INTERVIEW
CIGARS SODA
2026.02.18UPDATE
2026年02月号掲載
Member:NAO(Vo) 戸城 憲夫(Ba)
Interviewer:杉江 由紀
-それにしても、今作はThe Dust'n'Bonezの作品以上に曲調が相当ばらけているのもあって、NAOさんのヴォーカリゼーションが発声から歌い回しから曲ごとに全く表情が違っていますよね。きっとどれも歌い甲斐があったのではありませんか。
NAO:戸城さんの曲は全般的に歌い甲斐がすごいんですよ。このコードの感じだったらメロディはこう着地するだろうな、っていうふうにならないことが多いですからね。
戸城:昔だったらGにしそうなところを、G7にしたりするケースとかはよくある。でも、NAOはすぐ"はい、分かりました!"って歌えちゃうんですよ。とっても飲み込みが早いので素晴らしいです。
-「欠片」のように繊細な表情を窺わせる歌もある一方で、2曲目の「ステディドライバー」ではワイルドな歌を聴かせてくださっているところにも痺れます。
NAO:あれはそうですね、たしかにそんな感じかも。あと、自分としても"これまでにない声を使って歌ったな"と最も感じてるのは12曲目の「"Rosie"」です。これはわりと難しかったし、すっごいおじさんが歌ってるイメージでレコーディングしました(笑)。
-アルバムの流れとして、ルーズなロックンロール・チューン「Jackson piggy」からの、小粋なシャッフル感が漂う「"Rosie"」という流れも絶妙です。どこか酔いどれ感が醸し出されている雰囲気で、ロック・アルバムとしての密度が増す感じといいますか。
NAO:言われてみると、その辺は歌ったときに飲んでたかもしれないです(笑)。
戸城:アルバムの流れっていう意味では、今回この曲順にもこだわってるんですよ。設定としては5曲目までがアナログLPでいうA面扱い。で、6曲目の「枯葉の音」からは裏っ返してのB面なわけ。そこから「小さな恋人」と「宙流」にかけては3曲がメドレーみたいに繋がってるの。THE BEATLESの『Abbey Road』を意識した作りだね。
-「枯葉の音」はノスタルジックな響きがいいですね。
戸城:イントロで鳴ってるアコギのフレーズが、そういう雰囲気を出してるのかもね。意外に俺はフレンチ・ポップスも好きだったりするからさ。そこがちょっと出ちゃったかな。
-ノスタルジックなサウンドに沿うかのように、NAOさんがニュートラルなテイストで歌っていらっしゃるところも素敵です。
NAO:寂しさみたいなものを表現したかったんで、力を抜いて歌ってるんですよ。だからそういうふうに聴こえるのかもしれないです。脱力感を出すことで独りぼっちな感じを表現したかったんで、こういう歌い方になりました。
-「小さな恋人」は小気味よい軽快さの漂う楽曲ですが、こちらは歌詞の内容がどこか文学的ですね。
NAO:これ、Aメロの部分で寺山修司の書いた猫についての詩からいくつか言葉を借りてるんです。要は、子猫は何もできないし役に立たないみたいな内容の詩なんですけど、これは詞の中の主人公が猫ちゃんと出会った頃のことを描いたものなんです。そして、このメドレーの3曲はどれも猫のことを歌ってる曲なんですよ。さっきの「枯葉の音」の詞も、猫が枯れ葉を踏んでいる音を表したものですね。
-猫ですか。まさに『CIGARS・SODA』のジャケット・デザインも猫ですね。
戸城:いやいや、あの絵と詞の話は関係ないでしょ(笑)。
NAO:あ、関係あります。今回のジャケットの猫ちゃんは戸城さん家の2代目猫ちゃんがモデルなんですけど、初代の猫ちゃんが病気で亡くなっちゃったときに戸城さんがすごく悲しんでたんですね。このメドレーではそのときのことも踏まえつつ、いろいろ猫についての詞を自分なりに書いてみたんですよ。今は2代目のユズちゃんがいるけど、あの頃の戸城さんはほんとに見てて寂しそうでしたからね。
戸城:そりゃそうだよ、ずーっと付きっきりで看病してたから。そっか、俺この3曲の詞にそういう意味があるって気付いてなかったわ。
-となると、もしや"宙流"というのは......。
NAO:宙に流れるで"ちゅ~る"と読みます(笑)。
-猫についての詞だと思うと、猫好きとしては"星空 ただ見上げて またね"の一節だけで泣きそうになってしまいますが......"宙流"とは秀逸なタイトルですね。
NAO:でも、これは聴き手によってどんなふうに受け取ってもらってもいいんですよ。愛着と喪失というところで、いろんなことに当てはまるように書いてます。
戸城:"ちゅ~る"か、いいね。タイアップ来ねぇかな(笑)。
-さて。B面はここからさらに佳境へと展開していくことになりますが、9曲目の「白い坂道」はそれこそTHE BEATLESであったり、ブリティッシュな香りがしてくる音像に仕上がっているように感じます。
戸城:この手の曲はピアノなり鍵盤を入れるとか、ストリングスやホーン・セクションを入れてとか、過去の例だと結構大げさにやっちゃうことが多かったんだけど。今回はそこをぐっとこらえつつ、あえてギター、ベース、ドラム、ヴォーカルだけで完結させました。ただ、ちょっと甘すぎる感じになっちゃったかなっていう気はしてるんだけどね。
-いえ、そんなことはないかと。「白い坂道」から感じるまろやかなコク深さは、逆に次の「ギタービークル」をはじめとしたアルバム後半の楽曲たちとの対比を生んでおり、『CIGARS・SODA』という作品の奥行き感をより増しているのではないでしょうか。ということで、次は「ギタービークル」についてのお話をさせてください。こちらはまさに、トラベリング・バンド CIGARS SODAを描いた楽曲ですね。
戸城:これは歌詞にAngus Young(AC/DC/Gt)の言葉を使ってるんだっけ? 俺、その話をNAOから聞いてちょっと感心しちゃったよね。
NAO:Angus Youngの名言で"ギターが連れて行ってくれるところへ行くだけさ"っていうのがあって、この詞はその言葉を思い起こしながら書いたものですね。
戸城:カッコいいよな。Angus Youngが言うからカッコいいんだけど(笑)。
-きっと、例の姿で発言されたのでしょうね。
NAO:もちろん半ズボン履いて言ったんだと思います(笑)。
-渋いロックンロール、厳ついロックンロール等世の中には様々ありますが、この「ギタービークル」はご機嫌なロックンロール・チューンですね。
戸城:そうね。これは昔から俺が作ってた曲っぽいっちゃぽいんだけど、一応サビで転調してるから昔とはやっぱりちょっと違うかな。たぶん、これも『NICE & EASY』の頃だったらこうはなってなかったと思うよ(笑)。あと、これのギター・ソロはMichael SchenkerがUFO時代に出した 「Only You Can Rock Me」っていう曲みたいに弾いてもらいました。ギターの石井ヒトシが白のフライングVを買った記念で。
NAO:買ったというか、正確には"買わせた"ですよね?
戸城:買わせた、買わせた(笑)。Paul Reed Smithみたいなカッコつけのギターとかもあるけど、俺は言ったの。"そんなのでライヴやってるんじゃねぇよ。俺がGibson Thunderbirdなんだから、ギターもGibson使えよ。それも見た目がカッコいいフライングVがいい! Michael Schenkerの使ってる白いの!"って。で、ほんとに買ってきたからその記念でこのソロを弾かせてあげました(笑)。
-そのフライングVは現在のライヴでも活躍しているわけですね?
戸城:してる。やっぱカッコいいよね。
-カッコ良さの点では11曲目の「Jackson piggy」も負けていません。スマホ1台あれば曲が普通に作れてしまう現世にあっても、生身の人間が集まってバンドで音を出すことの面白さを証明してくれているような楽曲だと感じます。
戸城:それは絶対にそうなんだよね。これもみんなで"せーの!"で音を出しても成立しちゃうような曲だし、このアナログ感はすごい大事だと俺も思うよ。絵とかもそうで、俺が手描きしたジャケットとAIが作る絵じゃ絶対に違うと思うもん。レコーディング自体は昔みたいにアナログのテープで録ってるとかではないけど、バンドがみんなでガタガタやりながら音を作ってくから面白いんだよね。「Jackson piggy」もまさにそういう曲。
-かくして、CIGARS SODAのデビュー・アルバム『CIGARS・SODA』を締めくくるのはブルージーな影を纏う「re:lonely」です。ここに満ちている哀愁感は、一朝一夕のものではないですね。とても新人バンドの出す音とは思えません。
戸城:これは若いやつには書けない曲だろうねぇ(笑)。ギターの泣きもいいでしょ? あのギター・ソロの後半はTHE BEATLESの「While My Guitar Gently Weeps」と同じコード進行を持ってきてるの。それで、うちの石井がどこまで(Eric)Claptonに近付けるか? っていうのを試したんですよ。
-「While My Guitar Gently Weeps」はGeorge Harrisonの作った曲で、ソロはノンクレジットながら彼の友人であるEric Claptonが弾いているのでしたよね。
戸城:まぁ、結果的にはレコーディングが終わって石井ちゃんと"やっぱClaptonってすげーんだなぁ!"ってなったけどね。石井ちゃんが言うには"Michael Schenkerもカバーしてるけど、全然Claptonには勝ててない。でもPRINCEのはなかなか良かった"っていうことみたい。これは余談です(笑)。
-NAOさんは「re:lonely」ならではの哀愁を、ヴォーカリストとしてどのように表現されていかれたのでしょうか。
NAO:曲が哀愁に満ちてるんで、僕はただ身を任せれば良かったです。特にやったことはないんですけど、サビとタイトルになってる"re:lonely"っていうのは戸城さんがスタジオで口ずさんだ"re:lonely"っていうフレーズをそのまま使わせてもらいました。
戸城:俺そのときのことあんま覚えてないんだよなぁ(笑)。でも、役に立って良かったよ。
-「re:lonely」で余韻を残してアルバムが終わっていくところが味わい深いです。
戸城:だって、アルバムってそういうもんでしょ。1曲目はガーン! って勢いがある感じで掴んでおいて、最後にこういうのを持ってくるって分かりやすいじゃない?
-分かりやすいという面ではCIGARS SODAの『CIGARS・SODA』という、このアルバム・タイトルも明解です。
戸城:深く考えてこうしたわけじゃなくて、CIGARS SODAってバンド名としてもいけるけど、アルバム・タイトルでもいけそうだったからこれでいいかなって(笑)。とにかくデビュー・アルバムだしね。
-その『CIGARS・SODA』を踏まえたリリース・ツアー"祝★デビュー『CIGARS•SODA 2026』"が3月より始まるとのことですが、冒頭でもお話があった通り、ライヴではCIGARS SODAの曲のみならず、戸城さんのキャリアを統括するような構成で展開されていくことになるそうですね。
戸城:CIGARS SODA、BAD SiX BABiES、The Dust'n'Bonez、それとこの間はZIGGYの曲もやりましたよ。昔はやりたくねーなとか思ってたけど、どれも俺の作った曲だし。なんかもう開き直っちゃったね。なんだかんだ30曲くらいやって、お客さんたちがみんな喜んでたからいっか! みたいな(笑)。
-ファンのニーズに応えてくださっているとはありがたいお話です。
戸城:あとはもう、それぞれが自由に楽しんでくれればそれでいいと思うよ。今の時代は何かと一体感とかライヴに求めがちなんだろうけど、例えばTHE ROLLING STONESとかAEROSMITHが昔やってたライヴの映像とか観てると、立ってる人もいりゃ座ってる人もいるし、飲んでる人や踊ってる人、一緒に歌ってる人もいてほんとに自由だからさ。俺としては一体感とかいらないから(笑)、みんな自由にやってほしいなぁ。
NAO:ついこの間、CIGARS SODAとしてのライヴをやったときに戸城さんから僕も言われたんですよ。本番直前に"一体感みたいなのはいらねぇから"って。"え? ちょっと待って。じゃあどうしたらいいんだろう!?"って一瞬戸惑いましたけど(苦笑)、何しろリーダーがそう言うんだったら必要ないんで、こっちから煽るみたいなことはしない形でやりました。みんなには勝手にやってもらって、勝手に一体感が生まれてるんだったらそれはそれでいいし。僕が別でやってる首振りDollsのほうは逆に今どんどん一体感が増していってる状況なんですけど、CIGARS SODAではリーダーの求める"Woodstock"みたいなラヴ&ピースで自由な空間を作っていけたらなと思ってます。
-CIGARS SODAのここからが楽しみです。
戸城:俺としてはCIGARS SODAで一発当てたいね。宝くじはただの運任せだけど、バンドって馬券を買ってるようなつもりでやってるところがあるのよ。当たると信じる馬券を買ってるわけなんで、CIGARS SODAはきっと勝つだろうって信じてる(笑)





