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フリーマガジン2012年01月号掲載

Writer : KAORU

Chris Daughtryは、全米で大人気のオーディション番組“アメリカン・アイドル”のseason5(06年1月から5月までの放映)で見事4位を獲得。バンドDAUGHTRYを結成してリリースした1stアルバムは、結果的に“アメリカン・アイドルseason5”で優勝したTaylor Hicksの倍であるダブル・プラチナム(200万枚)を記録。09年にはNICKELBACKやSHINEDOWNも参加した2ndアルバム『Leave This Town』をリリースして各国から更なる賞賛を浴び、最早“アメリカン・アイドル出身”ではなく、“アメリカン・ロックの象徴”と呼ばれるまでのビッグ・バンドへと成長した。

そんなDAUGHTRYが、去年から加入した新ドラマーにRobin Diazを迎え、前作から約2年半ぶりとなる最新作『Break The Spell』をリリースする。『Break The Spell』というタイトルはトラックのタイトルにもあるが“呪縛を解く”という意味。なにやら思わせぶりなタイトルである。
『Break The Spell』は、アドレナリン全開の「Renegade」で幕を開けるが、この曲は今作の中では異質なナンバーだと言える。アルバム全体で見るとヘヴィなトラックはごく一部に限られており、断然透明感のある美しいミディアム・テンポのバラードに重点が置かれている。そのことを象徴するのが、AEROSMITHやDEF LEPPARDを手がけたことで有名なMarti Fredriksenとの共作であるシングル「Crawling Back To You」だろう。AEROSMITHの王道ハードロック・バラードを彷彿とさせる、スケールの大きい感動的なナンバーだ。因みにこの曲は既にPVが公開されているが、剥き出しの蛍光灯や打ちっぱなしの壁が目に入ってくる殺風景なフロアで5人のメンバーが演奏しているだけという、とてもシンプルな作りになっている。自分たちの曲に圧倒的な自信がなければこのようなギミック全くナシのPVは作れないだろう。
特に秀逸な展開は、後半のTrack.11「Louder Than Ever」からTrack.12「Spaceship」への流れだろう(オリジナル盤はTrack.12で終了)。この2曲の存在が作品の心地よさに一役も二役も買っているのは間違いない。ダイナミズムを追求しているアルバムではないが、アルバムを通して聴いた後の清涼感が非常に心地良い。
なお、日本盤にはデラックス・エディション仕様の輸入盤に付いている4曲と日本盤のみに収録されているTrack.14「Never Die」の、計5曲のボーナス・トラックが収録されている。ちなみに「Never Die」はなぜ本編に入らなかったのかと不思議に思うくらい素晴らしい曲なので購入の際はぜひとも国内盤をお勧めしたい。

未だ来日したことがないDAUGHTRYだが、この普遍的なアメリカン・ロックを生で体感出来る日が来ることを切実に願う。

Break The Spell

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