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LIVE REPORT

the GazettE

2016.02.28 @国立代々木競技場第一体育館

Writer KAORU

ライヴも中盤。戒にスポットが当たり、ドラム・ソロが披露される。派手なドラムセットをふんだんに使い、躍動感溢れるリズムを紡ぐ姿はとても華やか。戒は高度な技巧を持つドラマーとして有名だが、バンドのリーダーとしての役割を果たしつつ、難曲揃いの『DOGMA』を長期にわたって演奏することは、きっと大変なことだっただろう。今まさにプレイしている姿はとても楽しげで、達成感のようなものが音に表れているように感じた。
ドラム・ソロから『UGLY』に収録されている「GODDESS」へとなだれ込み、まるで目に見えるかのように空間の広がりを髣髴させる葵のギターと、ひとつひとつの音が物語る美しい旋律を奏でるを麗という、それぞれのギターの個性がぐっと際立つ印象的な場面を見せてくれた。「WASTELAND」ではメンバーを囲む形で松明が灯され、まるで魔方陣の中で演奏しているかのよう。観客すべてを闇の底に誘うような演出と演奏が融合し、『DOGMA』のテーマ、そしてヴィジュアル系特有のダーク感を、アリーナならではのビッグ・スケールなエンターテイメントに昇華した見事な瞬間だった。
"今夜はとことんお前らのこと壊して帰るから覚悟しとけよ! お前らわかってんだろうな! ここにいる全員の頭の......ぷりぷり? そういうの期待してます。気合い入れてけよ! やるぞ!"と、RUKIのツンデレなMCに歓声が湧き、高速ナンバー「PARALYSIS」、そしてモダン・ヘヴィネスを彷彿させるイントロから怒涛の高速展開が印象的な「LUCY」へと続き、葵は重厚なリフを刻み、麗とREITAは上手まで走ってファンを煽る。また、麗のソロをスクリーンに大きく映してくれたのも個人的に嬉しかった。戒のマーチのリズムも爽快に響き、RUKIはさらに力が入ったシャウトで、会場を制圧していく。間髪入れずに「INCUBUS」がプレイされると、"Un, deux, trois"というパートに合わせたファンの振りが一糸乱れずに繰り広げられた。「UGLY」では、一斉に拳が振り上げられ、タッピングが印象的な麗のソロでは、手元が大きくモニターに映される。このようなカメラワークが随所にあり、メタル心がくすぐられる。"まだまだ暴れ足りないか! やばいお前ら見せてくれ!"とRUKIが煽り、「BLEMISH」ではキラキラとした照明が映え、ファンのジャンプが会場を大きく振動させた。悲しげな旋律と獰猛なデス・ヴォイス、ラストへの怒涛の展開が凄まじい「DEUX」、そして『DOGMA』を締めくくる「OMINOUS」では、"忘れないで/心は死なない"という歌、葵と麗の2人によって奏でられるツインギターならではの美しいメロディとそれぞれのソロ、その重心をしっかりと支えるREITAのベース、"パン! パン!"と感情をぶつけるようにスティックを振り下ろす戒のドラム、すべてが感動的に映り、その1音1音に、どれだけたくさんの想いが込められていただろうかと、込み上げてくるものがあった。
本編ラストは、4月27日にリリースされる新曲「UNDYING」の初披露で締めくくられた。怒涛のブラストビートから始まり、めまぐるしい展開を重ねる情報量の多い曲である。演奏が終わったあとの周囲のザワつき方も、the GazettEらしいと言えるのではないだろうか。

アンコールは「INSIDE BEAST」から始まり、サービス精神たっぷりに、思い切り暴れられる5曲が披露された。いよいよライヴが終わったということを告げるように、BGMにGUNS N' ROSESの「Knockin' On Heaven's Door」が流れる中、興奮冷めやらぬファンのさらなるアンコールを求める声が鳴り止まず、再びメンバーが登場すると、悲鳴のような歓声が上がる。そして、"ずっとバンドやってたいなと思うツアーでした。気持ちを込めて歌います"というRUKIのMCのあと、「枯詩」、「春雪の頃」、「LINDA ~candydive Pinky heaven~」の3曲が、情感たっぷりに演奏された。自分がthe GazettEのメンバーであることをいかに誇りに思っているかということと、ファンへの深い愛と感謝の気持ちを5人それぞれのメンバーがファンに伝え、その表情には、込み上げるものを隠しきれない切実な想いが現れていた。

『DOGMA』は彼らのルーツである90年代のヴィジュアル系的なダークな世界観とメタル的な世界観をリンクさせ、the GazettE史上最もヘヴィな方向へ振り切り、そのクオリティの高さと、速効性のある激しいサウンドは、新たなヘヴィ・ロックのリスナー層に広がるきっかけとなった。メタルコアや90年代のラウドロックの手法をふんだんに取り入れ、現代基準の重厚な音塊を放つヘヴィ・ロック・アルバムであると共に、近年のラウド系バンドにありがちな曲構成と音色の様式をなぞるそれとはひと味もふた味も違い、結果的にヘヴィに振り切ることによって、細かな1音1フレーズからもthe GazettEのオリジナリティを浮き彫りにした作品だ。
今回のライヴでは、圧倒的な演奏力でヘヴィ・ロックの醍醐味を味合わせ、なおかつ、その独自性を際立たせる表現力、ド迫力のパフォーマンス、鮮烈な印象を焼きつける演出など、すべての要素が結実。『DOGMA』がいかにとんでもないポテンシャルの高さを持つ作品であるかを証明すると共に、RUKIが語っていたダークなヴィジュアル系文化の究極系が、極めて高度なエンターテイメント性の中でヘヴィ・ロックと融合する圧巻の光景を繰り広げた。長いツアーのひとつの終着地点となった会場は隅から隅まで愛に満ち溢れ、伝説的なライヴを観た!という満足感が、今も長い余韻を残している。
the GazettEは、00年代以降のヴィジュアル系を象徴するバンドとして第一線で活躍しながら、常に自問を繰り返すことによって新しいことに挑戦し、リスナーに新鮮な音楽体験を与え、ときに物議を醸す。そんな中でも、『DOGMA』はこれまでで1番賛否が分かれたかもしれないし、メンバーもそんな反応を予想していただろう。それでも、14年に渡って培ってきたクリエイティヴィティと熟練性が結実したこの作品を信じ、揺るがないバンドの精神、絶対的な信念を打ち出したことによって、結果的にファンとの絆をさらに深めた。the GazettEが常に頂点と言える人気を博している理由は、ライヴを観れば明らかにわかるだろう。
今こそ、ヘヴィ・ロック・リスナーがthe GazettEに触れる絶好の機会。まずは、4月27日にリリースされる『UNDYING』を聴いてほしい。ヘヴィ・ロックにまつわる既成概念を、新鮮なものへと刷新してくれるだろう。