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FEATURE

ELUVEITIE

2012.08.09UPDATE

2012年08月号掲載

スイスの“New Wave Of Folk Metal”、ELUVEITIEが 活動10周年を記念して初期2作品を再レコーディングしてリリース!

Writer 米沢 彰

ヨーロッパはスイス出身のフォーク・メタル・バンド、ELUVEITIE 。ケルト語の一種、ガリア語で“スイスに住んでいたケルト人”を意味するバンド名を冠し、民族楽器を奏でながらフロントを務めるヴォーカリストに、ツイン・ギター、ベース、ドラム、フィドル(ヴァイオリン)、ハーディ・ガーディ(弦楽器)、バグパイプ(管楽器)という見慣れないパートを含む8人編成の大所帯で活動を続ける彼らが今年、活動10周年を迎える。“New Wave Of Folk Metal”と呼ばれる彼らのオリジナリティ溢れるサウンドは、10年間の活動の間に、地元スイスを始めヨーロッパでファン・ベースをしっかりと築き、今年リリースしたばかりの最新作『Helvetios』は母国スイスでトップ10入り、他にもドイツやフィンランド、フランスなどでも各国のチャートに入るなど、結果にもしっかりと現れてきている。そんな彼らが自身の活動10周年を記念し、初期のEP、アルバムの2タイトルを再レコーディングの上、リリースする。

フロントマンのChrigel Glanzmannは“この『The Early Years』は最近俺たちを好きになってくれたファンにも、オールド・マニアにも俺たちの歴史に簡単にアクセスしてもらえる作品だ。”と今回の再レコーディングへの思いを語っている。このような思いが自然に出てくるのはELUVEITIEのファン層が幾層にも拡がっていることの証左でもあり、長く活動を続けているバンドならではの悩みと言えるだろう。今回のリリースは、ファン層を拡げる努力を惜しまない彼らのスタンスが良く分かる試みだ。

この再レコーディング盤、『The Early Years』はTommy Vetterli (ex-KREATOR)をプロデューサーに迎え、Tommyが所有するスタジオで制作された。モダンなデス・メタル・サウンドをフォーク・サウンドと高次元で融合させ、独自路線を築いてきたELUVEITIEだが、これを聴けば彼らが初期から高いレベルでその融合を実現していたことが良く分かるだろう。フォーク・メタルと言われてクサい、ダサいサウンドを思い浮かべがちなのは否定できないが、特に最新作『Helvetios』で顕著に現れている通り、ELUVEITIEはありがちなフォーク・メタルとは一線を画すモダンな“New Wave Of Folk Metal”を体現している。本作『The Early Years』は、初期作品の再レコーディング盤ということもあり、よりフォーク色が強く、また楽曲も最新作ほどにはモダンなメタルに近づいていないが、その片鱗は十分な程に伝わってくる。むしろ、サウンドからはより強く、濃いオリジナリティが感じられる気すらしてくる。“初期作品である”という時間軸の問題だけでなく、フォーク色の濃さと言う点でも、こちらの方がELUVEITIEの原点なのだろう。

Chrigelはまた、“俺たちがやっているのはビールをたくさん飲んで踊って、といったようなパーティー・ミュージックではない。ハッピーになるためのフォーク。メタルとは違うんだ。”と発言しており、民族の歴史、戦争や対立などを中心にした彼らのリリックや世界観を踏まえれば、ELUVEITIEのフォーク・メタルがどのような位置づけなのか、そして他のフォーク・メタルと一線を画す理由がよく分かるだろう。一貫したシリアスなテーマという点では最新作品もこの再レコーディング作品も同じ線上にある。最新作『Helvetios』あるいは比較的最近の作品からのファンは勿論、フォーク・メタルに否定的なメタル・ファンにもこの『The Early Years』から再びELUVEITIEの歴史を紐解く旅に出て頂きたい。

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