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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

TONIGHT ALIVE

2012.06.05 @渋谷duo MUSIC EXCHANGE

Writer 山口 智男

本国であるオーストラリアはもちろん、人気レーベルのFearless Recordsと契約したアメリカ、さらにはイギリスでも人気上昇中というポップ・パンク5人組、TONIGHT ALIVEが1stフル・アルバム『What Are You So Scared Of?』の日本におけるリリースから3ヶ月を経て、待望の初来日公演を実現させた。この日のライヴはイギリスとオーストラリアを一緒にツアーしてきたイギリスの新進ラウドロック・バンド、YOUNG GUNSとのカップリング。先攻のYOUNG GUNS、後攻のTONIGHT ALIVEともに小細工なしの直球勝負の演奏によって、ロック・シーンにめきめきと頭角を現してきた若いバンドらしいフレッシュさを印象づけた。
個人的には、ここのところ日本のバンドの割と長尺のライヴばかりで、海外の新人バンドの来日公演を観るのは久しぶりだったせいか、YOUNG GUNS、TONIGHT ALIVEともにアンコールなしの40分ほどのステージは逆に新鮮に感じられ、しばらく味わったことがなかった清々しさが、もう2、3曲聴きたかったという若干の物足りなさをすっかり帳消しにしてしまった。
TONIGHT ALIVEの演奏は『What Are You So Scared Of?』収録の「Listening」でスタート。黒い半袖のポロシャツにジーンズ。腰にチェックのシャツを巻いた紅一点シンガーのJenna McDougallが「ワタシタチハTONIGHT ALIVEデス。ハジメマシテ!」と日本語で挨拶すると、1曲目からいきなり合唱が沸きおこった。アメリカやイギリスのみならず、ここ日本でも少なくないファンが彼女たちの来日を心待ちにしていたにちがいない。バンドはギターのメタリックなフレーズが印象的なアルバム未収録の「Revenge」、アルバムではBLINK-182のMark HoppusがJennaとデュエットしたポップ・パンク・ナンバー「Thank You And Goodnight」とテンポよく曲をつなげ、ドラマー以外の4人がリズムに合わせ、ぴょんぴょんと跳びはねながら、Jennaが"Jump!"と客席に求めると、ファンもジャンプ。また、エモーショナルな「Wasting Away」でJennaが"ミンナイッショニ"と呼びかけると、手拍子とシンガロングで応え、ダンサブルなリズムを隠し味に使った「Let It Land」では客席から自然に手拍子が沸き起こるなど、バンドを歓迎する気持ちをめいっぱい表現するファンと、そんな歓迎に"ミンナゲンキ?"などなど、積極的に日本語で話しかけ、さらなる熱演で応えるバンドが作り出す一体感は観ていてとても気持ちいいものだった。
テンポの速い明るいポップ・パンク調のレパートリーがもっとあれば、ファンの盛り上がりはもっと熱狂的なものになっただろう。しかし、現在のTONIGHT ALIVEはポップ・パンク・バンドと言うよりもむしろ、深いエモーションを表現するロック・バンドなのだ。たぶん、今後はAvril LavigneやPARAMOREのHayley Williams同様、同世代のリスナーが共感できるJennaの魅力をこれまで以上にアピールしたうえで、その音楽性もポップ・パンクやエモに止まらない、より多彩な表現のものになっていくのだろう。その意味では、イギリスのフォーク・ロック・バンド、MUMFORD & SONSのヒット曲「Little Lion Man」が持つエモーションをTONIGHT ALIVEのサウンドを通して表現した好カヴァー(『Punk Goes Pop 4』に提供)以降の「Starlight」「What Are You So Scared Of?」「Amelia」という流れこそがこの日の一番の見どころだったのでは。中でもJennaが情感たっぷりに歌い上げ、会場全体が聴きいった「Amelia」は圧巻の一言だった。
そして、アルバムのオープニングとも言える「Breaking & Entering」を最後に演奏すると、Jennaの「ミンナサイコー!」という言葉とともにTONIGHT ALIVEの初来日公演は幕を閉じた。すでに書いたように40分ほどの簡潔なライヴではあったが、新人バンドの顔見世という意味では、なかなかのパフォーマンスだった。
結成後わずか3年ほどで世界進出の足がかりをつかんだ若い5人組はこの後、アメリカでWarped Tourに参加する。この次、日本に来るときはポップ・パンクやエモの範疇には収まりきらないバンドに成長していることを期待している。

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