FEATURE
BREAKING BENJAMIN
2015.06.10UPDATE
2015年06月号掲載
Writer 井上 光一
2009年にリリースされた『Dear Agony』以降、ベスト盤のリリースはあったものの、中心人物であるBenjamin Burnley(Vo/Gt)の病気療養、解雇されたメンバーによる訴訟問題といったような、泥沼のようなトラブルに見舞われ、バンドとしての未来が不安視されていた、BREAKING BENJAMIN。現在、バンドはBenjamin以外のメンバーをすべて一新させ、再スタートを切ることとなった。通算5枚目となるニュー・アルバム、『Dark Before Dawn』と名づけられた本作は、それゆえに、バンドの新たな一歩、新たな章の幕開けという重要な役割を担っているのである。
MUSEや30 SECONDS TO MARSあたりと共振する、壮大な音世界の始まりを予感させる、その名もずばり「Dark」という直球タイトルのイントロダクション的楽曲で始まり、続く先行シングル「Failure」のどこか物悲しいギターのアルペジオ、そこに絡みつくように唸りを上げるヘヴィなギター・リフ、どっしりとしたベースとドラムス、聴いてすぐそれとわかる、Benjaminの哀愁を帯びた激情のヴォーカルで歌われるメロディが、BREAKING BENJAMINの本格的なシーン復帰を高らかに告げているかのよう。同じく先行シングルであるTrack.3「Angels Fall」やTrack.11「Defeated」で味わうことのできる、バンドの基本的スタイル、現代メタルコアやスクリーモ勢とは、立脚点からして違うへヴィネスの方法論と、力強さと繊細さを兼ね備えたメロディを軸に生み出されるBREAKING BENJAMIN流のヘヴィ・ロックは、先に結論づけてしまうと、本作においても健在である。攻撃的なリフで攻めるTrack.4「Breaking The Silence」にせよ、風通しの良いサビのメロディにはっとさせられるTrack.8「Never Again」にせよ、壮大なストリングスを導入した、神々しさすら漂うバラード曲Track.10「Ashes Of Eden」にせよ、元REDのJasen Rauch(Gt)を始めとして、キャリアのあるメンバーを加入させたこともあり、危なげない音作りはトップ・クラスのバンドに相応しい貫録を感じさせるのだ。
あえて難を言えば、アルバム収録曲のほとんどがスロウ~ミドル・テンポで固められており、ときに似たり寄ったりになってしまう傾向も否めないのが、いわゆるポスト・グランジなどとも評される、彼らのようなバンドの宿命と言えるのも事実ではある。ただし、それを否定材料にするのは安易な物言いであって、アルバム・ラストのアウトロ的楽曲「Dawn」まで通して本作と向き合えば、最初から最後まで一貫して表現されている"ムード"のようなものをたしかに感じるはずだ。それは世界観と言い換えてもいいが、楽曲単位で切り売りするのではなく、アルバム全体をひとつの作品として作り上げたからこそ生まれる説得力、及び完成度の高さは、バンド側の音楽に対する誠実な態度を保証するものであろう。新機軸などはなくとも、自分たちが鳴らすべき音、というものを骨の髄まで理解しているバンドは、ジャンル問わずやはり強いのである。だからこそ、本国アメリカにおいては絶大な人気を誇っているにも関わらず、ここ日本での知名度がいまいちである、というBREAKING BENJAMINのようなサウンドを指向するバンドにありがちな現状は、非常に残念だと言わざるを得ない。それはCREEDやSTAINDといった90年代から活動する大物バンドですら似たような状況なので、由々しき問題だと個人的には考えている。そのような状況を打破するためにも、特に長年のファンにとっては悲願であろう来日公演の実現に、心から期待したい。そもそも、本作が持つ圧倒的なダイナミズムを味わうには、やはりライヴという場で体験するのが、最良の方法なのだから。
BREAKING BENJAMIN
『Dark Before Dawn』
[UNIVERSAL INTERNATIONAL]
UICH-1002 ¥2,450(税別)
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1. Dark
2. Failure
3. Angels Fall
4. Breaking the Silence
5. Hollow
6. Close to Heaven
7. Bury Me Alive
8. Never Again
9. The Great Divide
10. Ashes of Eden
11. Defeated
12. Dawn
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