2008.11.09 (Mon.) 新木場 STUDIO COAST
前日のライヴはソールドアウト、今日もほぼ満員状態だ。いつも行くようなラウドロック系のライヴと違い、落ち着いた感じの客層が多く、年齢層も若干高めという印象だ。19:00ちょうどにゲストのTHE WHIPが登場。マンチェスター出身のエレクトロロックバンドだ。ネオンライトをも持っているようなコアなファンもいたにせよ、会場内の10分の1くらいしか彼らを知る人はいないよう。しかし彼らを知らない人も、リズムに合わせて手拍子などをして好意的にこのゲストを迎えていた。
THE WHIPの音楽性はイギリス独特の暗さがあり、いかにもマンチェスター!な音。ミニマルなトラックとロックが融合され、最近のエレクトロ系のイギリスのロックバンドのバイブルであろうNEW ORDERとSTONE ROSESとJOY DIVISIONからの影響が色濃く伺えた。ドラッギーな曲の雰囲気に、マッドチェスタームーブメント(1990年前後にかけてイギリスのマンチェスターを中心に栄えたムーブメントのこと。ダンサブルなビートとサイケデリックなサウンドが特徴。このムーブメントの繁栄にはエクスタシーやLSDというドラッグ文化も大きな役割を買っていた。代表的なバンドはSTONE ROSES、NEW ORDER、HAPPY MONDAYSなど。)の渦中にいるような錯覚さえ覚えた。THE MUSICの音楽性のルーツにもマッドチェスターのというのがあるので、THE WHIPのゲスト出演はとてもいい組み合わせだったと思う。
そしてTHE MUSICのライヴがスタート。しょっぱなから「Take The Long Road And Walk It」!Robの声は美しく伸びており、全体的な演奏力の向上を一瞬にして感じることが出来た。力強い意志を感じる歌詞が心に響き、ポジティブな気持ちにさせてくれた。
そしてアルバム【Strength In Number】から「The Spike」。ダンスミュージック色の濃いこの曲は、New Rave渦中という2008年今現在の時代性を感じることが出来たが、THE MUSICはエレクトロを駆使した上辺のフックに頼るのではなく、根底に意志的な歌詞を伝えるという感情表現があるので、深みが違って聞こえるのだ。Robのダンスはまるでロック版JUSTIN TIMBERLAKEのよう。軽やかに飛び跳ねる姿にこちらも高揚感を覚えざるを得ない。最近ワークアウトを生活に取り入れているということだが、この軽やかさはその効果が表れているからだろう。
「Freedom Fighters」「Fire」とハイテンションな曲が続き、「Human」ではサイケデリックで幻想的な空間に魅了された。
「Drugs」ではサビの高音部分がオケになっており、ロブは一オクターブ下を歌っていたのだが、ライヴ中のいくつかの曲の高音部分に少しだけ不安定さを感じた。声の伸びや発声については素晴らしいだけに、残念だった。
「Strength In Numbers」ではこの日初のクラウドサーフが起きた。UKのロックバンドのライヴではあまり見ない光景だが、THE MUSICの楽曲には爆発力と凄まじい高揚感があるので、とても頷ける。この日一番心に染みたのは「Too High」だった。繊細な感情表現。これは計算して出来るものではない。
「The People」ではイントロでリズムが裏打ちになる部分があるのだが、オーディエンスの手拍子と「oi!oi!」という掛け声により、リズムが大きく崩れてしまった。これはとても残念なことだった。ライヴのハイライトになる曲なので気持ちはよくわかるのだが、演奏のことを考えイントロ部分での手拍子などは控えるべきだろう。
ラストは「Getaway」と続けて「Bleed From Whithin」を演奏。「Bleed From Whithin」は筆者もTHE MUSICの曲の中で一、二を争うほど大好きな曲だ。曲の途中には、なんとフロントメンバー全員がパーカッションを叩くというパフォーマンスが!元々パーカッシブな曲ではあったが、ここまで強調してくれるとは!とても嬉しい驚きだった。
この日のSTUDIO COASTはとても音が良かったし、骨太でエネルギッシュで素晴らしい演奏をしてくれたTHE MUSICと、静かな曲ではじっと聞き込み、ハイな曲では思いっきり飛び跳ねる日本のオーディエンスのテンションがいい具合に混じり合い、とてもいいライヴだったと思う。今年は三度も来日してくれたTHE MUSICだが、来年も是非とも来日を期待したい。そしてFUJI ROCK FESTIVALだけではなく、キッズの多いSUMMER SONICへの出演も考えてくれれば良いのだが。(KAORU)
Copyright © 2007 激ロック. All Rights Reserved.
Reproduction in whole or in part without written permission is strictly forbidden.