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LIVE REPORT

the GazettE

2016.10.28 @Zepp Tokyo

Writer KAORU

1年に及ぶ『DOGMA』ツアーのグランド・フィナーレ公演を終えたthe GazettEが、それからおおよそ1ヶ月後のこの夜、バンド史上初の試みとなるハロウィン・ライヴをZepp Tokyoにて開催。オフィシャル・ファンクラブ"HERESY"の会員限定イベントで、普段のthe GazettEとはひと味違う遊び心に溢れたスペシャルな一夜となった。

今夜のライヴ前のBGMは、KORNの「A Different World (feat. Corey Taylor)」、MY CHEMICAL ROMANCEの「Dead!」、Lil Wayneの「Sucker For Pain」、†††(CROSSES)の「This Is A Trick」、MARILYN MANSONの「Sweet Dreams」、OTEPの「Blowtorch Nightlight」、Zomboyの「Like A Bitch」、Caspa feat. Keith Flintの「War」などなど、"KNOTFEST"やハロウィン感を彷彿させる曲も流れていた。

開演予定時刻を過ぎ、突然、バッドマンのJokerにコスプレしたスタッフがステージに登場する。会場中から爆笑が起こるなか、注意事項なども含めきっちりとアナウンスする姿はシュール且つユーモラスだった。そして、会場に集まったファンも凝ったコスチュームに身を包んでいる人が多く、いつものライヴとは違うハロウィンならではの楽しい空気感に満ちている。

お馴染みのSKID ROWが流れるなか、ステージに注目が集まる。特に今日はハロウィンということで、普段は見られないであろうメンバーのスペシャルな衣装や舞台装置に期待が膨らんでいる。力強いドラムのマーチとエレクトリックな同期音が鳴り響く。1曲目は「INSIDE BEAST」で、ファンは大きく手を叩きながらメンバーを迎え、幕が上がった途端、"おおおー!!!"と、驚きを含んだ大きな歓声が湧いた。ストライプの上下スーツに、黒いウサギの耳が付いた長い円筒形のハットを被っているRUKI(Vo)、腕がシースルーの黒いドレスを纏い、銀色の髪を綺麗に盛り立てゴシックなメイクを施した麗(Gt)、紐とフリルが施された白色のジャケットに、黒い羽をあしらったヘアスタイルと赤いつけまつげという装いの葵(Gt)、西洋の甲冑を彷彿させるデザインを真っ黒のボンテージ風に仕立て、ピンをあしらった仮面と相まって鎧の戦士のような出で立ちのREITA(Ba)、中世の貴族のようなビロードの紅いジャケットに、白塗りで片目のメイクを強調した戒(Dr)。そして、ステージ中央には絢爛豪華なシャンデリアが吊るされ、古びた石壁に窓が描かれた背景、蜘蛛の巣で覆われたドラム・セットなど、まるで西洋の古城で行われている魔物の舞踏会に足を踏み入れてしまったかのような錯覚に陥らせる見事な総合演出に圧倒された。シャッフル/ブギーなリズムが爽快な「MY DEVIL ON THE BED」では、RUKIがスワロフスキーのついたステッキを振りながらシアトリカルなステージングでthe GazettE風ハロウィンの世界観をより深め、REITAは戒のドラムの前に立ってプレイし、葵と麗も交互にお立ち台に立って煽る。

"ハロウィン楽しんでる? 僕らハロウィン(・ライヴは)初めてだからめっちゃ楽しんでます。ハッピー・ハロウィン! めっちゃ楽しんじゃって!!"というMCのとおり、この日は早い時点でメンバーの顔から笑顔が見えていたし、ハロウィン感を楽しんでいる空気が存分に伝わってきた。

さらに今夜は久々にプレイされた楽曲が目白押しだ。「Red」が始まると悲鳴に似た歓声が湧き、鋭いカッティング・ギターにジャジーなベースとリズム、哀愁漂う歌が甘美な「ガンジスに紅い薔薇」から、ヘヴィネス且つメロディアスで複雑な展開をものともせず圧巻の表現力でプレイしきった「BURIAL APPLICANT」、ビブラートを効かせた歌も美しく原曲をさらに進化させた「DISTRESS AND COMA」、そしてスロウでダークなエクスペリメンタル・ナンバー「13STAIRS[-]1」まで、息を呑むような見事なプレイで会場を陶酔へと導いた。

後半はアッパーでヘヴィなダンス・チューン「ヘドロ」から始まり、スピーディに駆け抜けていく。「VERMIN」ではRUKIが"銃痕"という歌詞に合わせて横にいた麗の頭に銃口を当て引き金を引くという場面が印象的だった。またこの日、『DOGMA』以降の曲で唯一披露された「UGLY」は獰猛な迫力を保ちつつ、この夜の"楽しさ"の側面を追求したセットリストにすんなり馴染む新鮮な響きをもたらしていて、最近のライヴでもハイライトとなっている激烈ラウド・ナンバー「HEADACHE MAN」と「ATTITUDE」はアドレナリン全開且つ完璧なプレイに対し、フロア前方にはモッシュの渦が生まれた。「LINDA ~candydive Pinky heaven」では沸点を大きく突破し、最高潮の盛り上がりっぷりで多幸感に満ちたラストを飾った。

アンコールで戒が登場し、ドラム台に座ると"かかってこい!!!"とドスの効いた声で叫ぶ。そして力強くビートを叩き、それに合わせてファンが"戒! 戒! 戒!"と叫ぶも、なかなかメンバーが出てこない。ドラムを叩くのをいったん中断させると、ステージ袖からケーキの台が運ばれ満面の笑みを浮かべた4人が登場する。

"みなさんも知ってのとおり、今日は戒君の誕生日なんですよ。今日は趣向を凝らしまして......ロシアンシュークリーム!!! 戒を殺せー! タダじゃ終わらせないぜぇ~!"と、5つのうちひとつだけが激辛ワサビ入りというロシアンシュークリームで戒を祝おうとするメンバー。"俺が1個選んで他の4つをみんなで......"と戒が勧めるも"俺らが食べたらおかしいじゃん"と一蹴され、ファンの大きな歓声と手拍子のなかで戒が選んだシュークリームは......口を押さえて袖に飛んでいくという芸人並のリアクションどおり激辛シュークリームであった。さすがリーダー、持ってるな~と関心するも、"実は全部激辛でした"と明かされ、爆笑に包まれる。本当に激辛だったのだろう、涙を浮かべながら"......すげぇ愛を感じる。嬉し涙が止まらないです。いつもありがとうございます。これからもthe GazettEを続けることがみんなへの恩返しになると思うので今後ともよろしくお願いします"とコメントしたあとに本物のバースデー・ケーキが運ばれ、ファンが「Happy Birthday To You」を合唱してロウソクの火を吹き消した。素晴らしい愛情を感じたが、"おめでとうございます戒さん。今日いつ出すの? とか言うから......やってやろうと思いました"という、子供のような悪戯心にほっこり。そしてRUKIが"やるぞー!"と煽り、「赤いワンピース」のイントロのドラムが始まると、麗、葵、REITAが慌てた様子で楽器を手に取ったのも微笑ましく、曲の途中で戒と向き合うようにドラムの前で4人が演奏していたのもとても素敵な光景だ。
the GazettEにインタビューをした際、メンバー同士でワイワイしすぎて声が拾いきれないなどということも多々あり、こんなに仲が良いバンドがいるのか~とびっくりしたものだが、ステージ上においてもその仲の良さ、絆の深さが表れている。メンバー間の関係性というのはどうしても演奏にも表れてくるものだと思うし、the GazettEが『DOGMA』という難曲揃いのアルバムを完璧にバンド・サウンドとしてしっかり昇華して見せてくれたこと、そして来年15周年を迎えるということも、根底にメンバー間の絆の深さがあるからこそ成し遂げられたのではないかと思う。このようなバンドとしての強さがあるからこそ確たる人気を誇り愛され続け、ヴィジュアル系バンドの理想像、後続アーティストの指標ともなってきたのだろう。ヒリついたロックンロール・ナンバー「Psychedelic Heroine」、妖艶なグルーヴの「SILLY GOD DISCO」、パンキッシュな「Hyena」を力強くプレイし、ラストの「TOMORROW NEVER DIES」ではモッシュの渦が大きくなりクラウド・サーファーも続出。ダブル・アンコールに応え、ラストはスタンディング・ツアー("STANDING LIVE TOUR 16 DOGMATIC -ANOTHER FATE-")でたびたびプレイされてきた「関東土下座組合」で締めくくった。

会場の入り口からバルーンアーチや看板でデコレーションされ、趣向を凝らした衣装、ステージ・セット、演出、そして戒のバースデーというスペシャル感満載のライヴ。この貴重なハロウィン・パーティーは毎年やりたい、そして来年からはもっと大きな会場でやりたいと語っていたので楽しみにしていよう。

2017年には、3月10日に国立代々木競技場第一体育館にて15周年記念公演"大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」"が決定している。それまでに、11月9日にリリースされた映像作品「the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC FINAL -漆黒- LIVE AT 02.28 国立代々木競技場第一体育館」をぜひとも観ておこう。初回限定盤に収録されているドキュメンタリー映像にも、15周年を迎えるバンドとして貴重なヒストリーが詰まっているに違いない。

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