ライブレポート|激ロック サマーソニック07特集

SUMMERSONIC07 ライブレポート

SUICIDAL TENDENCIESTOKYO Mountain Stage 16:05~

SUMMERSONIC07


「スイサイダル」それは自殺ではなく、自分をやりつくすことである。この信念のもと、マイク・ミュアーが中心となり83年に結成されたSUICIDAL TENDENCIES(以下ST)。従来のハードコアスタイルにヘヴィメタルの早弾きギターを取り入れたサウンド、ブラックユーモアに富んだ歌詞など、彼らのスタイルすべてが当時は革新的であり、今のメタル、ハードコアシーンに多大な影響を与えているバンドである。そんな彼らが数々の困難を乗り越えて、今回サマーソニックのステージに出演したのである。

電撃音とともに照明が落ちる。大画面に「SUICIDAL TENDENCIES」の文字が表示されるや否や、男くさい歓声の陰から彼らの登場を催促する「S・T」コールがマウンテンステージにフェードインしていく。早く出てこい、スイサイダルテンデンシーズ。「Can’t Bring Me Down」が始まると、その想いはまるで監獄から解き離れた囚人たちのように爆発する。モッシュやダイブだけでない。一曲目にして巨大なモッシュサークルも生じ、ステージでは、マイク・ミュアーが走って、歌って、語って、大忙しである。ここでの一体感はまるでマウンテンステージでのSTのステージを象徴しているようだった。

その後、「Trip At The Brain」ではギターリフがキッズの心をえぐるように鳴り響き、ライブではおなじみの曲「War Inside My Head」でもモッシュ、ダイブ、シンガロング・・・その勢いは衰えていくことを知らなかった。中盤から終盤にかけて、スケート・ロックアンセムである「Possessed To Skate」、ライブで激盛り上がること必至の「Cyco Vision」なども演奏されていった。ここでもマイクは演奏前に必ずキッズに言葉をかけ、痩せているとはいえないその体で走り回り、そして、「オレについてこい」とキッズを奮い立たせていた。力強さと説得力の中にも気配りが光る彼らのステージスタイル。ここにこれまで他のライブでは感じたことのないエンターテイメントを感じ、感動したのである。きっと、スイサイダルファンだけでなく、グットシャーロットの代わりに来たやつらって誰?と思っている人にも彼らのエンターテイメントは伝っていたはずである。後ろに座っていた人たちが前に押し寄せ、さらに後ろにいた人たちも立ち上がっていたことがその証拠である。本気で盛り上がっているキッズたち、STのステージングが彼らに行動を起こさせたのだろう。

そしてラストも圧巻であった。その始まりはSTコールであった。「Pledge Your Allegiance」である。重低音という言葉が軽く聞こえてしまうほどのギターの二重奏、それに重圧と勢いを加えるドラムと超絶ベース、そして、マイクとコーラスによる「スイサイダルテンデンシーズ」と叫ぶ声とそれにモッシュやシンガロングで応えるキッズ。ここにこれまでにない一体感が生まれたのだ。そんなときに突然、マイクが観客のほうを指さして、「上がってこい」というジェスチャーを送る。一人だけでなく、次々とステージに上げていく。気づいてみれば、20人ぐらいがステージの上で、モッシュしているのだ。こんな光景みたことがない!!ステージに上がったキッズはもちろんのこと、メンバー全員が非常にいい顔をしているのである。特にマイクはステージに上がった全員とハグと握手をしていた。その姿を見て、こいつらは本物のエンターテイナーだと確信した。その興奮とステージへ上がらなかった後悔を胸にしまいながら、彼らが消えていくのを見送っている自分がいた。

自分の伝えたいこと、ファンを楽しませたいという想い、そして何より一緒に音楽を楽しむという信念が伝わってきたライブであった。

彼らは間違いなく今年のサマソニのベストアクトである。ライブでこんなにエンターテイメントを感じたことはなかったからだ。
(吉野 将志)

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