MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

ASURA

2018.08.06UPDATE

2018年08月号掲載

ASURA

Member:AKINA(Vo) M(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

-様式美を超越したいとのその強い想いがここではドラマチックなかたちで昇華されているように感じられます。しかも、AKINAさんのクリアでパワフルなヴォーカリゼーションがとても生きていますよね。

M:我ながら、ここでひと皮剥けることができたなということは感じてます。作品を重ねるたびにASURAは成長してきているバンドなんですが、AKINAの歌も含めてステップアップしていることを、この音からは感じてもらえるんじゃないかと思いますね。

AKINA:レコーディング中にはあんまり褒めてもらえなかったんですけど、私としてもここでその言葉が聞けて良かった(笑)。

M:今回、僕からは"あまりきれいに歌いすぎないでくれ"ということを何回か言っていたんですよね。完璧にキッチリ歌うことよりも、例えば"そこはもうちょっと色っぽく"とか、表情や感情をしっかりと乗せていくことの方を大事にしてほしかったので、そこがちゃんと反映されていたのが良かったです。それと今回は歌詞の面でも、僕とAKINAの間での意思疎通が前よりスムーズにいったのでだいぶ進化したと思いますね。

-具体的には、どのように変化したのでしょうか?

M:まずは曲とメロディができた時点で、先に"これで自由に詞を書いてくださいね"とAKINAに投げるんですが、僕としても"ここにこんな感じの響きや発音の言葉が入ってくるといいな"とか、"ここに濁音が欲しいな"と一応イメージしているところはあったりするんですよね。昔に比べて、今回は歌詞がAKINAから届いたときに、そういう面での"おっ! 思っていたとおりの言葉がハマってきた"と感じることがすごく増えたんです。"いい言葉を持ってくるなぁ!"って感心させられたことも何回もありました。ありがとうございますって感じです(笑)。

AKINA:だったら良かった(笑)。

-せっかくですので、ここでMVにもなっているリード・チューン「Empress」の歌詞についての解説を少しいただいてもよろしいでしょうか?

AKINA:「Empress」については、Mから"皇帝をイメージしてほしい"ということを言われたんですよ。でも、私自身は皇帝とか男性の気持ちってなると"ちょっとわからないかもなぁ"と思って、それで女帝の"Empress"をテーマに書いていくことにしたんですね。ここでは上に立つ人間の強さだけじゃなく、そこにつきまとうであろう弱さも描くようにしたかったので、英詞で"私はただ愛されたかっただけ"という部分も入れました。鳴っている音はいかにも女帝らしい強さを感じさせる仕上がりになっている一方で、詞の中では女帝の持つ人間らしい部分も表現していくようにしたんです。

-メロディ・ラインに漂う優美さと哀切が、その詞の内容とリンクしていますね。

M:激しいんですけど、ちょっと悲しげなんですよ。

-と同時に、皇帝なり女帝をイメージしていた理由というのは、冒頭のお話で出てきていた"メタルのシーンでの一番を獲りたい"というお言葉とも繋がっているわけですか?

M:まさにそういうことです。その気持ちを集約させた曲が「Empress」ですね。

-もちろん、その他にも今作には様々な色合いの楽曲たちが収録されておりますが、AKINAさんが"これは今までのASURAにはなかったタイプのものだな"と特に感じられた曲がありましたら教えてください。

AKINA:それが、今回は基本的にこれまでやったことがなかったような曲ばかりだったんですよ。その中でも、一番苦戦したのはバラード「Letter」でした。これはほぼピアノの音だけで他の楽器の音が入っていないので、歌でいかに聴かせ切るかというところで悩みましたね。歌詞を書くときにも、ストレートで耳に入ったときにわかりやすい言葉を選んでいくように心掛けたんですが、メンバーの出している音がないなかで、自分だけになってしまうという状況にちょっと緊張も感じてしまいました。

-「Letter」はヴォーカリストとしての腕の見せどころだったのでしょうね。

AKINA:でも私としては最初のうちは拒否をしていたんですよ。アルバムはバンドのメンバーみんなの作品なんだから、私だけの声ではなくみんなの音も入れたいって。だけど、作曲者であるM君から、"このアルバムの最後はどうしてもこのピアノ・バラードで締めくくりたい"という強い要望があったので、歌うことにしました。

M:AKINAのヴォーカリストとしての力は、「Empress」みたいな激しい曲でも大きく発揮されているんですけど、こういうダイレクトに歌が伝わるバラードでも映えますからね。その2曲をアルバムの頭と最後に持ってくることで、他にもいろいろとある楽曲たちをうまく挟み込んだ構成にしたかったんです。

-結果、今作は実に多彩な内容を誇るアルバムへと仕上がりましたね。

M:今やメタルとひと口にいっても、いろんなメタルがあるじゃないですか。今回のアルバムには、思いつくかぎりのいろいろなメタルのかたちと、ASURAらしさを詰め込めたんじゃないかと思います。「Bonds of fire」ではメタルから遡ってハード・ロックに近いこともやってますし、「Say to oneself」ではギターだけで言えばポスト・ハードコアのフレーズを弾いてます。「Light of Hope」ではコテコテのメロスピ要素も入れましたし、ベースのkaeが作っている「Cruel world」と「虹」もそれぞれ存在感のある曲になっていますから、このアルバムの品揃えは本当に豊富なんですよ。まぁ、あれこれもとあるので、それをすべてやることになったメンバーたちは大変だったでしょうけど。

AKINA:「Say to oneself」なんかは、詰まったメロディの連なりを考えると歌詞も言葉数を詰め込む必要があったので、歌うときに"どこでブレスをすればいいのかな!?"って戸惑いました(笑)。

M:一般的には、ポスト・ハードコアにクリーンなヴォーカルを乗せるということ自体が異例ですからねぇ。

-たしかに(笑)。

M:普通にシャウトを乗せるのがホントならスマートなんでしょうし、何回かそれにトライもしてみたんですけど、どうしてもマッチングした感じにはならなかったうえに、ASURAらしさも感じられなかったので、こうなったんですけどね。思い切って固定概念を取っ払ってASURAらしさを追求したら、やっとこういうかたちになりました。これもやっぱりAKINAのヴォーカル力が大前提になってできた曲だと思います。

AKINA:うわー。今日はとにかくいろいろ褒めてくれる日なんだね(笑)。

-そうした一方で、今作にはギター・インスト「DRAGON CLAW」も収録されております。こちらについては、どのような思いを込められたのでしょうか?

M:自分の中ではギタリストというよりも、作曲家としての意識の方が強いので、そんなにテクニックを前面に出すような終始速弾き的なギター・ソロは好きじゃないし、興味もないんですよ。だから、「DRAGON CLAW」でも、カッコいいんだけどメロディをしっかり聴かせるギター・ソロを弾いていくようにしました。ちょうどこれを作る前までにはアルバムのジャケット・デザインが上がっていたのもあって、その絵のイメージから曲の世界を広げていった感じですね。このジャケットの絵って、ジャケットになっている部分は全体の一部で、実はもっと大きなものなんですよ。そして、その上の方にはドラゴンがいるんです。そのドラゴンの爪のことを、心に刻みつける音という意味で解釈して、この曲のタイトルは"DRAGON CLAW"にしました。

AKINA:ただ今回はそのジャケットのデザインが決まるまでも大変だったんですよ。

M:メンバー6人がそれぞれ"ドラゴンを入れたい"とか"ここには淡い緑が欲しい"とか、"キラキラしてほしい"とか"神秘的な雰囲気も欲しい"とか、散々いろいろ言いましたし、誰も折れなかったですからね(笑)。

AKINA:でも、そのすべてをデザイナーさんがきれいにうまく収めてくれたんです。

-かくして、全部入り的なフル・ボリュームのアルバム『Eternal』がここに完成いたしました。このタイトルにも、ASURAの強い願いが込められていそうですね。

M:聴いてくれる人たちにとっても、作った自分たち自身にとっても、何年後、何十年後になって聴いたときでも、"好きだな"と感じられるようなアルバムになったと思うので、永遠を意味する"Eternal"と付けました。

-今作はライヴのことを想定しながら作ったものでもあるとのことですしね。今後、『Eternal』の世界がステージ上でいかに広がっていくことになるのかも気になります。

AKINA:アルバムの発売直後(7月28日)にも吉祥寺CRESCENDOで"ETERNAL SAGA~invitation 3rd seed~"というワンマンをやり、そのあとも年末までコンスタントにライヴをやっていくことになるので、ぜひ楽しみにしていてください!