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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

ムック|2011.05-06

2011.05.06 @日本武道館/新木場STUDIO COAST

Writer MAY-E

四つ打ちのビート・ミュージックが鳴り響くと同時に、閃光のような煌びやかなライトが会場全体に降り注いだ。アメリカ、ヨーロッパ、アジアをまわったワールド・ツアー "Chemical Parade"。そのFINAL公演が、5月21日に日本武道館で開催された。目下最新アルバム『カルマ』(10年)からリード・トラック「フォーリングダウン」でスタートするなり、ダイナミックなエレクトロ・ロック・サウンドが会場を支配。「It's Show Time!」 そんな逹瑯(Vo)のかけ声で大きく揺れ始める日本武道館は、まるで巨大なダンス・ホールのようだった。
08年の"Taste Of CHAOS JAPAN TOUR"以来、実に3年振りにムックのライヴに足を運んだ私だが、いわゆる"ヴィジュアル系ロック・バンド"のイメージを払拭する、あまりに華やかな演出に驚いてしまった。3年前のあの日、今日のムックの姿を誰が想像出来ただろうか。
翌日の5月22日には、同じく日本武道館にて"MUCC history GIGS 97~11"を敢行。さらに"ムックの日"(6月9日)には新木場スタジオ・コーストで"Maniac Parade 97~11"と銘打たれた特別ライヴを開催している。こちらは最新の楽曲から、今ではライヴではなかなかプレイされることのない過去の楽曲も織り交ぜた、いわばファン感謝祭のようなライヴ・イベントであるが、"Chemical Parade"FINALと"Maniac Parade 97~11"の両ライヴに足を運んでみて、改めてバンドの進化の重要性を感じ、それと同時に、その進化を楽しんでいるバンドの姿に思わず胸が高鳴った。
前途したように際立ってハイブリッドな視覚的演出には度肝を抜かれたのだが、ムックらしさは健在だ。エレクトロを脱いだシンプルなバンド・サウンドが露になっても、キャリアの中で培った演奏面の安定感も抜群で、ヒリヒリとした初期のヘヴィ・ナンバー「蘭鋳」「誰も居ない家」から壮大なバラード曲「フリージア」まで、陰性から陽性へと目まぐるしく変化していくのだ。"Maniac Parade 97~11"では、アンコールになると客席からダイブが止まらないほどの熱狂的な盛り上がりをみせた。

近年、いわゆる"ヴィジュアル系バンド"の海外進出が目立っているが、ムックもそのひとつだ。08年のTaste Of CHAOSワールド・ツアーの全行程に参加していたが、そのTaste Of CHAOSツアーの直後にリリースされたアルバム『球体』(09年)は、リード・シングル「アゲハ」をはじめ海外のロック・シーンからの影響が顕著に表れたメタリック且つハードな作風だった。とはいえ、アメリカナイズされすぎない"ムックらしさ"がちゃんと存在していた。
『カルマ』に関してもそうである。ダンス・ミュージックのテイストを大胆に取り入れているため、一聴して大きな変化が感じられる実験的な作品ではあるが、トラックを進めるにつれ"ムックらしさ"は衰退していないことが分かる。新たなファクターとムックらしさが融合した、いわば"最新型ムック・サウンド"なのだ。
メタル、エレクトロ、時に民族音楽までも取り入れる変幻自在のバンド・サウンドに、日本語詞と歌謡テイストのヴォーカル・メロディが掛け合わされた、ムックのユニークな音楽性。アプローチは様々でも逹瑯の表現力豊かなヴォーカルが加われば、全てムックのサウンドとして成立するのだ。この日本人らしい唄心のあるラウド・ロックを強引に一言で例えるとするなら、純和風ラウド・ロック、なんてところだろうか。

さて、ムックは間もなく結成15年を迎える。きっとこれからも彼ららしく、且つ刺激的な音楽を私たちに届けてくれるだろう。年内にリリース予定だというニュー・シングルの仕上がりも大いに気になるところであるが、その前に、ムックは激ロック読者にもお馴染みの夏フェス"サマーソニック11"への出演が決定している。洋楽嗜好のロック・ファンにこそ見て頂きたい日本のバンドのひとつであるので、サマソニ参戦予定の方、ぜひオープンなマインドで彼らのステージに足を運んでみてほしい。

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