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LIVE REPORT

BLACK VEIL BRIDES|2011

2011.03.11 @原宿ASTRO HALL

Writer NANAKO!

全身黒装備にKISSを彷彿とさせるウォー・ペイント。一目彼らを見たものは忘れられない強烈なインパクトを放つBLACK VEIL BRIDES(以下BVB)。彼らが以前から切望し、数多くのファンが待ち望んでいた初来日公演は、先月イギリスにて行われたGOD SAVE THE SCREAM TOURの延長戦ともいえる、MURDERDOLLSとの2マンを含む形式での来日であった。本公演は今回の来日におけるBVB唯一の単独公演であり、新人の登竜門的イベント「ニュー・ブラッド」への出演である。

 このBVBだが、去年STANDBY RECORDSから1stアルバム『We Stitch These Wounds』をリリースしているが、そこに至るまでの4年の間に何度かメンバー・チェンジを経ており、現在は結成当時からのメンバーはフロントマンAndy Six (Vo)のみである。彼がガレージ・バンドで歌い始めた当時はまだ14歳であり、メジャー契約を交わした現在でもまだ弱冠19歳という若さであるから本当に驚きである。
BVBの音楽性だが、Andyが幼い頃から憧れてるKISSやMISFITS、THE NEW YORK DOLLSなどの影響を感じさせるオーセンティックなメタルを強く感じさせるものである。歌詞は彼の大好きなバッドマンがそうであったように人々を助けたいという気持ち(音楽を通してキッズに勇気を与えたいというメッセージ)が込められているものだ。そしてそこに彼の持つローマ・カトリックの宗教的要素を加えダークで妖美なステージングとして表現している。

 さて記念すべき単独公演だが、定刻である19時を迎えると会場にオルガンの宗教的且つ神秘的な音が響き渡り、今か今かとオーディエンスがそわそわし始める。そしてオルガンが鳴りやんだその瞬間、"Tokio!!!"とAndyが叫び、幕が開かれた。恐らくこの会場にいる殆どのファンが初めて目にするBVBだが、その中でも一際カリスマ性を放つAndyに"Andy!!"と黄色い歓声が飛び交ったのは言うまでもない。黒のパンツに上半身ベスト一枚で、一曲目の「All Your Hate」からマイク・スタンドを持ちステージ上を左右に動きまわるAndy。Jakeの華麗なギター・ソロとJinxxのリズム・ギターが素晴らしいハーモニーを奏で、そこにAshleyの遊び心がありながらも安定したベースと、去年加入したばかりのニュー・ドラマーであるCCことChristian Comaとの2人のリズム隊がカチっと一つにタイトに演奏をまとめあげている。彼らがキッズから支持を集めている理由の一つはこの演奏力であろう。今や数え切れない程いるスクリーモ・バンドとは演奏力が目に見えて違う。アメリカでは彼らはスクリーモ・バンドとは括られておらず、メタル・バンドと認識されている。演奏は良い意味でクラシックなメタルであり、そこにAndyの美声スクリームが加えられることにより、彼らは新しいBVBというジャンルを作りあげているのではないだろうか。
1曲目が終わるとAndyは"Ladies and gentlemen, we are the BLACK VEIL BRIDES!!"と軽くMCを挟みキッズ達に笑顔を投げかける。2曲目「We Stitch These Wounds」でJakeのギターが高音を掻き鳴らすと会場のテンションも最高潮に。殆どの楽曲に取り入れているシンガロングは会場が一体になる瞬間でもある。殆どの曲でAshleyとJinxxがAndyのリード・ヴォーカルを支えているのだが、バック・ヴォーカルに徹するのではなくAshleyが低音パート、Jinxxが高音パートと分担して絶妙なハーモニーを奏ででいたのには驚きであった。
MCで"今日はこんな日にもかかわらず、皆俺達に逢いに来てくれてありがとう"と言うと、オーディエンスがすぐさま"We love you!"と応えるとAndyがニコっと微笑み返し"じゃあ、皆で今すぐ結婚しよう"と言った時はファンもメロメロだった様子(笑)。そして最前にいたファンがプレゼントを渡すとその箱を歯でちぎって開けて喜んでいた。カリスマ性を放つ彼もまだ19歳の可愛らしい一面があるんだなと微笑ましく感じた。Andyだけでなく、Ashleyがベースにグルーミーのマスコットを付けていたりとルックスからは考えられない程メンバー皆がやんちゃである。やんちゃと言えばJakeが急に"カワイイネー!"と日本語を披露したのはかなり面白かった(笑)。"俺日本人だから!"と言うとAndyがすぐさま"フェイク!"と言い放ったのにはもうツボで仕方なかった(笑)。会場に足を運んだファンは新たな彼らの魅力を発見できたのではないかと思う。

そして大本命「Knives And Pens」のイントロが始まるとAndyは"人生には二つの選択肢がある。それはナイフ(で自分を痛めつける)かペン(でその痛みを歌にするか)だ!"とMCを入れる。この曲のPVがデビュー前にして驚異的な再生回数を記録したことは有名だが、それはAndyの気持ちが最も込められていて且つキッズの共感を得たからだろう。今でこそ世界中のキッズの憧れの的であり、ロック・シーンのニュー・ヒーローと崇められている彼だが、この曲で歌われている様に、幼少期には酷いイジメを体験し、他人とは違うというジレンマと葛藤していた一人のキッズであった。アメリカではエモと呼ばれるキッズはイジメの被害に遭いやすく、多くのキッズが自殺を犯すかそれに近い行動を取ってしまう。Andyも正にその類の子供であった。しかし彼は自分のアイデンティティを追い求め、それを歌として表現することで世界中のキッズ達に届けようとしているのだ。そんなAndyの全てが込められたこの曲ではなんとAndy自身がステージを飛び降り、オーディエンスの輪に入り一緒にシンガロングした。私自身アメリカで去年、彼らのショウを観たことがあるのだが、アメリカではあり得ない光景である。初めての日本での単独公演にもかかわらず災害という予測不能な事態にメンバー全員思うことがあったのではないかと感じた瞬間だった。
最後は『We Stitch These Wounds』からの1stシングル「Perfect Weapon」を披露する。この曲で彼らは彼らの持ち得る全てを出し切って、会場にいるすべてのファンの目に焼き付けてくれた。彼らのライヴを心から楽しみにしていたファンの多くがこのような事態で泣く泣く参加できなかったのは、メンバー自身が一番心を痛めていたことであろう。彼らはファンがいてこその自分達であるといつも公言している。"俺は皆のために、皆の居場所を作ってあげる為に歌っているんだ。皆ひとりじゃないからね"Andyはこれからもキッズ達にこの言葉を贈り続けるであろう。何故ならそこに、歌という武器とファンが存在しなければAndy Six、そしてBLACK VEIL BRIDESは存在しなかったからである。

 追記:今回の東北地方太平洋沖地震の自らの体験を経て、彼らは帰国後も日本に祈りを捧げ、Jakeは日本赤十字へ寄付をするだけでなく、ツイッターやフェイスブックを通してファン達に募金活動を促している。その呼びかけには災害の様子を物語る新聞を持つJakeの写真が添えられていた。


※写真は今回の原宿ASTRO HALL公演のものではありません。

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