 Voices)/// 子 供 都 市 」Teaser Movie


バーチャル・アイドルの皮を被った"十五少女"は、ふたつのパンクで、次なる"今"の到来を告げている


現在、より顕著に日本の音楽シーンを牽引するようになったインターネット・カルチャー。未曾有のパンデミックは、仮想現実がゲームのフィールドだけではなく、ライヴ会場としても機能することを人々に証明した。十五少女は、その最先端で尖りに尖った活躍を見せるクリエイターを起用することで、サイバーパンクという新たなシーンの旗手としても注目を集めている。

それは、80年代の映画"ブレード・ランナー"や漫画"AKIRA"に起源を持ち、シアン(水色)、パープル、ピンクのネオン光彩や異常に緻密なメカニック・デザインを用いて、ディストピアとしての近未来を描くヴィジュアル・シーンのロング・トレンドだ。大人気の海外ドラマ"ストレンジャー・シングス 未知の世界"などにも影響を与えている。奇しくも日本のラウド・シーンにおいても、エレクトロを取り入れたサウンドとの抜群の相性から、多くのMVでサイバーパンクの要素が採用されてきた。

十五少女はこちらの正当な継承者にもなりつつある。バーチャルな世界に生まれ落ちた生身を持たないアイドルは、歌声ひとつを武器に(十五少女の歌唱担当は未発表だが、その歌唱力と声質には多くの絶賛が寄せられている)、音楽面では現代におけるポスト・パンク、ヴィジュアル面ではサイバーパンクというふたつのパンクを提げ、新たな幕開けを告げるため着実にリアル・ワールドへと侵食し始めているのだ。


十 五 少 女(15 Voices)/// アッシュ 」Short Music Video


十 五 少 女(15 Voices)/// 春とレム 」Music Video


その一環として、十五少女では、現実世界のアーティストをフィーチャリングした"RE:SING'LE プロジェクト"なる企画も行っており、これまでに水槽、楠木ともりなどが参加している。最新シングル「八月三十二日」には、Spotify"RADAR: Early Noise 2022"に選出されるなど注目度/人気共に急上昇中の菅原 圭を迎えた別バージョンも存在する。


十 五 少 女(15 Voices)/// 八月三十二日 」Teaser Movie


十 五 少 女(15 Voices)/// 八月三十二日(葉月ケイの場合 / CV:菅原圭)」Teaser Movie

末筆になったが、いつの時代のパンクも、初めは世界から疎まれたという歴史を持っていることを忘れたくない。だからこそ一部の生き苦しい人々にはそれが光り輝いて見えるし、反体制的で不敵な存在として時代を切り拓いてこれたのも事実だ。

パンクにとって、バンドかアイドルかは重要ではない今の時代、リアルかバーチャルかというカテゴリも意味をなさなくなるだろう。十五少女とそのオーディエンスは、おそらくその境界線を溶かす次世代のパンクスなのだ。

だから、パンクやラウドを愛する方々には、敬意を込めて切にお伝えをしたい。十五少女は、聴いてから判断すべき新人アーティストだ。


▼リリース情報
十五少女
ニューEP
『ASTRONOTES』
15shoujo_astronotes.jpg
NOW ON SALE!!
[maximum10]

1. 漂流
2. Alien
3. アトム
4. アッシュ
5. 春とレム
6. Eureka

配信はこちら

十五少女
シングル
「八月三十二日」
15shoujo_August32nd.jpg
NOW ON SALE!!
配信はこちら

15shoujo_August32nd_hazuki.jpg
※菅原 圭が歌唱する「八月三十二日(葉月ケイの場合)」はこちら

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