INTERVIEW
Migimimi sleep tight
2016.07.05UPDATE
2016年07月号掲載
Member:宮川 依恋(Vo/Gt) 涼平(Gt/Cho/Pf) JOTARO(Ba/Cho) 松本 誠治(Dr/Cho/Per)
Interviewer:沖 さやこ
-Migimimi sleep tightは"君の人生で一番泣けて、一番踊れるバンド"というキャッチフレーズを掲げていますが、自分たちの曲はかくあるべき、といったルールはありますか?
涼平:いや、今のところはないですね。でも泣けるようなメロディと、聴いていると自然に身体がノッちゃうようなリズムは作りたい。初めて聴いた子でもノッちゃうようなものは目指してますね。とはいってもリズムが四つ打ちである必要はなくて。
松本:うん。ダンス・ミュージックだからといって四つ打ちとは限らない。いろんなダンスやいろんなメロディを提案したいし、それを踏まえてポピュラリティの高いものにしていくのは一番大事かなと思っています。そういう意味合いとしてのポップスにしていこうというのは根底にありますね。メロディ・ワークが各楽器にちゃんとあると、俺らの目指したいひとつの形にはなるかなと思っています。
-こういう質問をしたのは、Migimimi sleep tightが本当にいろんなジャンルの音楽を吸収していると思ったからなんですけど、それは意識的なものなんですか?
涼平:いや、メロディありきなのとレンレンの声もあって、どんなことをやっていてもMigimimiらしさはあるのかなと思って制作しています。とは言ってもとっ散らかったことをやって"これMigimimiかな?"と思うような曲は僕らもやらない。そこはこだわりですね。『The Lovers』も、通して聴いて違和感のある曲があったら入れてなかったと思います。そのMigimimiらしさは感覚的なジャッジもありますし、それぞれのフレーズのアイディアを持ち寄って音を入れていって、最終的なテーマを作曲者の意向に寄せていく――ミックスでも決定権を持つのはなるべく作曲者。今はそういうバランスをうまく4人で取り合っています。
-まず、涼平さんが作曲なさっているTrack.1「puputan」はバリ島のガムラン音楽を用いた楽曲。タイトルもバリの風習にある、王朝が戦闘で敗北すると自決を選び、多くの王族、貴族が殉死をすることを言うそうですね。
涼平:そうです。最後に"タイトルどうしよう?"と思っていろいろ考えたんですけど、"ガムラン音楽でこの歌詞ならこのタイトルしかねぇ!"みたいな。8分の7拍子のガムラン音楽に、普通のEDMの4分の4拍子のフレーズが交ざってくるんです。だからみんな、最初は"イントロのリズムをどこで取ろう?"と悩んでて......。
松本:最初にデモをもらったときは"何が始まるの?"というレベルでした(笑)。
涼平:(笑)だから初めて聴く人にもイントロではギョッとしてもらってもいいかなって。そのあとにラップもメロディも入ってくるけど、サビに来たときに"こうくるのか!"という気持ちよさは欲しくて、そこを目指して作りました。
-こうくるのか!感はすごくありました。EDMを人力で行うのも、人力が作るグルーヴが必要ということですか?
涼平:そうです。人力は僕らのテーマですね。今時どのバンドも同期を入れていると思うんです。僕らがやっていることも同期で事足りる部分はあるんですけど、そこで生まれる機械と人間とのグルーヴは絶対にある。それはリハでやっていて僕ら自身が感じているし、ライヴでお客さんの反応を見てると"本当はこれを同期に任せることはできるけど、僕らがこれを実際ライヴで演奏して良かったな"と思う。
宮川:そうですね。歌がない部分でもお客さんと会話できている気がする。
涼平:うん。さっき誠治君も言ってたけど、歌ではない部分のフレーズが作るメロディにもうまくノリが作れると――ということですね。
松本:みんなそれぞれのマンパワー、ヒューマニックな部分がプラス・アルファをする。音楽としては同期を流せばそれで完結だけど、そこにどう同期の完成度を超えるものを作り出すか、ということですね。ライヴでこんなにガッチガチのフル同期を使うことは人生で初めてだったので、緊張感は半端じゃないっすけど(笑)、楽しいです。
涼平:それも、僕がthe telephonesのライヴを観て"あ、この人はこういうことができるな"と思ったからなんです。"あそこにこれを差してみたい"、"あれに繋いでみたい"と思ったので、ライヴのシステムのアイディアは誠治君のプレイありき。
松本:またそれらしいことを言うな~(笑)。でもやってきた人がいないことをやるのは面白いことだし。機械の音だけど、それを操っているのは人間だから、そのヒューマニックな部分のエモが作る"揺れ"が楽しくなるレベルまで持っていけるかというのは我々の課題だと思うし、そういう面白さに気づけたらどんどん入り込んでもらえるんじゃないかなとも思うんで。
-そうですね。JOTAROさんはいかがでしょう?
JOTARO:単純に踊れるし、同期がしっかり入ってるけど、それを崩さずにビートとグルーヴを作る、且つベースが弾くフレーズの展開で曲をあっという間に聴かせられるようにしたいです。「Migimimi」だと動いたり高い音で弾いたりもしてるんですけど、それは目立ちたいからではなく、曲がドラマチックになるように、繰り返されるメロディがよりプッシュされて聴こえるようにするにはどうしたらいいかな? と思ってメロディにベースがくっついていったりしてるからなんです。僕がカラフルにする、膨らませるようにはして。シンプルなベースを弾くだけではなく面白いこともやらせてもらえるし、これ弾けるの!?と思うようなデモが送られてきたときに"弾こう!"という気持ちにもさせてくれます。
涼平:ははは。それは「The Lovers」(Track.6)のイントロだね。ギターの音がでかいからわかりにくいかもしれないですけど、ベースをよく聴くとヤバいことやってて(笑)。
松本:"ヤバいこと"って、自分が作ったデモのフレーズでしょ(笑)?
涼平:デモのフレーズは、"こういうニュアンスでやってほしい"というのを俺が打ち込みで入れるんです。でも、JORATO君は毎日徐々にテンポを上げて弾けるようになったんですよね。僕も"弾けてんじゃん!"ってめっちゃテンション上がっちゃって(笑)。
JOTARO:驚かせたい一心でした(笑)。そういうやりがいもありますし、みんながくれる楽曲には自分が考えた小出しのアイディアを散りばめても崩れないという、もともとの良さがある。だからこれをやってみよう、あれをやってみようと思うし、ある意味ベーシストらしい仕事ができるバンドじゃないかと思いますね。いいセッション感で、隙間や余裕がある。楽しいです。
-フレージングの意外性を楽しめる余裕があって、ちゃんと合っているかどうかを見極められるのはキャリアがある方々が組んだバンドだからかもしれないですね。では涼平さん以外のメンバーそれぞれが作られた曲にも着目したいのですが、宮川さんが作詞作曲なさったTrack.3「Don't me cry」は家にいたときに降ってきたメロディから生まれた曲だそうで。Migimimi sleep tightの中ではシンプルなアプローチの曲ですね。
宮川:僕は"絶対いい曲だな"と思うメロディが降ってきたら、すぐ作業に移すタイプなんですけど、この曲もそうでした。みなさんのおかげですごくいい感じに仕上がったと思います(笑)。
涼平:レンレンのデモがだいたい完成してたので、僕らはそのニュアンスを汲んで、あとはそれぞれが得意なことを提案して。メロディから仕上がったことがわかるサビメロありきの曲。あと、イントロのキャッチーなインパクトも僕は好きですね。
宮川:イントロはメンバーみんなが歌ってる画が欲しかったんですよね。それが"泣ける"に繋がるんじゃないかなと考えたんです。だからタイトルにも"cry"と入れて。バンドのテーマが合わさっていい化学反応が起きたんじゃないかなと思います。
松本:シンガーらしい曲ですよね。楽器が歌の邪魔をしないアレンジメントも含めて、彼らしいロックな感じもするので。ロック・ビートの中のダンスという印象がありますね。