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INTERVIEW

KEMURI

2017.06.21UPDATE

KEMURI

Member:伊藤 ふみお(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

30歳にしてやっと1stアルバムが出せるんだから、思い切り好きなことをやるしかないと思った


-KEMURIを始めてからは、順調だなという思いはあったんですか。

いや、順調どころか怖いくらいだったんですよ、ライヴやってないけど大丈夫ですかっていう。Bob Marleyの本に書いてあったんですけど、Chris Blackwellという昔のIsland Recordsの社長が、Bob Marleyがアルバムを作りたいと事務所に来たときにお金を出すわけですよ。でも、ジャマイカ人にお金を渡したって、音源なんてできてこないよって、100人中99人が言っていたみたいな話があって。Roadrunner的にもそんな感じなのかなって、ちょっと思っていたりしてね(笑)。世界的なレーベルだし、ダメ元で出してくれるのかなっていう。川原さんはすごく熱い人で、"伊藤君は大人だから、任せるからちゃんとやって"って話をされたんですけど、右も左もわからないわけですよ。当時はもう30歳という感覚だったけど、今思えばたかが30歳で。僕以上にバンドのメンバーもわからないしね。でも思い切りやることはやろうと、最初から"レコーディングではアメリカに行こう!"っていう。

-いきなり行っちゃうわけですね(笑)。

まず、そのときに友達になっていたMike Parkに、"Roadrunnerと契約が決まったから、アメリカでレコーディングをしたい"と連絡したんです。それでレコーディング・スタジオを紹介してくれたり、1ヶ月くらいいるならうちのアパートに泊まっていきなよって、泊めてくれたり。

-Roadrunnerと契約したと言っても、レーベル側でレコーディング・スタジオを用意してくれるわけではなかったんですね。

言えば何かやってくれたのかもしれないけど、ワクワク感満載で、自分でやってみようという気もあったんですよ。スカのアルバムを作るなら、餅は餅屋だっていう感覚があったから、MikeがSKANKIN' PICKLEの録音をよくやっていたスタジオを紹介してもらったんです。

-Mikeさんも、レコーディングには来てくれていたんですか。

最初の3日くらいは来てましたけどね。あとは面倒くさくなって来なくなりました(笑)。

-先ほど話に出たP.M.A.という精神は、今なお変わらずにKEMURIの音楽の指針であり、メッセージとなっていますが、もともとはどういうところからだったんですか。

もともとは未だにちょっとわからないんですけど、FISHBONEのAngelo(Moore)だったかが言っていたんじゃないかなと思いますね。それか、BAD BRAINSが言っていたのか。あと、UNITYというストレート・エッジ・バンドも、P.M.A.というのを言っていたと思います。で、いい言葉だなと思って聞いていたんですよ。すごくいい言葉だし、自分の中でも、もう年齢的には危機感しかないですから。30歳にしてやっと1stアルバムが出せるんだっていうところだから、もう思い切り好きなことをやるしかないっていうのもあって、新しいものをやるならそういうことを歌うと決めていたのは、そういう理由だったんです。

-そこは自分自身のもともとの考え方とは、違うものだったんですか。

似たようなこところはあったと思いますね。うまくいかないことの方が多かったから、いろんな本を読んだし、その中には自己啓発と言われているような本もたくさんあったしね。どういう考え方をしているのかなって、いろんな人の自伝や伝記も読んだんですけど、そこには共通点があるなという。恐ろしいほどの、おかしいんじゃないかっていうほどのマイペースというか。自分の信じていることや、自分の好きなことだけをやっているんですよ。そういう思いをずっと維持継続して、自分を鼓舞しながら続けていくうえでの言葉っていうので、Positive Mental Attitudeは、すごくいい言葉なんじゃないかなと思ったんです。

-そういう姿勢があって、KEMURIでは自分を投影した歌や、人間的なところを出すような音楽になっているんですかね。

最近の方が、人によって興味が出てきたというか、そういう歌詞が増えているかもしれないですね。当時の方がもうちょっと、日本も景気が良かったから。"おいおい、これでいいのか?"っていう思いが、もっと強かった。もっと尖って、剣先を突きつけるような気持ちで書いていた部分があるかな。音楽業界に対してもね。今はそれに比べると元気がないから、とにかく元気になってもらいたいっていう、ちょっと優しい気持ちが多くなったと思いますね、再結成以降に関しては特に。

-社会が映るということですね。

バブルが崩壊したと言っても、まだまだ、浮かれた感じだったからね。今思うと、ちょっと複雑な思いがありますけど。