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LIVE REPORT

EVANESCENCE

2012.02.09 @ZEPP TOKYO

Writer 山口 智男

EVANESCENCEライヴレポート
前作『The Open Door』に引き続き、全米No.1になった最新アルバム『Evanescence』がそうだったように今回の来日ツアーもまた、5年という決して短くないブランクをこれっぽっちも感じさせないものだった。いや、それどころか、ここ日本においても未だ衰えぬEVANESCENCEの人気を改めて印象づけるものだったと言ってもいい。
満員御礼と言ってもいいぐらいぱんぱんになっていた客席と、ライヴが始まる前からそこに熱気となって渦巻いていた期待と興奮は、日本にいるEVANESCENCEのファンがどれだけ彼らの帰還を待ち続けていたか、その想いの強さを物語るものだった。
そんな期待と興奮は、Will Hunt(Dr)が叩き出すどっしりとしたリズムに合わせ、Amy Lee(Vo)が"Do what you what you want~"と歌いながらステージに現れた瞬間、熱狂に変わった。オープニングはダンサブルなグルーヴが生まれ変わったEVANESCENCEを象徴する「What You Want」。ファンの大歓声が会場全体を包みこむ。Amyが前列の観客に歌いかけるようなアクションを見せるたびに上がる悲鳴に近い歓声にはびっくりさせられた。バンドが間髪を入れず、その盛り上がりをヘヴィなギター・リフとともに「Going Under」に繋げると、観客はシンガロングでバンドに応える。
"ドーモアリガト、トキオ!"とAmyが叫んだ。それはEVANESCENCEの帰還を待ちつづけていた日本のファンとAmy曰く<最強のラインナップ>で帰ってきたバンドが幸福な再会を果たした瞬間だった。
"ラインナップが最強なんだから当然、最高のライヴになる" 
インタビューでAmyはそんなふうに語っていたけれど、この日のセットリストを振り返ってみれば、全18曲中、『Evanescence』からは計10曲を披露した。因みに『Evanescence』の収録曲は全13曲(含日本盤ボーナス・トラック)。そこから10曲もやるなんて、現在のメンバー全員で曲作りに挑んだ新作をよほど誇りに思っているに違いない(でも、僕が一番好きな「Erase This」はやらなかった。なぜだ!?)。 
トリッキーなスティック捌きも見せるWill、曲によってはアコースティック・ギターもプレイするワイルドなTroy McLawhorn(Gt)、ガシッと踏んばって低い位置に構えたベースを唸らせるTim McCord(Ba)、ヨチヨチとした足取りながら鋭いソロやフレーズを演奏に加えるTerry Balsamo(Gt)――決して派手とは言えないものの、野郎4人が手堅い演奏でエネルギッシュな歌姫をバックアップしている光景が美しい。
それぞれにツボは違うと思うけれど、個人的にはステージ中央に置いたグランド・ピアノを弾きながら、Amyが歌った「Lost In Paradise」からの4曲がグッと来た。ピアノ・バラード風に始まって、中盤からガッガッガガガとメタル調に変化するアレンジはパターン化し過ぎているきらいがないでもないけれど、ここから彼女の歌声はさらに伸びやかになって、後半、ぐんぐんと調子を上げていったように思う。
そして迎えたハイライト――誰もがこれを待っていた「Bring Me To Life」は、Amyと掛け合う男性ヴォーカルのパートが削られ、代わりにファンが歌うという心憎いアレンジに変えられていた。幸福な再会を果たした日本のファンとバンドは、そのコール&レスポンスを通して、また1つになった。
EVANESCENCEの魅力の1つでもあるゴスの要素は正直、以前ほど感じられなかったものの、バンドは代わりにポジティヴなヴァイブを手に入れた。ひょっとすると、それが今回のライヴの一番の見どころ、聴きどころだったのかもしれない。
Amyが言ったように最高のライヴだったかどうか――もちろん、最高だったと言ってもいい。しかし、その言葉がまたこの次、そしてさらにその次まで取っておきたい。アルバムのリリースももちろん、次の来日がまた5年ぶりなんてことにならないことを願っている。

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